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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第37話

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サマル「わ・・・わかんない・・・!・・・衝動的な感情じゃないから、理性じゃ意味がないし・・・」

どうすれば。どうすればこの悲痛な嘆きを止められる?
ここにいるのは辛い・・・救えなかった無力さを見せつけられているようで。

レック「っ・・・!!」

立ち止まって目を閉じ、覚悟を決める。
・・・どうすればいい。考えろ・・・・。

サマル「・・レックさん!?止まっちゃダメだよ・・・!!」

レック「・・・・・・・・・・・・・。」

オレは深呼吸をすると、目を開けた。そして、まっすぐと見つめた。
「悲しみ」を。止まらない「悲愴」そのものを。

そして一時的に自分自身の「救えなかった悲しみ」を直視し、それを投げかける。
呼びかける。

・・「悲しみ」の動きが止まった。ぴたりと。

サマル「・・!」

・・そして、その直後。

空気を割く衝撃音。・・いや、これは“声”だ。
・・嘆き。全てを飲み込む激しい嘆き。悲しい嘆き。叫びだ。

「悲しみ」が突如豹変し、今までの小さく遠慮がちな動作が嘘のように大きく動き出した。
空を掻き抱くがごとく、しかしそれでもゆっくりと踊るような滑らかな躍動感は消えない。

これは“声”・・・。全てが終わってしまったあとの、嘆きの声。
別の感情で抑えるのではなく、同じ感情を重ね合わせ、同じ声を重ね合わせ、共に心から嘆くのだ。
・・そして終わらせる。この嘆きを。悲しみを。

サマル「レックさん・・・・・・・・。・・・・・・・本当にいいの・・・?」

レック「・・・うまく行くかはわかんねえ。でも・・・これしか方法がない」

サマル「・・・・・・・・そっか。・・そうだね、わかった。
・・・・・・そうしてみよう」

動くのをやめ、溢れる悲愴に身を任せる。
そして、溶け込む。・・・身体が落ちていく感覚。青い魔方陣に吸い込まれていく。

・・・・・青い。蒼の中を沈んでいく。
どこまでもどこまでも。・・・・・沈んでいくにつれ、蒼が次第に濃くなっていく。

やがて光の当たらない深海に来たように、辺り一面が悲しみの蒼で染まった。

レック「・・・・・・・・・」

サマル「・・・・・・・・レックさん!」

レック「・・・ああ、わかってる」

・・・・・・声が聞こえる。悲しみに満ちた、嘆きの声。
透き通るような麗らかな、つぶやくような歌うような。

オレは目を閉じたまま、その声と同じ言葉を、歌を歌った。


???? 蒼青碧????悲?嘆藍哀???


ボクは見ていた。青い光に包まれ、悲しみに応えるように歌いだすレックさんを。
実際に声を出して歌を歌っているわけじゃない。でも、わかった。

悲しみの歌。嘆きの言葉。流れる涙のようなつぶやき。
ボクは全身の力を抜いて、青が染み込んだ本を広げた。

  永遠の孤独 終わらない 戻らない 命 時間
  蒼月 淡い光 嘆きの時計  朝は、もう来ない。
  赤い海 黒い空  届かない、指先。
  疑問 心 悔しさ 愛しさ 弱さ  すべて手遅れ。
  白く青く 深く重く 沈む 眠る 永久に ただひとり 罪を背負って
  祈り 流れ 消える 溶ける 報いる 
  救いなど、ない。

不思議と辛くはなかった。感じるのは、全てが終わった安心感と、沈み込むような重い重い、それでいて自然と頬が綻ぶような、諦めの境地。傍観。安らかな絶望。
そして、少しの後悔。

気が付くとボクも歌っていた。

レックさんは目を閉じて、少し微笑んで、優しく語りかけるように・・・やがてその両腕がゆっくりと弧を描く。回る。柔らかく滑らかに、大きく。

ボクは気付いた。レックさんの動きは、あの巨大な青い光の人形の動きと全く一緒だ。

上半身を左右に傾かせ、正面で両腕を交互に上げ下げする。
時には背を丸め込むように、時には仰け反るように。手をくるりと裏返し、大きく円を描き、顔を隠すように翳し、天を仰ぐように広げ、体全体をゆっくりと揺らす。

ただの少しも狂いのない、まるで鏡のような完璧な動き。

それは・・・舞い。悲哀に満ちた歌声と、諦観に染まった舞い。
・・甘く美しい、諦めと悲しみ・・・。

青一面の世界、天上からゆっくりと降りてくる大量の黒い水晶。
それは絶望。槍のように尖った、心を蝕み侵すもの。

ボクは本を開き、歌を歌う。映し出されるすべてを読み上げる。
降り注ぐ絶望が落ちてくる、その瞬間を狙って。
2人の邪魔をさせないために、ボクは「諦め」を絶望と同じ数だけ読み上げる。

すべてを諦めてしまえば、絶望は必要ないから。

ボクの歌う「諦め」は白く光る円形のシールドになって、レックさんとボクをを守るように煌く。
ばらばらに落ちてくる黒い「絶望」、うまくタイミングを合わせて読み上げれば黒水晶は弾かれて砕ける。

・・ひとつでも防ぎきれなかったら、おそらくボクとレックさんは無事では済まない。

意識を極限まで集中して、聞こえてくる嘆きに耳を済ませる。
それはもはや歌声だけではなく、ひとつの曲になっていた。

悲しく美しい、静かで激しい旋律。レックさんはそれに合わせて踊り、絶え間なく溢れ出る嘆きに共感し、協力し、そして制御する。
ボクはそれに合わせて歌い、降り注ぐ絶望を諦めで打ち消し、嘆きの邪魔を排除する。

次第に旋律は重さを増し、悲痛さを増し、現実味を帯びていく。

落ちてくる「絶望」の数も増え、より精密に正確に歌うことを求められる。
とめどなく流れる涙のような・・・

サマル(・・・・・鎮魂歌・・・・)

悲壮なレクイエム。完全なる諦めによって、絶望と嘆きの涙を止める。

・・・・ボクは歌った。声の続く限り。
激しく静かで、あまりにも悲しい旋律に乗せて。
無限の嘆きが、いつか止まることを願いながら・・・・・。

・・どれくらい、そうしていただろう。
・・・・・・・・・・やがて、「悲しみ」の歌声がだんだんと激しさを失い、スローダウンしていく。
同時に動きも徐々に遅くなる。レックさんも同じように、次第に動きを小さく遅くしていく。

・・・・・そして。・・・「絶望」はすべて消え、悲しみと諦めだけが残った。
・・・嘆きは、止まった・・・・・。

レック「・・・・・・・・・・」

・・・頭上に掲げていた右腕を下ろし、レックさんが目を開く。

サマル「・・・・・・・・・・」

ボクは本を閉じて、レックさんの隣に移動した。
・・・・・・青い世界が、暗転していく・・・・・・・・・・・。
――――――――――
―――――


????過?去? ?????? ?記憶?????

―ねえ

―なあに?

―どうして、お外に出ちゃいけないの?

―・・お外は危険なの。怖い魔物がいっぱいいるのよ。もっと頑張って強くなって、一人前になったら、お師匠様もきっと許してくれるわ

―いち・・・にんまえ、ってなに?

―ソロがもっと大きくなったらなれるものよ。だからそれまで頑張ろうね
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―・・・・・・・・・・・・・

―・・・どうかしたの?

―・・ううん。・・・ちょっと不思議に思っただけ。・・外には出れないから必要ないのに、なんで戦う練習をしないといけないんだろう