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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第39話

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レック「そうか。・・そうか・・・いいぞ・・・!あのな、お前は今・・・・・・悲しいんだ。悲しいって、わかるか?わかんねえよな・・・でもそうなんだよ。お前は、悲しんでるんだ」

ソロ「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ソロは全く表情を変えないまま、じっとオレを見つめている。
・・そしてまた歌い始めた。確かめるようにゆっくりと、はっきりと。
流れる涙の旋律。青い光。闇。・・・・遠く遠く揺れる、小さな希望・・・

ソロ「・・・・・こえ、さざめき・・・くらく、いつし・・か・・・うせり・・・」

歌詞をオレたちにわかる言葉に直して、つぶやいていく。そうだ、それでいい。

ソロ「こおりはな、・・よる・・・。えかく、せり・・あがむなうちの・・・なと、すは・・・つめたく、ひろく」

レック「わかるんだな?・・そのまま読んでみろ」

ソロ「・・はめつは、うたい・・あおは・・のろい、ゆるされざる・・・きおく。しはわかち・・・つみぶかきち、まじわりて・・・かれゆく・・・」

・・・間違いない。これで道は、決まった。
オレは。・・く、はは。今更って感じだな。もう何度も誓ったはずなのに。
そして誓った数だけ、望みは砕かれ絶望したはずなのに・・・。
待ってろ。オレは・・・・・・お前を救ってみせる。今度こそ。
悲しみと諦めのまま、全てを終わらせはしない。

ソロ「・・・・・・レック」

レック「・・・ん?」

ソロ「歌おう、一緒に。そうすればわかる気がするんだ・・・ほんの少しだけ。俺も心ってやつを知りたい。いや・・・思い出したい」

レック「ああ。歌おう。・・・いつかソロの最後の願いを叶えるんだ」

オレは顔を上げ、ソロの体を引き寄せて抱きしめた。
・・その時、左手の甲にピリッと軽い痛みが走った。・・忘れかけていた痛みだ。

ソロ「・・・もうこんなもの必要ない。全ては筋書き通りだ。お前も覚悟できてるんだろ」

レック「・・・・・・・ああ。悲しみも絶望も・・全部受け入れるよ」

こいつがいる今、数字で表される情報など意味を持たない。こいつに勝てる情報源などない。

ソロ「・・・~♬・・♫・・♪―~・・♪♬~♪♫―・・・・・」

レック「♬♫―♫―・・・♫――~・・♬―♪♬―~・・・・」

悲しみを歌い、分かち合う。
今は理解できなくても、感じられなくても、きっといつか。
それは能力を濁らせる邪魔なものではなく、完璧になるために排除すべきものではなく。“ニンゲン”として“人間”を救うために必要なもの。

いつか・・・・・・絶対に・・・・・・・・。




9日目 20時02分 ―ロト―


・・・・・俺の名前は、「ロト」じゃない。
なら俺の名前は何で、「ロト」とは誰の名前なんだ?一体何なんだ・・・?
なぜ俺の記憶は滅茶苦茶になっていて、何から何まで思い出せなくなっているんだ?

俺は一体・・・・・誰なんだ・・・・・・・・?

思い出せなくなっている事柄。・・あまりにも多すぎる・・・今となっては何が思い出せて、何が思い出せないのかよくわからない。

俺は何者なんだ?・・勇者って何をする役目なんだ?なぜ俺が?俺はその役目を負うまで、普通の人間として生きていたのだろうか・・・?
アリアハンという城下町・・・そこが、俺の故郷で。でもやはりわからない、思い出せない。聞き覚えすらない。

一体何が起きているんだ。・・ソロは、俺の存在が上書きされかけていると言ってたが・・・どういう意味なんだ?
少なくとも「ロト」ではない名前を持った人間がいて、そこに違う誰かの、違う何かが重ね合わされ・・その、もともとの人間の記憶や意識が消え始めているということだろうか。

でもそれだけなら周りの人間が気付かないのはどう考えてもおかしいし、何よりアレフもアレンたちも、何の迷いもなく俺を「ロト」と呼び、同じように認識をしている。
彼らのことだ、俺についての歴史書や伝記なんかはあるだけ全部読み漁っているんだろう。それら全てに俺の正しい名前が記載されていないというのか・・・?
俺の名前が「ロト」だと、当然のように書かれていたのか・・・?

・・・待て。まず「名前」とは何を指すものだったか。一つまたは複数の存在が持つ、第三者によって認識される固有の名称、または物の種類とか。
俺の場合は前者のはずだが・・・いや、まずそれから疑ってかかるべきなのだろうか?
しかしそんなことまで考えだしたらきりがな・・・

アレン「ロト様。・・・あの・・・・」

ロト「・・っ。・・・・何だ?」

アレン「いえ、・・何かをずっとお考えの様子でしたので、・・こんなことを言うのは、その・・・おこがましいとは思いますが」

ロト「・・ん?そんなことはないよ、何でもいい。言ってみてくれ」

アレン「今は・・・、・・あまり物事を考えすぎるのは逆に、お体に障るのではないでしょうか・・・。先程からずいぶんと長く難しい顔をしておられます」

・・・・・。・・そんなに長いこと考え込んでいたのだろうか。・・そうだな、あまり心配はさせたくないな・・・申し訳ない。

アレン「い、いえ。出過ぎたことを・・・。思考を遮ってしまい申し訳・・・」

ロト「いや。・・ありがとう。心配させてすまなかった。そうだよな、難しく考えすぎても堂々巡りになるばっかりで・・・はは、確かに負担が大きい。何だかさりげなく救われたような気がするぜ」

アレン「・・・・・・もったいないお言葉です」

ロト「・・・。・・ところでアレン、感謝がてらにちょっと聞きたいことがある。サマルとアレフがどこにいるか知らないか?」

アレン「・・・御用がおありなら、俺が探して来ます。ロト様はここで待っていてくだされば」

ロト「え、ああ、えーっと。・・うん、じゃあ俺も一緒に探そう」

アレン「そんな。ロト様のお手を煩わせるようなことは」

ロト「いいって、俺も行くよ。・・それとも逆に緊張しちゃって迷惑かな?」

アレン「いえ!迷惑だなどとそのようなことは決して!!た、確かに緊張はしますがっ・・!!」

ロト「ふふっ。やっぱ慣れないなあ・・こそばゆいや。こういう感覚は変わんないんだよなあ」

アレン「・・・えっと、それで・・どうなさいますか?」

ロト「ああごめん、よし。さっそく行こう。なんなら手とか繋ごうか」

アレン「そんな!!恐れ多いですッッ」

ロト「あっはは冗談だよ、でも傍から見たらなかなか面白い光景だな」

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―――――


9日目 20時18分 ―サマル―


アレン「・・いた、おーいサマル!」

サマル「・・アレン?何ー、・・・って」

アルスさんと一緒に本を読んでたら、突然アレンに呼ばれた。
となりにはロト様とアレフ様もいる。・・どうしたんだろう。

アルス「・・何か血族内で相談でもあるのかも知れないね。行っといでよ」

サマル「うん。・・あ、それ最後どうなったか読んじゃってもボクには言わないでね?」

アルス「もちろんだよ!ネタバレは厳禁だからね」