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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第40話

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リトセラ「ふーむ。どうやら君の保護は完璧に行き届いているようだ。いやあ全く感心だね!立派なもんだよ」

アレン「・・・貴様を倒せばこの忌々しいゲームから解放されるのか?」

リトセラ「残念ながらそうはならないんだよねえ・・・まあいいじゃない、楽しみなよ。これは頑張った君たちに広い意味でチャンスを与えるための儀式なんだから」

エックス「ふざけんなッ!何がチャンスだ、誰が殺し合いなんかするかよ!!」

アベル「誰かを傷付けたり貶めたりして手に入れた幸せなんて長くはもたないし、そんなのは偽物だ。でもこれはそれ以前の問題だよ・・・あんまりだ。神のすることとは思えないね」

リトセラ「うんうん、僕もそう思うよ。でもまあ、仕事だし。ってわけで皆さんにはこれから中ボス戦に挑んでもらいます。終わったら鍵を探して、それを使ってこの世界から脱出してね!それを含めて1つのイベントだからね」

ソロ「わかってる。とっとと呼べ」

リトセラ「はいはいはい、わかったよ。せっかちだなあもう。おいで、イザリエ」

破壊神がそう言うと、上空に同じ魔法陣がもうひとつ現れた。

そして同じように影が集まり、人の形になる。が・・・僕の目にはだいぶ背が小さいように見えた。
そのシルエットはそれが小さな子供であることを主張している。

・・影が薄くなり消えると、そこには一体の西洋人形があった。
真っ黒なケープ、胸元の大きな赤いリボン。フリルのついた真っ黒なフレアスカート。大きくカールしたクリーム色の長い髪はツインテールになっていて、リボンモチーフの黒いヘッドドレスがあしらわれている。
そしてこぼれ落ちそうに大きな赤い瞳。

「・・・ったく、待ちくたびれたわよ」

人形から少女の声が聞こえた。イザリエと呼ばれたそれは退屈そうに欠伸をし、魔法陣に降り立った。手に持ったアンティーク調の日傘の先端を魔法陣に打ち付け、苛ついた様子を見せる。

イザリエ「・・・・・で。直接お話するのは初めてだったわね、新しい概念さん」

大きな目を細め、にんまりと笑みを浮かべてソロさんを見た。

ソロ「・・そうだな。挨拶が遅れてすまない」

新しい概念?

リトセラ「彼女はこう見えて序列第3位の破壊神さ。君たちには今から、とりあえず彼女が満足するまで戦ってもらうよ」

イザリエ「そうね。とは言っても単純にそれだけじゃアンフェアだから、私はこの姿を保ったままということにするわ。それぐらいでちょうどいいんじゃないかしら」

・・・なるほど。火器を持ってこなくていいと言ったのは使わないのではなく、あったところで通用する相手ではないということだったのか。

ソロ「ああ。そうしてくれると俺が自分の仕事に集中できる。この戦いの結果を、俺の思い通りにするという仕事がな」

イザリエ「まあ!嬉しいわ・・・貴方は本当に神に対する気配りが上手よね。期待しちゃうじゃないの」

破壊神は心底嬉しそうに微笑み、ふわりと浮いて僕たちと同じ場所まで降りてきた。

リトセラ「僕ら破壊神が一番嫌いなのは、物事に慣れてしまうこと。退屈だ。それを紛らわせる術を探すことに苦労は感じないよ。さあて、それじゃあ僕は一旦失礼するとしよう」

そう言って僕たちに軽く頭を下げると、赤い魔方陣と共に消え始め・・・そして最後にこう付け加えた。

リトセラ「・・あ、しつこいようだけどほどほどにね、イザリエ」

イザリエはそれを聞いてか聞かずか、微笑を浮かべたまま肩をすくめた。

ロト「・・・やっぱりこうなるんだな。ソロ、何か言うことは」

ソロ「・・そうだな・・・とりあえずこの戦いで誰かが死ぬことは何としても避けなければならない。でもまあ、そのことに関しては心配しなくていい。その代わり・・・」

ソロさんはやおら宙に浮かぶと、右手で指を鳴らした。
するとその姿がふっと半透明になり、淡い緑色の光に包まれた。

ソロ「俺は戦いには参加しない。サポートと“隠蔽”に専念する」

同じ光がいたるところで閃き、僕たちの体を包んだ。

エックス「へ、そりゃ心強いぜ。俺らは捨て身で心置きなく戦えるってわけかよ」

イザリエ「あら、考えたのね。確かにその方が色々と効率がいいし結果的には安全だわ」

そう言いながら、破壊神はその小さな手を目の前に翳した。するとそこに黒い魔法陣が現れる。あれは・・・

イザリエ「でもちょっと残念ね。・・・私としては手応えがなくなっちゃって」

ドルマドンか、そう思って身構えようとした瞬間。
黒い魔法陣が一瞬で膨らみありえない大きさになり、頭が破裂しそうなほどの膨大な魔力の波が全身を叩いた。

エイト(―――・・・ッ)

・・・まさに、桁違い。詠唱前の余波だけでこんなに・・・・・

イザリエ「貴方の恩恵なしで、この子達はどれくらい耐えられるかしら」

破壊神は片目を閉じ、不敵に微笑んだ。

――――――――――
―――――


10日目 08時47分 ―レック―

それはもはや呪文から紡ぎ出され発生する魔法とは思えなかった。
詠唱もなしに、魔法陣からは次々と黒い魔力の塊が波動となって放出される。

それは信じられないほど速く、撃つ兆候を見計らっていち早く避け始めたにも関わらず波動がオレの脇腹を掠め――・・・掠めただけなのに、その部分の肉は削り取られ血が吹き出ている。

直撃すれば、それを自覚する間もなく即死。それどころか、肉片一つ残らないだろう。

イザリエ「・・あらあらどうしたの?攻撃してきていいのよ?」

クスクスと笑いながら魔力を操り、宙に浮かんでオレたちを見下ろしている。

・・オレは波動を避けつつ、ソロの方に目をやった。

さっきあいつは“隠蔽”と言ったが・・・その言葉の意味は何なのだろう。
いや、考えてる余裕なんてないか。

ソロ「・・よそ見はしないほうが身のためだぞ」

ソロはオレの視線に気付きそう言うと、両手を低く広げて目を閉じた。
・・・何だ・・?

同時にこの空間全体に大きな衝撃が走った。直後、ごく細かな振動が地面から湧き上がってくる。
そして・・・・・

レック「――!!」

イザリエと呼ばれた破壊神はソロの方に目をやると、顔色を変えた。

イザリエ「・・・・・やるじゃない。まずは合格ね」

アレフ「・・・・・・?」

アレン「・・何だ、一体・・・・!?」

空中に飛んだときも振動は続く。つまり揺れているのはこの空間全体ということだ。
・・・オレは気付いた。同じだ、あの時と。

ソロは歌い始めた。その声が耳に届いた時、オレの全身は音を立てて凍りついた・・・ような気がするほど、冷たくなった。

ナイン「ッ・・・・!!」

アルス「な、何・・・・・!?」

サマル「・・・・・・・・・・・・・!!」

サマルも気付いている。振動と全身の凍結感に耐えて耳を澄ませ、意識を集中すると初めて聞こえてくる声。氷の結晶のように冷たく透き通った、青く透明な歌声・・・

だが違う。旋律は確かに「悲しみ」のものだが、そのメロディに乗せて紡がれる言葉が違う。オレたちにわかる言葉だが、どこかちぐはぐな単語が絡み合った不思議な響きだ。

アベル「・・・・これは・・・・・・・」