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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第41話

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ソロ「そうだ。大地の精霊一族に属するディアルト・バコバ・コリドラスという人物の真実名から由来して、やがて“神に近しい者”の意を含むようになった。正しくは名前じゃなく称号だがな」

レック「・・んっとに何でもわかるのな、お前」

――――――――――
―――――





10日目 10時22分 ―サマル―


それからボクたちは屋敷の二階に行って、色んな通路を通り、トラップをくぐり抜けて奥へ進んでいった。
でも前に見た時はこんな通路なかったし、ここは多分その時その時で中の構造が変わるんだろうな。

レック「・・なあ、ちょっと休んでからじゃダメなのかー?魔力も体力もみんなカラカラだぜ」

アルス「そうだね・・・あの破壊神、尋常じゃない強さだったもんね」

・・一応、応急処置で止血とかそういうのはしてる。でもボクも含めて、みんなボロボロだ。まあトラップや謎解きは全部ソロさんがぱぱっと解いてくれるから、ボクたちは歩いてるだけなんだけど。

ソロ「あまり時間がない。・・生きてさえいれば大丈夫だ」

・・・・・。何だかさっきまでより声が低くなって、表情も冷たい。どうしたんだろう。

アレル「・・その「鍵」というのは簡単に見つかるものなのか?お前の顔からするとそうは思えないんだが」

ソロ「・・見つけること自体は簡単だ」

アベル「見つけてからまた何か問題があるのかい?」

ソロ「いや。・・・いま説明したところでそれが回避できるわけじゃない。時間の無駄だ」

・・あれ?

レック「・・・・・・・・・・」

エックス「まーたそれかよ。ま、事実なんだろうけどなあ」

そうこうしてるうちに、広くて天井の高い大きな部屋に出た。
壁には一面に血文字が殴り書きされていて、所々に額縁にはまった絵が飾ってある。

サマル「・・・・・・っ」

・・何だか、とてつもなく嫌な予感がした。予感というよりは何か、冷たいものが背中を這い上がっていくような・・・とても嫌な、最悪な・・・確信・・・・・?

アレフ「・・・ここに、「鍵」が・・?」

ソロ「・・・そうだ。今から俺が特定する。「鍵」が何なのかはまだ決まってない・・・だから今から決める」

今から、決める。その言葉を聞いた途端、胸の真ん中に不吉な痛みが走った。

レック「・・・・・どういうことだ?」

ソロ「残念ながら、「鍵」が扉を開けるためのあの小さな物質である保証はない。実態があるかどうかすらわからない。この空間全体が「鍵」かも知れないし、極端な話ここにいる誰かの命がそうかも知れない」

ソロさんは向こうに歩いて行って、すうっと地面から足を離した。

レック「また反則すんのか?・・本当はオレらで色々それを突き止めたり使ったりしないといけないんだろ?」

ソロ「まあな・・・でもあいつらにとっては予想を裏切られることだけが楽しみだ、その辺を考えたら逆にサービスさ。・・それじゃあしばらく消える。何かあったら呼んでくれ」

そう言うと、ソロさんは空中でゆっくりと身体を丸めた。両足を腕で囲い、なんとなく胎児のポーズに似た体勢。するとその周りに空間の歪みが発生して、ソロさんの身体が白い光に包まれてぼろぼろと崩れ落ち・・・・・空間の歪みに吸い込まれて消えた。

アルス「・・・・・特定する・・・って・・・」

レック「・・あいつの言うことはいちいち考えない方がいいぜ」

・・しばらくすると、部屋の壁や天井が徐々に歪みだし、変色し始めた。だんだん色が薄くなって・・・溶けるみたいに剥がれ落ちる。

エックス「・・・・うぉ、え・・大丈夫なのかコレ」

アレル「・・・・・・・・・・・・」

地面に立っているボクたちの身体もだんだん色が薄れて、壁や天井みたいに溶けはしないけれど・・・やがて完全に真っ白になってしまった。

真っ白な空間に、真っ白な身体。目が眩みそう・・・・

その状態になって数分経たないうちに、空間の一箇所に黒い穴みたいなものが現れた。でもよく見ると、それはさっきソロさんが消えた空間の歪みと同じものだった。

そしてその穴から色のついた指が見え、腕、頭、肩・・・ゆっくり出てくる。
・・少し前に同じような光景を見たっけな・・・・

でもその動きは、あの時みたいにすうっと出てくるというよりは、ボクらのいるこの空間と、ソロさんが消えていった得体の知れない空間との境目から這いずるようにして“何か”が溢れ出てきて・・・それが一瞬にしてソロさんの身体を形作っている、みたいな感じがした。

おまけにそこから腐ったドロドロの生肉を引っ掻き回してるみたいなエグい音がするものだから、余計に―気持ち悪いって言ったら怒るよね―不気味だった。

そうしてひとまず上半身が全部出たところで、仰け反って上を向いていたソロさんは項垂れるように一度下を向いて・・・ゆっくり頭をもたげた。

ソロ「・・・・・おかしいな。何か変わったことはなかったか?」

アレン「・・見りゃあわかるだろ」

色を失った空間。・・しばらく黙ってからソロさんは言った。

ソロ「・・・そうか。となると・・・「鍵」は俺たち全員の魂だな・・・」

アレル「・・・それは、厄介な結果か」

ソロ「ああ。想定してた中で一番厄介だ。とんだ嫌がらせだぜ」

ソロさんは空間の歪みである穴の淵に手をかけ、勢いをつけて下半身を引きずり出そうとした。でもちょっと無理があったみたいで、ぐちゃっ、とグロテスクな音がして血しぶきが飛んだ。

ソロ「・・・いけね」

千切れかけた身体を今度は手で掴んで、引っ張り出そうとする。耳を塞ぎたくなるような音と一緒に下半身が出てきて・・・足の先まで全部が抜けると、ソロさんの身体はそのまま白い地面に落ちてきた。

途端にその身体も色が薄くなっていって、すぐにボクたちと同じ真っ白になった。飛び散った血も、溢れ出ている内臓も全部。
・・・ソロさんはうつ伏せに倒れたまま動かない。

エックス「・・・・・・おい?・・・・ちょっ・・・」

すると倒れた身体が小さな粉?みたいなものになってふわりと浮かび上がり、地面に立った人の形に固まって・・・やがて元通りのソロさんになった。

ソロ「今のは見なかったことにしてくれ。・・・ここでやるべきことは、もうない。あとは脱出するだけだ」

サマル「・・それだけなのに、一番厄介なの?」

ソロ「ああ、だから厄介だとも言える。・・・できればこれだけは、やりたくなかった」

レック「・・・・・・・・・・」

アベル「・・・具体的にはどうすればいいんだい?」

ソロ「・・今のこの状態から誰かが一歩でも動けば始まる。すぐに・・・可能な限りすぐにこの部屋から出ろ。俺が最後まで残る」

ソロさんの表情はますます冷たくなり、ついには言葉を紡ぐ唇以外は一切動かなくなった。
・・なんだか、お腹の中がぞわぞわする。とても嫌な・・・嫌な感じがする・・・。

・・一体、何が起こるというの・・・・?

エックス「・・なんか、一筋縄じゃいかないみたいだな。あの扉から出りゃいいんだよな?」

エックスさんは目線でボク達が入ってきた扉を示した。ソロさんが頷く。・・そして、一度深く息を吐き出してから顔を上げた。