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伝説の超ニート トロもず
伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録003

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そう言うと、ソロは腕を組むついでにドアを指差した。

「・・ああ、そうみたいだな」

『ベクスター博士、ドアの前にいるなら早く開けてくださるかしら?』

「へいへい。・・・お待たせ致しましたお嬢様、・・・・・」

ドアが開き博士の全身が顕になった瞬間、ルーム内の全員がふたりを除いて凍り付いた。

・・・・・ベルティーニ博士の白衣のほぼ半分が、赤く染まっていた。そして右手には数日前行われた緊急会議で目にしたものと同じ、人工知能のデバイス。
それも同じく血に濡れている。

「・・・・・・・・・・・」

「・・・な・・・・何があったんだね」

ベルティーニ博士はいつもと変わらないしかめっ面のまま、いつもと変わらない感情を抑えた声で言い放った。

「ワンが・・・・・ワンが過活動状態に入ったわ。見ての通りあの子の頭は空っぽよ、ほら」

右手を突き出し、手に収まるサイズの機械を無造作に床へ放る。

「・・・・・・・・・・・・い・・・・・・・・一体」

「・・大至急エリアSを封鎖して。・・・・私達のせいよ・・・・・彼の言った通りにしなかったからよ!」


「!!」

突然視界に火花が散り、目の前の映像の一部が変わった。
・・それはどうやら、その部屋にいたレベル5の職員全員に起こったことらしかった。

「・・・私の顔にパイでもついてます?」

呆然と彼女を凝視する博士たちに怪訝そうな視線を投げかけ、ベルティーニ博士はため息をついて右手の端末を操作した。

・・きっちりとしわが延ばされた清潔な白衣には、見たところ汚れ一つない。手にあるのは人工知能ではなくノーメマイヤーの端末だった。

「・・・いいや・・・・・もしかしたらちょっと―ううん、何でもない。疲れてるみたいだ・・・」

下を向いて額を押さえるベクスター博士。クロウ博士とカズモト博士も思わず視線をそらした。
・・・・スワードソン博士は密かに、悠然とソファに腰を下ろしたソロの顔を見た。
するとほとんど同時に、長い前髪が影を落としアメジスト色に変化した瞳がすっと動き、博士の視線をとらえる。

「・・・・・何か、良くない報告があるようだね」

「・・ええ。作戦実行中にワンがエラーを起こして、昏睡状態になっているの。それだけじゃない・・・ノーメマイヤーからの制御システムの干渉を拒んで、あの子自身の脳細胞ネットワークだけで独自のプログラムを組み始めているわ。これを見て」

ベルティーニ博士は足早に所長のもとへ歩み寄り、端末のスクリーンを見せた。
・・たちまちスワードソン博士の目が見開かれる。

「・・・・・・・・・・・・。・・・これは・・・・・」

「万一に備えて、ハイドラシステムとストライクチームの準備を整えるよう指示を出しておいたけど・・・何かトラブルがあったみたいで、現場は混乱しているわ。ノーメマイヤー本体がコンピュータウイルスのようなものに感染しているみたいなの」

「・・ありえねえ。奴の自我はもうこれっぽちも残ってはいないはずだ・・・ノーメマイヤーの命令を拒否するなんて、天地がひっくり返ったってそんなことにはならない。
・・おい、これもお前がやったのか!?」

スワードソン博士について端末を覗き込んだクロウ博士が、ソファで足を組んで座るソロを振り返り、歩み寄る。

「いいや。俺がしたことの結果でも影響でもない、一切関係ない。そっちの端末が先に直ったのは行きがけの駄賃だ。ノーメマイヤーももう正常に作動するはずだ」

「・・・ソロ。貴方ならどうにかできるんでしょう?お願いだから力を貸して。一刻を争う状況なの。このままだと危ないわ・・・大惨事なる前に手を打たないと」

「12分35秒57」

「・・・え?」

「12分36秒82。あとこれだけ彼女がここに来るのが遅かったら―つまり、彼女がワンの異変に気付くのが遅かったら、今さっきあんたらが見た光景は現実のものになった。神の気まぐれとベルティーニ博士の機転に感謝するんだな」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「これでわかっただろ。あまり俺の警告を軽視すると取り返しのつかないことになるぞ。
伝えたはずだ、一刻も早くワンの人工知能を取り外せと。・・俺は嘘は言わないからな」

「・・・・・・・」

「・・・ええ、反論の余地もないわね。でもこの状況で過ぎたことに思いを馳せてられるほど私達は安全でも馬鹿でもない。それと・・・他にも、どうしても貴方に来てもらわなくちゃならない理由ができたの」
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―数十分前  エリアS15区域にて
             
少し前に雪は止んだ。乾いた夜空には巨大な赤い光と黒煙が揺らめきながら立ち上っている。
周辺区間には既に封鎖領域が展開され、厳重な封じ込みが施されている。が、炎の山は大きくなるばかりだった。

軍服に身を包んだ数人の男が遠巻きに様子を窺っているが、この規模の問題を解決するには人員の数が少な過ぎるように思える。
そしてその大火がただの炎ではないことも条件に加えると、状況はまさに絶望的と言わざるを得ない。

燃えさかる建造物には、現実的に想定できるあらゆる衝撃や腐食、その他諸々の緊急事態に備えて造られた特殊金属が使われている。無論、高熱や炎など物ともしないはずだった。

現在このエリアSではこのような異常な現象が立て続けに起こっており、軍部は外部部隊・司令部ともに混乱を極めていた。
数日前から特に頻繁に起きているのが、この原因不明の自然発火現象である。それも普通の炎ではなく、アルカディアの実験報告によれば“この惑星に存在する物質の性質を無視し問答無用で焼き尽くす、物質の酸化によって生じるものではない何か”。

この炎を消し止める方法はひとつしかない。一定数値以上の非常に激しい衝撃を与えること。例えば他の災害によって巨大な廃屋となった建物を上空100メートルから落とす、など。
普通の炎に対する消火措置のすべてが全く意味をなさなかった。

そしてその炎は、さらに厄介なものを必ず呼び寄せる。

「・・合図が来た。全員、至急保護シェルターに避難しろ!繰り返す、至急保護シェルターに避難しろ!」

一斉に軍服の男達が炎から離れ、封鎖壁に現れた扉の中へ足早に消えていった。

その数秒後、炎の中心に筒状の空洞ができ、鈍い打撃音・・直後、耳を劈くような破裂音が鳴り響き、炎が弾けて消えた。

あちこち焼け焦げ、異常な高温によって赤白く光る建造物の残骸が顕になる・・・が、それらも一瞬にして粉々に砕け散った。

・・・歪む陽炎の奥には、異様な姿をした何かが電動の車椅子に腰かけている。
というよりは、車椅子に縛り付けられている。衝撃に強い耐性のある素材のみを用いて作られた、専用の厳重な拘束具によって。

特に首から上のものはより頑強な特殊金属で構成されている。
その内側には、極めて繊細な精密機器が収納されているためだった。

手足もその他すべても1ミリたりとも動かないが、生きていた。
直接脳に埋め込まれ、外部の遠隔操作機器と接続されている小さなデバイスの命令によってのみ、“それ”の肉体は活動を行う。