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伝説の超ニート トロもず
伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録003

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・・・はずだった。少なくとも今までは。

先ほどまで炎が渦を巻いていた場所の地面から、どす黒く焦げた異臭を放つ肉の塊が這い出てくる。流動し、まるでクリームのような異様な質感を持つそれは、徐々に体積を増やしていき――同時に何かを形作っていく。

・・脚。胴体。異常なほど長く太い腕。そして―縦に長く濁った灰色をした巨大な一つ目が面積の半分を占める、醜い顔。

人間の何倍もの体積と質量を持つその化け物は、腕を地面に叩き下ろすと、さながら四つ足の獣のように咆哮し“それ”を目がけて突進を始めた。

だが次の瞬間、鋭い音と共に化け物の両腕と片脚がひとりでに胴から離れ、黒い粘液をまき散らしながら吹き飛んでいった。
そのまま、支えを失った化け物は絶叫しながら倒れこみ、しばらく悶え苦しむ。
そして残った片脚で地面を蹴り跳躍すると、醜い口をいっぱいに開けて“それ”の頭を食い千切ろうと飛びかかった。

しかしあと数センチで拘束具の金属部分に牙が触れようという瞬間、化け物の全身がぴたりと静止した。・・空中で。
まるで時間が止まったかのように。

そして直後、再び鋭い音と液体が飛び散る音が数回、混じり合う。

ばらばらに切り裂かれた化け物の身体たちが、それぞれ好きな方向に吹き飛び粘液をまき散らした。


「・・・・・見ろ。まただ。日に日に処理のしかたが暴力的になっていってる。最初は首の骨を折って一撃で殺していたのにだ」

「ええ。さすがにノーメマイヤーから具体的な処理のしかたまで命令されてるわけじゃありません。“あれ”の脳細胞に残る根本的な性質が影響したため、なるべく苦しまぬよう即死させる方法をとっていた・・・外宇宙から来た化け物相手に、お優しいことです」

司令塔の最上階から、軍服を着た二名の男女がその様子を見降ろしていた。
黒い肌を持つ大男の胸元には、「総軍司令部 元帥 ジェームス・D・ギルテック」と表示されたライセンスがある。

隣に立つ中東系の女性のライセンスには、「総軍第一部隊 大尉 サマンサ・W・グレー」と表示されている。

「・・ひどい話ですね。この状態になるまではみんな彼と親しげに接していたのに・・・自分達の命に関わる問題が生じた瞬間、手のひらを反すように冷たくなって頭に機械を突っ込むだなんて」

「それだけじゃないさ。奴は数年前に大きな人身事故を起こしてる。博士号を持つ人間を含んだ20人近くを惨殺したって話だ。
事故の詳細を知らない奴らが怖がるのは当然のこと、ついでに上層部の連中も最強の兵器を作るいい理由ができたと思ってるだろう。丁度良いタイミングだったってわけだ」

「・・何か良からぬことを言いたそうですね、サー」

その時、指令室のドアが開いて誰かが入ってきた。軍服の二人が振り返る。

「・・お取込み中失礼するわ。アルカディアのアレッサンドラ・ベルティーニです。
急いでレベルCまでの部隊長全員に伝えて欲しいことがあるの。緊急よ」

「これはこれは・・ドクター。ご機嫌麗しゅう・・・それはマスターカードかい、驚かさないでくれよ。
あー、少し待ってくれないか、知っての通り作戦実行中だ」

「さっきので一段落着いたはずですわ。すぐに済みます」

「・・・・そんなに急を要するのですか?」

「ええ。まずは・・・とりあえず黙って聞いて欲しいのだけれど、いいかしら」

生真面目な性格ゆえか常に少しばかり険しい表情をしている彼女だったが、この時は雰囲気が違った。
早々とそれを読み取った二人は、言われた通り何も言わず頷いて了承した。
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「・・・・そりゃまた・・・随分と突拍子もない話だな。だがあんたがそんな質の悪いジョークを言う人間だとも思えん。それで、具体的な解決策は?」

「まだ見通しが立っていないわ。それに解決策と言ったって、“彼”は“彼ら”の目的は私達に危害を加えることじゃないと明言してます。その言葉に信憑性があるかどうかは別にして、私達が大きく動くに足る理由がないし、動かないことによって生じるリスクもない。今は大人しく従うべきだと判断するのが賢明かと」

「でも色々と不可解な点がありますね。そんなおかしな能力を持っていながら、自分に比べればよほど無力な我々に助力を求める・・・ワンの人工知能のことにしても、わざわざ我々を動かさなくたって自分だけでどうとでもできるはず・・・」

「それに関しては、私達に協力してもらうという事実を作り出す必要がある、というのが“彼”の言い分よ。確かに私達人間の思惑を無視して強制的に行動を起こしたところで、私達自身がそれを遅かれ早かれ救済だと認識しなければ意味がないのでしょうね」

「成程。そいつを聞いてより強く思ったが、その“彼”ってのはどうにも――クレイジーな野郎だな。イカれてやがる。それでいて、我々がどう頑張っても足元を掬うことができない異常な賢さを持ってる。
・・気になるフレーズがいくつかあったな。助けに来た、神様に頼まれた、どこにも存在しないがすべての場所とすべての時間に存在する、・・どちらかをどうと決めつけてはいけない。
どうも隠喩的な別の意図があるように思えるな」

「私達にそう思わせることもまた“彼”の目的の一つよ。貴方の言った通り、私達がどんなに足掻いたところで“彼”の裏をかくことなどできないし、それどころか“彼”の予知と違う内容の発言も、思考でさえも難しいわ。それは身に染みてる・・・。
だから、今は“彼”の言った通りにするしかない。私達の持つ知識や技術や思考力では、“彼”の非現実的で圧倒的な演算能力にはとても対抗できない」

「・・・。・・それじゃあ・・・“彼”の目的が実際はどういうものであったとしても、我々は逆らうことができずにあくまでも奴の思い通りに、動かされるしかないというわけか」

・・短い沈黙が訪れた。だがその沈黙を破ったのは人の声ではなく、軍服の2人の個人使用端末がデータを受信した合図の音だった。

「・・・?・・・失礼」

ジェームス元帥が怪訝そうな顔で手首の端末を確認する。
通常、軍のトップである彼への連絡などは個人端末ではなく、軍で使用している既定の端末に届く。まして緊急を知らせる際の受信音など、個人用端末からは聞いたことがなかった。

「・・・・何だ一体・・・。・・・・・・・んん?」

THE  CONSEQUENCE  WAS  ALL  MINE
見たこともない奇妙な書体で、奇妙な文が大きく表示されている。
不審に思いながらも、ウイルスなどのマルウェアに対する対策は十分にしているという自負から、ジェームス元帥はファイルを開いた。

You have fulfilled what little use you have.
Are you sure enough?
Sure enough to face the responsibilities of your actions?

Please think about it,and understand who am I.