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なかのあずま
なかのあずま
novelistID. 54195
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機動戦士Oガンダム

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 「姉に似ていることがそんなに不思議か・・・シャア・アズナブル」
 それが布を纏った、タロに声をかけた男の名だった。彼は被っていたフードをとり素顔を露わにすると、目の前の男を睨みつけた。
 その男は、自らをアクシズ、そしてネオ・ジオンの実質的指導者であるハマーン・カーンの弟、カーン・Jr.と謳い、わずかな光に浮かび上がる後頭部に向け広がったボブの髪型とその姿は“姉”と瓜二つだった。違うところと言えば“姉”がピンク色の髪に対し、彼のは紫がかったピンクであるくらいだろう。
 「・・・まぁいい、まずこれを見て欲しい」
 カーン・Jr.が透明なアクリル状のタブレットを持ち出すと、そこには一年戦争を始めとした勢力図の変遷が映し出されていた。
 「ジオンが敗戦してからの残党軍の全体的な動きだ。ザビ家を狂信するテロリストが宣戦布告するも結果はこの通り、全く前時代的な奴らだ・・・
 私の姉はザビ家を建前としてやっている分、こいつらよりかは遥かに冷静だ。それでも、それでもだ!ニュータイプの父でありあなたの父上、ジオン・ズム・ダイクンは影も形もない!ジオン・ズム・ダイクンこそが人類を正しい方向に導く・・・そこでだ」<改ページ>
 「私が継げば・・・・・プロパガンダになる」カーン・Jr.が熱を帯び演説染みた所で回答するも、それは気持ちのいい物ではなかった。
 「その通りだ。ザビ家ではなくジオンの名が、ジオンの血が宇宙移民者(スペースノイド)を再び蜂起させるのだ。
 かつて『希望』と言われたこのコロニーも今となっては人々の記憶からも忘れ去られ手付かずのまま葬られ時が経てばただの廃棄物・・・
 戦いの中で流された者、コロニーを追い出され宇宙漂流者になった者、彼らの存在はアースノイドに知られてすらいない…知ったところで何もしないだろう!
 そんな奴らが今も重力下でのうのうと生きている!そいつらを粛清するにはニュータイプの力が、ジオンの遺伝子を受け継いだシャア、いや、キャスバル・レム・ダイクンが必要なんだ!!」
カーン・Jr.は「ふぅ」と一息つき、さらに続けた。
 「ここは辺境のコロニー、ほとんど火星圏内だ。中で何が起ころうとアースノイド共は何も気づかない」それまでの高圧的なトーンとはうって変わり、猫撫で声で言った。
 「・・・・・協力しよう」
 「嘘でも嬉しいよ・・・シャア」
 「・・・・・・・・・なんだか騒がしいな」
 シャアは白々しいまでの話のそらし方をしたが、次第に港の喧騒が遠くから聞こえてくる。
 「失礼します。連邦の物とみられるモビルスーツが港に現れました」
乞食の格好でカムフラージュしたカーン・Jr.の配下のウィノナが現れ報告するも、
 「ただの偵察だろう、放っておけ。余計な手出しはするな」カーンJr.は至極冷静に制した。
 「こういうことは多いのか?」シャアが訪ねる。
 「さぁな・・・来てもこの有様だ、すぐに引き上げていくだろう」
「さぁ・・・?」カーン・Jr.の言い方に違和感を覚えたが
 「ところで…聞けばあなたはしばらくエゥーゴに加担していた。そして私の姉、ハマーンと対立して今に至る。そうだな?」と話を逸らされ「あぁ」と答えた。
「なぜアクシズではなくエゥーゴに?」
シャアは「フッ」っと、それが答えだと言わんばかりに自嘲気味に笑った。
「・・・・・シャア、ついてきてくれ」
 カーン・Jr.が薄暗い廃墟の中を進んだ先にはリフトがあった。シャアとカーン・Jr.を乗せるとゆっくりと降下していき、二つの階層を過ぎると、薄暗いながらも格納庫が見えてきた。<改ページ>
 本来は別の施設だったのだろう、間に合わせの格納庫であろう事は一目見ればよくわかり、冷たい空気が漂っている。
「よくここまで集めたな・・・しかし、なんだあれは?」
 格納庫にあるモビルスーツはどれも手や脚、頭部が別々の機体のパーツからツギハギで出来上がっていた。
「流れ着いたモビルスーツを回収し動かせるようにした。お前の百式もこうすれば」
「そんなことより、これでやるつもりか?」
「・・・これは飾りだ。この下に我々が独自に開発した物がある」
リフトが最階層に着いた。
 そこには人類が初めて開発し実践に投入されたモビルスーツ、ザクの系譜を受け継いだ巨人が並んでいた。
「G(グランド)・ザック、ハイザックの発展型だ」
 一度連邦の手に渡って開発されたザクの発展型に、さらにジオンの手が加えられた機体であり、頭部のパイプは健在であった。
「そして」
 カーン・Jr.が最深フロアの最奧まで進んだ先には、一回り大きな、一際目立つシルエットのモビルスーツがあった。
 それは、ジオンの特徴を含んだ丸みを帯びた流線型のボディでありながら、連邦の象徴である白いモビルスーツの形をしていた。
 「連邦とジオンの技術の結晶、O(アウター)ガンダムだ」
 「アウター・・・ガンダム・・・」
 薄暗い中で見るその姿は寺院に鎮座する大仏のようだが、シャアの目にはどう映っていただろうか。
 「サイコミュを搭載しているがオールドタイプでもある程度使える。だが、ニュータイプが乗ればそれをフィードバックし、アウターの性能そのものを上げる事ができる・・・これをあなたに預けたい」
 その言葉を受け取ったのかいないのか、シャアの口から出たのは不意を突く返事だった。
「・・・ここへ来る時、一人の少年と会った」
「・・・・・は?」
 カーン・Jr.が呆気にとられると、タイミングを見計らったかのように奥のほうから物音がした。
「なんだ!?」
 それはリフトが上へ遠ざかる音であり、ウィノナから彼の持つ端末に通信が入った。
≪もうしわけありません。男の子がそちらへ入っていってしまいました≫
 しばらくするとリフトが下りる音に変わり、カーン・Jr.は反射的に銃を構えた。<改ページ>
 「誰だ!」という声が仄暗い格納庫に響くと「彼がその少年だ」とシャアが言った。
「あんたがさっきの・・・」
 タロ・アサティが物陰から姿を現し、シャアを見てそのままカーン・Jr.へ目を移すと青い虹彩に囲まれた瞳孔が開いた。
『なんだ・・・この人・・・』
 それがカーン・Jr.を見た彼の印象だった。性別がどっちつかずな彼の容姿を一目見ればタロでなくともそのように思うだろう。しかし彼は容姿ではなく、そのもっと奥の、内から出る人のにおいを感じ取っていた。
 「なんだ少年・・・私の何がおかしい!」
タロの浮かべた訝し気な表情が、引き金にかかる指に力を入れる。
 「銃を降ろしてやれ、この少年は鋭い」
 撃つ気がないのを見透かされている事を婉曲に言い、カーン・Jr.が銃を下すとシャアはタロに向き直った。
 「先ほどはありがとう、礼を言う。私は・・・・・シャア・アズナブル」
「シャア・・・」どこかで聞いた名だとタロは思った。それはコロニーで元軍人が口にしていた名だった。
 「そして彼は」とカーン・Jr.の方に手をやり「カーン・Jr.と言ってジオンの残党を率いるハマーン・カーンの“弟”だ」と紹介した。
「・・・・ハマーン?」
 聞いたことのない名前にタロが顔をしかめつつ手を差し伸べると、カーン・Jr.は警戒した眼差しでシャアを見た。