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なかのあずま
なかのあずま
novelistID. 54195
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機動戦士Oガンダム

INDEX|44ページ/46ページ|

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<改ページ>
 既に十三隻、エスタンジア艦の約半数が骸と化した。アリエスのモビルスーツ群の三日月とガスマスク歩兵のシルエットは気が付けば、モノアイの白いモビルスーツに塗り替わっていた。
 「なんなの・・・これ・・・・」
 クシナはそのガンダムタイプの群れから黒い血が滲み出ているような錯覚を覚えた。ビームライフルを放ちながら、絡みつくツタを引きちぎる様にその中へ飛び込もうと脚を踏み込んだ時、行く手をアウターの背が塞いだ。
「タロ・・・・・?」
 彼は何も言わずにイルダーマの群れへと向かっていった。そして、光が広がっていった。

 光の中を、タロが歩いていた。彼の声がクシナの中に響いた。
 『きみは・・・未来へ・・・!』

 我に返ると、変わらぬ戦場があり、アウターが単身でイルダーマ群へ向かっていた。
「あしたへ、って・・・」彼女は思わずおなかに手を当てていた。
Z Mk-?の元に、ガザXが近づいていた。



 ガンキャノン・ディテクターとザク?の計六機が一斉にビームキャノンを構えた。「撃てぇ!!!」
 ガルヴァドスに弾群が向かうも、ひらりひらりと黒い体を蝶のように翻し、光弾は彼方へと消えていった。
 ≪どこ狙ってんだァ!≫ガルヴァドスの殺人的な加速が虚をつき、ガンキャノン・ディテクターを貫いた。
 ≪さぁ次は・・・ん?≫
 パイロットの執念が、体を貫通しているランスをがっしりと掴み、肩の砲塔をガルヴァドスに向ける。
≪逃が…す…かよ≫
≪!!!コノヤロッ・・・≫
 ランスの無数のビームニードルが出てコックピットを焼くと同時に、砲塔から射出た一発の光弾がガルヴァドスをかすめていった。
<改ページ>
 タロは、まるで時が止まったような、冷たい深海を泳いでいるような感覚の中にいた。
 アウターを動かす器となり果てた彼は、ただぼんやりと、自らが敵機体を葬る光景を眺めていた。
 『あぁ・・・命が溶けてゆく』
宇宙に混じる人の思念をごく当たり前に感知しつつも、もはや干渉することはない。
 一瞬の苦しみを受け続けているうちに、いつからか自らを透明な殻で閉ざしていた。
ニューロタイプ、それが彼のニュータイプを超えた一つの形だった。

  タロ・・・!

 自閉した意識の中で鮮明な声が聞こえ、刻まれた声の方を見るとZ Mk-?がガザXの四肢に捉えられていた。
 彼女を背後から掴むガザXが今にも粒子で焼こうとしている、迂回している時間はない。
タロは空虚な意識の中でアウターに逆らい、彼女の下へと向かった。

  ドオォンッ

 ガザXに後方からの流れ弾が命中し、機体が揺らめく。それは、ガンキャノン・ディテクターが死の間際に放った物だった。
その隙が死角となり、ガザXは切り裂かれ、タロはクシナを手元に引き寄せた。
 ガザXの機体が崩壊していく中で、エヴァの安らぎに満ちた顔をタロは見た。そしてそれは青い蝶となり、飛んでいった。
 『そうか…ケンの面倒、見てくれてたんだな・・・』


 「エヴァが・・・・死んだ」
 ゼーレーヴェ隊に、衝撃と共に喪失感が走った。そのショックが一番大きかったのは、迫水だった。
 「くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
 ガザYは目の前のジム・セークヴァリペアに、ビームサーベルを叩きつけた。
<改ページ>
 モビルスーツが、生身の四肢と直結しパイロットの手足の代わりとなれば、その性能は著しく上昇し本来の機能性をほしいままにできる。
 そしてイルダーマの場合、一年戦争時のリユース・サイコ・デバイス実験と違い機体にサイコファイバーが使われている。故に、イルダーマは数を減らせども厄介な機体だった。
 その様子を、アリエス総合司令室から実験台のように見つめる目があった。
 「やはりイルダーマの動きにばらつきがあるようだ。」
 「下がらせますか?」
 「身体能力の差だ、その必要はない。それにリユース・サイコ・デバイスによるパイロットの肉体反応がニュータイプに何かしらの影響を及ぼしているはずだ。」
 ブラッド・ワインスタインはヴィルヘルムへの視線を背に受けながら緩やかに反旗を、半旗を掲げる。
 「・・・・・あなたは…なにをしたいのですか?私をこんな体にし・・・人を、こんな人体実験をしてまで・・・」
 「こんな実験?」
 「なぜ・・・今になってリユース・サイコ・デバイスなんてものを・・・」
 「サイコファイバーを直結させたことによる生体への反応、影響を」「そういうことを言ってるんじゃない!!」
 ブラッドの激昂を手のひらで遮ると彼は続けた。「・・・・なぜカピラバストゥコロニーの人間を使ったと思う?」
 そんなことわかってたまるか、という視線を送るもヴィルヘルムには届かない。
 「スペースコロニーの役目は人の生活を守ることが大前提だ。人が手入れして初めてその環境を保つことが出来る。しかしそれがなくなったコロニーはどうだろう?」
ヴィルヘルムはブラッドの目をやっと直視し
 「長いこと放置されば機能は次第に衰える。ましてやカピラバストゥコロニーは最初期に作られたものだ。」
 次第に彼の言わんとすることを悟り、ブラッドの瞳孔が開く。
 「今でも宇宙放射線を完全に防いでいれば何も問題はないがね。」
 ブラッドはただ立ちすくむことしかできないでいた。たとえ微量だとしても、長い間それを浴び続ければ・・・
 「未来のない者達を私なりに供養したにすぎないんだよ。人の革新の萌芽のためにね。」


 エスタンジア艦隊の殿に、暗黒星雲を思い出させる400m超の荘厳なフォルムが宙に鎮座している。タロはイルダーマを一掃するためにアウターを、サイコミュ搭載艦ケツァルコアトルへとドッキングさせていた。
 「アドルフ、舵はまかせた」<改ページ>
 ≪わかった・・・・エスタンジア全艦隊に告ぐ!これより、敵機の一掃のため我が艦の主砲を解き放つ、巻き込まれたくなければ道を開けろ!!≫


 「そしてお前自身について、現段階においてのメモリークローンの実験についてはこれを見るといい」ヴィルヘルムから受け取った冊子には『ZEON CONTINUE OPERATION』と書かれていた。
「やっぱり・・・アンタは・・・!」

  戦場に眼を焼くほどの一筋の閃光、一瞬の静寂、爆炎

「なんだ?!」
 「おぉ…ケツァルコアトルの反陽子収束が上手くいったようだな。」ヴィルヘルムは一瞬瞳を輝かせるとすぐに無表情に戻り「ではこちらも白いテスカトリポカを出そう。」と言い残し総合指令室を後にした。
 「・・・・・ウィノナ、しばらくここを頼む」
 ブラッドは彼女に通信機を渡し、ヴィルヘルムを追った。

                    ≠

エヴァが散った。
 戦場から見れば主力モビルスーツの一機が撃破されたにすぎない。
 ゼーレーヴェ隊にとってもまた、ただ漠然と『何かが消えてしまった』という印象でしかない。
 人の死の直後というのは得てしてそういう物で、あとになって初めて実感が沸きあがるものである。それが戦争であれば、まず哀しさより先に怒りがわき、その矛先は仇である相手へ向けられる。悲哀に浸っている余裕はないのだ。