ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録004
「ええ、データ元が不明のメッセージです。・・『その2人がそこを去らないうちにできるだけのことをしろ』・・・・・だそうです。噂をすればですね」
「どうせならもっと具体的な指示をくれよ・・・」
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「・・・あ、できるみたいですよ。ちゃんと魔力反応が起きました。これでいつでもここに戻って来れます」
「ルーラの座標指定が利くってことは、やっぱりこの場所で何かする必要があるってことだよな・・・。ここに見えたあの光の文字の意味もまだわかっていないわけだし」
「それにしても困りましたね、言葉が通じないなんて。何かするにもしようがないと言うか・・・どうにかできればいいんですけど」
「・・ああ・・・・早くソロを見つけた方がよさそうだな。じゃあ、もう戻るか。これ以上ここにいても埒が明かないし迷惑になりそうだ」
「・・そうですね・・・」
1人の手首に装着された小さな機械から浮かび上がるホログラムを見て、何やら会話しているらしい白衣の人間達を見やる。
すると向こうのうち数人がこちらに顔を向けた。それを見て、剣を背負った青年は軽く片手を上げ、大きな戦輪を腰に掛けた青年は丁寧に頭を下げた。
そして背を向け、歩き出す。
「・・ふと思ったんですけど、アレルさんって意外に仕草のノリは軽いですよね」
「そうか?まあ今頭にある記憶じゃ、俺は16から17歳くらいみたいだしな。あんまり考えたことなかったがこれ位が普通じゃないのか?」
「まあ、僕がたまたま小さいころから城勤めだったのでそう見えるだけかも知れませんけど」
その時、背後から聞こえる会話らしき声が急に大きくなった。・・振り返ると、全員がこちらを向いている。どうやら話しかけられているようだ。
前の方にいた比較的背が小さく、白衣を着崩している男が歩み寄ってきて、何やら身振り手振りを交えながら早口で喋っている。
「・・・。何て言ってるんでしょうね・・・」
「わからんが、とにかく俺達に何か伝えようとしてるのは確かだな」
両手でしきりに床を指差したり、奥のガラスでできた壁の向こうにある部屋を指し示したりを繰り返しているように思えた。
「・・ここがどういう場所かを説明しようとしてるんでしょうか。それとも・・・・・あ、部屋に入れってことですかね?」
「うーーん・・・・・・」
困り顔で首を傾げてみせると、相手も腕を組み顔を顰めた。だがすぐに何かを思い出したように顔を上げ、片手を上げ「ちょっと待ってて」と言いたげな仕草をすると、足早に部屋の中へ入っていった。途中で1人に声をかけ同行させてから。
しばらくして戻ってきた彼らの手にはいくつかの、手ごろな大きさの・・・どこか見覚えのある物体があった。
見覚えのある光沢と色味、そして。
「・・・・魔法の匂い・・・。・・この世界にも錬金技術があるんでしょうか?」
「ああ、確かに魔力を感じるが。・・錬金って何だ?」
「えっと、色んなものを組み合わせて新しいアイテムを作ることができる魔法技術です。・・・・あれ?これって・・・」
ふと目に留まったのは、もとの世界で何度も手にした・・・見覚えがあるどころか、懐かしさすら感じる金属の塊だった。
「・・オリハルコン・・・」
青白く美しい輝きを放ち、絶対的な硬度を持つ貴金属。
「オリハルコン?・・まさか、なんでこの世界にあるんだ?」
「あれ、知ってるんですか?」
「ああいや・・・俺が前に使ってた剣がこれでできてたはずだ」
「そうだったんですか。実は僕もこれにはかなり助けられたんですよ。・・・・なんで、僕達に見せに来たんでしょうね」
「・・・んん・・・・・・・・」
オリハルコンの他にも、非常に強い魔力の波動を放つ銀色の鉱石やどこか異質な“匂い”を感じる金色の金属片、かなりの重量感を持つ鈍い灰色の大きな塊、ガラスのように透き通った赤い石の欠片、複雑な形をした青い水晶などがある。
「・・僕は見覚えないですけど、他のも錬金に使うものなんですかね」
「・・・・・。・・・聞いてみるか」
「誰にです?」
「知ってそうな奴に」
「・・ああ、エックスさんとか。呼んできましょうか?前一緒に話したんですけど彼、僕の見立てでは相当な通ですよ」
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「・・・なんか好感触だな。とりあえずこれで正解なんじゃないか?」
「ああ。やっぱ向こうの宇宙の物だったみたいだな、これらは。でもちょっとした時間稼ぎって感じか・・・」
「とにかくソロから何らかのサインがあるまで、彼らにここにいてもらう必要があるみたいだからねえ。ううむ、何とかして意思の疎通ができれば・・・色々聞いてみたいこともあるしなあ・・・」
「未知のもの専門の研究者としては、なかなか心をくすぐられる要素ではありますからね」
「・・・?なんかまた1人戻ってったぞ。・・誰か呼びに行ったのか?」
「・・・・そういや確かモニターで見たときは軽く10人くらいいたよな・・・」
しばらくすると、再びバルコニーに二度衝撃が走る。
見ればとても人間が手で持ち上げることなどできそうもないような大剣を携えた青年が、立ち上がるなりそれを片手で易々と―まるでその剣がボールペン程の重量しか持っていないかのように―彼自身の背後に収めた。
「・・・・もう驚かない。驚かないぞ。俺はもう何が起きたって驚くもんか」
「良い心がけだ。俺もそうする」
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「・・・それで、これらも錬金に使うものかも知れないってことになったんだ」
「んー。なるほど、確かにこいつらは錬金素材だよ。・・例えばこいつはミスリルって言って、色んな魔法金属を作る基盤になる鉱石なんだ。中から強い魔力を感じるだろ?盾とか鎧とかに使われることが多いんだ」
「ミスリル・・・聞いたことがありますね。既に加工済みのものしか見たことなかったですけど」
「ああ、俺も知ってる。こんな石だったんだな」
「あとあの重たそうなのはヘビーメタル、そこから右に順だと赤いのがマデュライト、時の水晶、虹色のオーブ、それから・・・あの金色の小さい奴は何だろう、金塊とかゴールドストーンじゃなさそうだしな。横の青っぽいのも見たことないなあ」
「エックスさんでも知らないんですか。うーん・・・」
「でもここって、俺らがいたとことは全く違う種類の宇宙なんだろ?なんで見知った錬金素材があるんだろうな」
「・・・レックから聞いたと思うが、どうやらソロがここを訪れたみたいなんだ。何か関係あるかも知れない」
「んー。そうだな・・やっぱ、まずあいつ探さないと色々始まんねえしなあ」
並べられた無数の素材は、彼らがいた宇宙でもかなり貴重な部類に入るものばかりだった。
おいそれとは手に入らない、または生成するのに大量の素材と時間と労力を要するような。
「ですね。ひとまずあの人達には待っててもらう方がいいかも知れませんね」
「・・・・!」
ふと、アレルと呼ばれていた青年が背後を振り返る。