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伝説の超ニート トロもず
伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録004

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「・・どうした?・・・。・・・・この地響きって、あの化け物が出てきた時の・・・?」

「ああ。・・・多分、空間が歪んで裂けようとしてる音だ。さっきの衝撃波とは違う」

「一旦皆さんと合流しましょう。あの大きな怪物の時よりだいぶ近いみたいですし」

バルコニーの外側に向かって走り出す。・・そしてそれを見た白衣の男が手を伸ばし声を上げようとした瞬間、またしても床に衝撃が走った。

だがそれは人間の形をしたものが落下してきたことによるものではなかった。

「!?」

「っ・・・こんなに近かったなんて」

半透明で黒く巨大な何か―独特な形をした触手のようにも見える―が、バルコニーの外柵を大破させこちらに向かって高速で伸びてきた。
前に出ていた3人の間をすり抜け、奥の研究者達に襲い掛かろうとするが、それ以上は伸びないのか口惜しげに床へ触手を叩きつける。

「・・・・俺達を狙っていない?」

そしてその表面が気味の悪い音と共に波打ち、徐々に色が変わっていく。
触手の芯らしき部分は黒いまま、まわりのぶよぶよとしたゼリーのようなほとんど透明の部分が薄く光りながら、少しずつ鮮明な赤色に。

そして半透明だった部分が全て濁り血のような赤に染まり切った瞬間、先端が4つに分かれて上へ伸び、それぞれ研究者達の頭を目がけて――

「!!」

次の瞬間、その4つの触手が弾かれたように横に吹き飛び、外壁にぶつかって下へ落ちていった。
・・よく見ると触手は枝分かれし始める部分から切断されており、断面から黒い粘液を垂れ流しながら床へ落下する。

・・・白く輝く鎖が宙に浮いている。その先端についた大型の戦輪が、弧を描きながら持ち主の手へと戻っていった。

「エイト、ナイス!」

「・・どうもです。ところでこの化け物、再生するみたいですよ」

「だな。・・エイト、ひとまずお前はそのままの位置を保って、その人達を守ってやってくれ。この世界の住人達はどうも戦闘に慣れてないみたいだから」

「わかりました。ただ手早く片付けないとレックさん達までここに飛んできそうですね・・・そうなるとちょっとばかり厄介ですよ」

「言えてる、ここ狭いし周りの建物傷付けちゃうとアレだもんな!」

切断された触手がずるずると戻っていき、数秒後・・・下方から本体が姿を現した。
赤く光る不定形の身体は常に流動しているが、上部に質感の違う飾りのような球体が付いていた。大きな黒い目玉の中心に白く透き通った瞳のようなものが見える。

前にいる2人が同時に剣を手に持ち、構える。そして大剣を持った青年が高く飛び上がり、自然に落下する数倍の速度で降下しながら空中で身を捻り、怪物の脳天に刃を叩きつけた。
凄まじい衝撃音の後、目玉のある頭らしき部分に亀裂が入り、ひしゃげる。

「おっ、かぶとわりが効いたか。ちょっとだけど守備力下げたぜ」

「サンキュ。・・あと15秒くらいしたらデカいのが打てる」

剣に手を翳し、力と魔力を溜める。その隙を狙って怪物が身体から触手を数本出し振り翳す、が。

「べギラゴンッ!!」

後方から飛ぶ鋭い詠唱の声。何もない空間に眩いまでの巨大な炎の大波が生まれ、大きくうねりながら触手を焼き払った。

身体の一部を灰にされたことに怒りを覚えてか、怪物の中心部から甲高くくぐもった絶叫が響き渡る。

同時にそれまでの3倍以上の太さと長さを、加えて凹凸を持ちさらに醜く波打つ触手が這い出てきた。そしてそれが大きく振り上げられたその時。

「バイキルト!アレル、もうチャージできたか!?」

「ああ!」

電撃に似た光エネルギーを纏う剣を一度振り払うと、改めて重心を落とし攻撃態勢に入る。
そして化け物の触手が振り下ろされ始めた瞬間を見計らい、助走をつけ床を蹴って跳躍し――

「・・・・・はああああッ!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・・真っ二つに切り裂かれた怪物の身体は左右に分かれ、青白い電撃エネルギーによって燻り崩壊しながら、ゆっくりと傾く。
・・・そのままぼろぼろと崩れつつ、暗い闇の底へと落ちていった。

「・・・よし、っと・・・戦闘終了」

「あんまり手強くなくてよかったですよ。あの白い服の人達も無事みたいですし、ってそう言えば僕らも今は白い服の人達ですね」

「それな」

「・・あのモンスター、なんで俺達には目もくれずに真っ先にあの人達を狙ったんだろうな。何か理由があるんだろうか」

「んー、この世界の人達に恨みがある・・とか・・・?単にたまたま目に入ったのが俺らより先だったってだけかも知れないけど、でもなんか何かしらの因果関係はありそうな気もするよなー」

「そこ行くと、そもそもなんでこの世界に本来いないはずの化け物達が現れるようになったのかって話ですよ。しかしそれを聞こうにも言葉が通じない・・・やっぱりソロさんがいないと埒が明かない感じですね」

――――――――――――――――――
――――――――――――



「・・・・・・・・・・言葉が出ねえ・・・・・・」

「・・本当だ。何かの映画かゲームのワンシーンだぜ、今のは。驚かないって決めててもダメだった」

わずか数十秒で、“彼ら”は襲い来る異形の怪物を倒して見せた。
それに様子を見ていた限り、特に驚く様子も慌てる様子もなくあっさりと簡単に。

「・・こういうことだったのだね。もし彼らが早々とここを去ってたら、我々は今頃どうなってたことか・・・」

「全くです。私達はさっそく命を救われたということですね。これでは仕方ない・・・彼らに協力しないわけにはいきませんね」

微笑みながら冗談っぽく言うカズモト博士の横で、スワードソン博士も小さく笑った。

「はは・・・ひょっとしたら案外的外れでもないかも知れんよ。貴方には伝えるまでもないと思うが、彼は・・彼自身の中に我々では到底追いつかないような、とてつもなく複雑で深い闇を持っている。
まあそれがわかったところで、今のところ打つ手はなく世は全てこともなし、だ」

「貴方が仰ると皮肉に聞こえないから困りますよ・・・」

とその時、生体認識システムの認証音と同時に背後のドアが開く気配がした。
そして最初から訝しげな表情をして、彼女は足早に歩み寄ってきた。

「・・・・・・一体何があったの?とりあえず詳しく訊きたい部分が2,3カ所あるのだけれど」

「アリ・・アレッサンドラ。いつ戻ったんだ?と言うかてっきり分解して空気に溶けちまったんだとばかり」

「あんまり面白くないわ。で、どうして柵が派手に壊れているの?なぜ・・“彼ら”がここに?」

「あーそれはだな、ちょっとした有事があったんだ。まああいつらが速攻で片付てけくれたんだけど」

「ところでソロはどこに?さっき一緒に軍部の方に行ったんじゃないのか?」

「ここにいるぞ。何か用か?」

「うわっ!!」

突然すぐ後ろから声が聞こえ、素っ頓狂な悲鳴を上げて振り返り後ずさるベクスター博士を見て、彼は可笑しそうに小さく笑った。

「・・・このヤロ・・・」