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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録005

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「・・・あー、つまりあれだ、君らんとことウチじゃあちょっとばかり宇宙そのものに対する認識というかだな、人々が持ってる世界観と常識がもう全くの別物なんだ。信じられないかも知れないが、ここじゃ“神様”っていうのは人々が個人的に胸の中に住まわせてる存在で――何て言うのかな・・・君らにしたようにはあっちから干渉してくることもなし、またこの宇宙の技術をもってしてもその存在を確固たる証拠をもって主張することはできないんだ。あくまでも心の支えとして、その存在を信じることはできるがな・・・」

ベクスター博士は話している間、珍しくガムを噛んではいなかった。クロウ博士の口元には、ほとんどいつも銜えられている電子煙草がない。

淡々と言葉を翻訳しつつソロはその様子を見てどこか満足そうに微笑んでいた。
話が一旦落ち着いたところで、それが気になっていたクロウ博士が憎らしげな視線を送る。

「・・・・なーにニヤニヤしてやがんだ。変にいじくらないでちゃんと訳してんだろうな?」

「もちろん。いや、お前ら二人のビビりっぷりがあんまり露骨なもんだからおかしくてな。可愛いもんだぜ、はは」

「む・・ムカつく・・・」

「えーっと。それで・・・この世界に魔法が存在していなくて、一般に神や精霊の存在が広く信じられていないということはわかってもらえたかな。この世界の人間には、君達のように怪物と戦う能力も魔法の力もない。その代わり、こうやって数字や科学の力を使って自分達自身を守りながら生活している。
今まではそれで十分すぎるほどだったのだがね・・・あの異形のモンスター達がやってくるようになってからは、それこそ君達のいた宇宙のかつての姿のように、人々はみな怯えながら毎日を過ごすことを余儀なくされている。被害も甚大で膨大な数の人が犠牲になった・・・。確かに今のこの状況は、“世界の破滅の危機”と言われても致し方ない」

一度言葉を切ったあと、苦々しげにため息をつき・・・スワードソン博士は再度口を開く。

「そして・・・奴らがこの宇宙に来る経緯や要因、目的、方法・・・その全てが未だ明らかになっていないのが現状だ。現在我々はその解明をこの世界の実質的統治者から命じられている。
一刻も早く原因を突き止め、この異常現象を食い止めなくてはならない。圧倒的な戦力を持つ君達が来てくれたことは、それだけで我々にとって大きな助けとなったよ」
――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――


「・・なるほどわかってきたぞ。要するに俺らがこれらの物質の複製を作るってのはそういうことなんだな?」

「そ。俺達の武器と防具の強化に使うってわけだ。いかにもゲームって感じだろ?」

温かい紅茶の入ったティーカップをソーサーに置き、ソロは背もたれに身を預けた。

「・・・ゲーム、か。・・さっきの話じゃお前らは以前に別の世界で別のゲームをさせられたってことだったが。それは?」

「あー、聞きゃあ話してくれるだろうがあまり触れないでやってくれ。全くふざけたゲームだった。彼が言った通り、それで仲間を失ったからな・・・それもその二人は、あいつの遠い子孫だったから・・・」

ソロが視線で示した人物―最初にバルコニーに降りてきて、先ほどまでスワードソン博士と話していた―は、部屋奥にある強化ガラスの壁の前に立ち、延々と続く星一つない夜空とビル群をじっと見つめている。

「子孫?・・ああそうか、別々の時代や世界から集められたって話だったな。・・お前みたいな奴がいても救えない命があるのか・・・」

ベクスター博士が呟く。その時彼はふと、心なしかソロの表情が曇ったように感じた。

「・・あ・・すまん。今のは失言だった」

「いや、気にするな。あんたらが思ってるより俺が全能じゃないってだけの話だ。ところで話は変わるが、この宇宙そのものや仕組みが全て作られた物かも知れないと感じたことは?」

「・・・何だそれ、ジョークか?もうその質問は再三受けたぜ。答えはノーだ」

「ははは、大丈夫ですよ。彼はきちんと自分の力で病気を治しましたから」

新しいティーポットを持って戻ってきたカズモト博士が笑った。

「そうだそうだ、いきなり人の黒歴史を蒸し返すんじゃねえよ。何の話だ?」

「そのまんまの話だ。あんたらがここで毎日やってる実験やシミュレーションと同じことがもっと高次元の領域で行われていて、自分達やこの宇宙そのものがそれによって生み出された物だ、と」

「・・・お前さんはそう思ってるってか?」

紅茶の残りを呷り、話を聞いていたクロウ博士が尋ねる。

「さあな。今となっちゃ自分が何を考えて何をしようとしてるのか、もうよくわからん。
それはそうと一ついいこと教えてやるよ。人間ってのは無意識のうちにな、正しさよりも不正確さや曖昧さを追い求めるようにできてるんだ。努力さえすれば唯一絶対の真実なんてものが手に入ると信じて疑わない奴らもいるが、そんなことは絶対に不可能だ。理屈上はな」

「またなぞなぞか?・・お前が言うその高次元の存在が、お前らをそのふざけたゲームとやらに巻き込んで弄んでると――」

「そんで、今度はこの世界で俺達が巻き添えを食らおうとしてる、そう言いたいんだろ?」

言葉を途中で遮られたベクスター博士が目を細めて隣に座る同僚を見る。

「まあ―そういうことだ。まずこれは紛れもない事実で、その連中をあんたらが“神”と定義するかどうかはひとまず捨て置き、とにかく人間の力じゃどうすることもできない絶対的な存在が確かにいるってことを認識してほしい」

「珍しいな、あからさまに洗脳しにかかってきたぞおい。隠す気ねえのかよ」

「茶化すな。いいか?俺の言葉をまっすぐそのまま鵜呑みにしなくてもいい―しかしだな、ハナっから聞く気がないのと流し聞きするのとじゃ似てるようで全く違うんだぜ」

「・・・懐かしいね、そのフレーズ。僕も耳にタコができるほど聞かされたよ」

スワードソン博士が苦笑いしながら呟き、紅茶を啜った。

「・・意図的なものだよな?」

「今更それを聞くか、この俺に」

ベクスター博士がため息をつくと、ソファに腰を下ろしたカズモト博士が何やら興味ありげに身を乗り出した。

「彼らの中にまだ何か心配な部分がありますか?それとも別の意味が?」

「もちろん別の意味だ、知っての通り。そっちから切り出して来るまで待とうかとも思ったくらいだぜ」

「・・何の話?」

「ああいえ、まだ話として成立してはいないのですがね。今からしようと思っていたんです」

「なるほど。じゃあ今成立したということで」

「そうですか・・・わかりました」

「???」

一切内容が出てこないまま勝手に何かが成立したようだが、カズモト博士は特に説明する気もないようだった。

「・・まいいか。なあそう言えばさあ、あいつらに名前ってあんの?なんかお前の“ソロ”ってのも本名じゃなさげっつうか、とりあえずの呼称って感じだろ。そもそも正式なのあるのか?」

「当たり前だろ、人間だからな。俺はまあ人間じゃないけど、一応これは本名のはずだぜ」

「・・はずって何だよ」