ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録005
・ Suiwe cuatt sve loonesr(非常に強い怒りと破壊衝動を引き起こします)
・ Quiegcht reelladoneh zoish(非常に強い性的欲求を引き起こします)
・ **** *** ****(現在、視聴が禁止されています)
・ Rwevi hyathes(非常に強い安心感、幸福感、充実感などによる一種の覚醒状態を引き起こします)
注意 以下の音声ファイル“アンニュイ・ヒーリング”へのアクセスが認められた場合、自動でミーム修正プログラムが投与されます。
・ Giah gueid hupallye tondou vy agueit←※“暗闇の歌”
非常に強い疲労感・倦怠感を引き起こし、視聴者の一切の気力を奪います。回復には医師の治療が必要です。
・ Falcuar ia feillyue nenackeiy acya steivyu←※“機械人形の歌”
視聴した時間に比例し、一部の脳機能が一時的に停止しますが、意識は覚醒状態になります。この時、脳の神経細胞は****に******されており強制的に働くため、視聴者自身の意思で活動することは不可能です。
・ Conti vaiezo ou yushah←※“病の歌”
非常に強く苦痛を伴う精神的疲労、妄想や幻視・幻覚などの症状を引き起こします。5分間以上続けて視聴すると自律神経に多大な悪影響を及ぼします。12分間以上続けて視聴すると上記の症状が消えずに継続するようになります。注意してください。
・ Uar singnnia sve enderr ←※“最後の歌”
必要時以外の視聴を控えてください。2分間以上続けて視聴すると最悪の場合、脳死する可能性があります。
―ミーメティックハザード―
“アンニュイ・ヒーリング”へのアクセス確認。自動修正プログラムを投与します。パネルの中央の赤い点を見続けてください。
━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
――投与が完了しました。速やかにレベル4以上の医師に面談を申し出てください。12時間経過しても異常が残る場合は、必ずいずれかのレベル5職員に申し出て適切な措置を受けてください。
No.“番号付けるとか、おかしいんじゃねェーの?”「お友達記録表ふざけんな!」
「2■28 ■/■ この宇宙に訪れた人間に近しい者たち」
以下、一般ファイル形式データです。あと以前散々注意したつもりですが、Quiegcht reelladoneh zoishとかRwevi hyathesを安全な媚薬や覚醒剤代わりに気軽に視聴するのはよしたほうがいいぞ。全て自己責任で、ね!
※個別ファイル閲覧にはその都度専用のパスコードが必要です。
―パスコード確認、承認しました。
オブジェクトナンバー:030 “アレル”
彼は薄いコーヒー色の頭髪とアイスグリーンの瞳を持っている。十代の若者のような背格好で、ソロ曰く年齢の詳細は彼本人にもわからないがおそらく16歳か17歳であるとのこと。
片手剣の扱いに非常に秀でており、剣技の実力は仲間達の中でも一・二を争うという。
また“ゲーム”においての銃器・火器などを用いた戦闘でも、神に与えられた戦いの才能を遺憾なく発揮することができる技量を合わせ持つ。
炎や電撃の攻撃魔法(ここでは敢えて魔法と表記する)を得意とする他、細胞の修復を行う魔法、重力操作(※注釈1を参照)飛行などが可能。
性格はどちらかと言えば落ち着いており冷静だが決して暗くはなく、はっきりとした若者らしい口調で話す。同時間軸上の子孫に当たるアレフ(No.031)とサマル(No.032)を特に気に掛け庇護意識を持っている(他に二名の子孫が存在したが先のゲームで命を落としたためか)。
時々、誰も予想だにしていなかったような突飛な冗談を言うことがあり、その部分については問題視されている(本人はあくまで場を和ませるための茶目っ気だと主張している)。ソロ曰く“俺でさえどう反応したらいいのかわからなかった”。
“ゲーム”以前の記憶が本人の与り知らぬうちに破壊神によって改変され、自身の名前までもがその記憶から抹消されていた。が、自身の肉体と魂が既に存在しておらず“概念化”(※注釈2を参照)していたという事実を知り、最終的にはソロの力で再び人間の体を得た。
※注釈1 重力操作:Molecule Changer Runnerの分子間力及びベクトル操作能力の一種。術者本人とそのごく近くの重力(ここではこれを引力と完全に区別するものとする)の大きさや向きを操作する。攻撃力や防御力を上昇させる魔法の基盤となる力。
※注釈2 概念化:この文章を閲覧するにはレベル5特殊パスワードが必要です。
―パスワード確認。アクセス許可。 ここでの概念とは、“その宇宙で自我を与えられた全ての生命体または非生命体の意識上に、最初から例外なく共通して存在するミーム依存的情報”を指す。
概念の主な特徴は、
・その概念が生まれた宇宙のあらゆる場所、あらゆる時間に例外なく存在する
・現存する宇宙において、概念はどのような形態をとったとしても存在し続けることができる
・一定の基準を満たす文明崩壊が起こり、知的生命体に関わる全てが原初の状態までリセットされた場合に限り消滅し、影響が抹消される
概念とは宇宙や知的生命体の支配する文明世界とその因果律、逆因果律の全てをそれらたらしめるものである。
概念とは無限に生まれ続け、無限に滅び続けるものである。
新しい概念が生まれるたび、我々の―または彼らの―または誰かの宇宙は、辻褄合わせと宇宙の正確性のために過去と未来そして現在の何もかもが改変されるのだ。
高次元の存在達が何かを思いつくたび、何かを発見するたび、何かを都合が悪いと考えるたびに、我々の存在と意味と歴史は無へと還る。それに決して気付くことはできずに。
それはちょうど、一口飲んだブラックコーヒーの苦さに嫌悪感を覚えたがために角砂糖を放り込む行為とよく似ている。そこにはもうブラックコーヒーは存在せず、砂糖の入ったコーヒーがただ存在する。それでも味気なければミルクを加えれば良い。
そこにはもう砂糖だけが入ったコーヒーは存在しない。そういうことだ。
「はああ。じゃあつまり・・その、なんだ。お前らは理屈とコツさえ掴めば新しい種類の生き物を作り出したりとかもできちまうってわけか」
「そうだな、おそらくは少し説得が必要だが。まあこんな調子でこの力を応用していくには、まず彼らの魔法に対する認識と固定観念をどうにかしなくちゃならない」
「わっけわかんねえなもう・・・。お前らホントにもとの宇宙では普通の人間なのか?」
「いや、普通じゃない。言っただろ、世界を救うために神に選ばれた特別な存在だって。これほど高い戦闘力と強い魔力を兼ね備えた者はほとんどいない。特に・・・そうだ、いいこと思い付いた」
そう言うとソロは席を立ち、そのまますたすたと部屋の奥へ歩いて行く。