のび太のBIOHAZARD カテゴリーFの改造版
「よし、次はあの寿司屋を調べてみよう!」
「は、はい」
切った通信機を太刀川に返し、ジャイアンは金属バットを構えつつ近くにあったいかにも高そうな寿司屋に入った。通信機を受け取った太刀川も、その後に続く。
「ゾンビは……いないみたいだな」
店内を見渡し、安全と判断したジャイアンは金属バットを収めるとカウンターの中へ入り、そこにあった冷蔵庫の中をあらためた。
「おっ、食料発見。しかも特上だ! これはのび太たちも喜ぶぞ」
ジャイアンは中に入っていたラップで包装された寿司桶を、順番に近くにあったクーラーボックスに氷や保冷剤とともに移していく。
その横で、太刀川は自分の持っている木刀と同じくらいの長さの棒のようなものを二本見つけた。
「マグロ包丁ってやつだな。こいつはなかなか使えそうだ」
そこにあったのは棒ではなく、鞘に収められた、マグロなどの大型の魚類を解体するための包丁であった。
太刀川がマグロ包丁を手にとって鞘から抜いてみると、錆どころか汚れ一つ無い、手入れの行き届いた刃が光沢を放った。寿司屋の大将がこの包丁をいかに大切に扱ってきたかが窺える。
マグロ包丁を気に入った太刀川は、ロングコートのベルトを利用して左右の腰に差していた木刀を外して四次元カバンにしまい、代わりに二本のマグロ包丁を装備した。
「よし! 寿司はこれで全部だな。他にも何か食料は……」
「待て剛田、無理はするな。探索は俺に任せて休んでろ」
さらなる食料を求めて店の奥へ向かおうとするジャイアンだったが、ふいに太刀川に肩を掴まれた。
「あんなことがあったんだ。休んで気持ちの整理をつけたほうがいい」
「……いや、大丈夫です」
休息を勧められるが、ジャイアンはそれを辞退した。
「気持ちの整理ならとっくについます。悲しんでたってとーちゃんやかーちゃんやジャイ子は戻ってこない。だから今は自分にできることを精一杯やるんです」
決意のこもった目で太刀川を見据え、ジャイアンは答えた。そしてこう続ける。
「それに、のび太だって今日家族を失って、それでも必死に戦ってるんだ。ここで俺が立ち止まってたらガキ大将としての面目が丸潰れです。だから俺も戦います」
「……そうか。強いな、お前は」
ジャイアンの言葉を聞いた太刀川は、彼の心の強さに感服した。普通、かけがえのない人を目の前で失ったら大人でさえも発狂しそうなものだ。ジャイアンとて本当は泣き叫びたいだろう。しかし、彼は悲しみを抑え込み、今いる仲間たちのために最善を尽くしている。並の小学生には到底真似できないだろう。
それとともに疑問も感じていた。一体どんな経験を積んだらここまで強くなれるのか、と。
「(……それについてはこの地獄から脱出した後でゆっくり聞かせてもらうか)……じゃあ、ここは任せたぞ。うまそうな酒があったらそれも確保しといてくれ」
「はい!」
太刀川は掴んだ手を離すと、ポン、とジャイアンの肩を軽く叩いて仕事を命じた。ジャイアンも元気よく返事をし、店の奥へと入っていった。
作品名:のび太のBIOHAZARD カテゴリーFの改造版 作家名:カテゴリーF