のび太のBIOHAZARD カテゴリーFの改造版
「本っ当に、すいませんでしたっ!」
床に手と膝をついたのび太が、額を床にすりつけて土下座する。彼の左右の頬には、赤い手形が痛々しく残っている。
「わ、私のほうこそごめんなさい。いきなりひっぱたいたりして。のび太君があの動画を撮ったわけじゃないのに……」
「私もすみませんでした。本当に糾弾すべきなのはのび太君ではなく、盗撮なんて卑劣な行為をした校長先生ですよね……」
咲夜と聖奈も自分たちの行動を反省し、のび太に謝った。とはいえ、男子に下着姿を見られたことは恥ずかしかったようで、その顔は少し赤い。
「……さぁ、このことはお互い水に流して探索を再開しましょ?」
「は、はい!」
咲夜に促され、のび太は顔を上げて立ち上がった。許してもらえてよかったぁ~、とのび太は心の中で安堵する。もし相手が静香だったら、「のび太さんなんて大っ嫌い!」と言われ数日は口を聞いてもらえなくなるだろう。
のび太がその場に立つと、彼の足元でカチッ、という音がし、聖奈が調べていた棚が横に動き、そこから一枚のドアが姿を現した。
「これって、映画とかでよくある隠し扉ってやつかしら」
「そうだと思います。僕が立ったときに足元で音がしたから、たぶん僕が踏んだ床にスイッチがあるんです。だから僕がどくと……」
咲夜にそう答えてから、のび太が半歩ほど後ろに下がってみると、棚が動いて元の位置に戻った。どうやら、常に重量をかけていなければならないようだ。
「でしたら、これで押さえておきましょう」
聖奈が校長室の出入口付近にあった観葉植物の植木鉢をもってきて、のび太が立っていた床の上に置いた。再び重さがかかったことでスイッチが押されて棚が動いた。
「開かないな。鍵穴も無いし、どうやって開けるんだろう……?」
早速のび太がドアを開けようとするが、施錠されていてビクともしなかった。しかも鍵穴も無いため、校長室に入ったときのようにハンドガンで鍵を破壊することもできなかった。
「たぶんこの装置で網膜認証をするんじゃないかしら?」
ドアの横の網膜認証装置に気づいた咲夜が、試しに自分の目を装置のモニターの前に合わせてみた。が、結果は認証エラー。生徒の目では開けられないようだ。
「開かないわね。となると、やっぱり校長先生の目が必要になるんだろうけど……」
「その校長先生はさっきの化け物に目を潰されてしまっていますね……」
そう言って、咲夜と聖奈は床に横たわる校長の死体に目を向けた。ロックを解除できるであろう校長の両目は既に失われている。現状ではこの隠し扉を開けることは不可能であった。
「開かないものは仕方ないです。とりあえず探索を進めましょう」
「ええ」
「そうですね」
のび太の言葉に二人が同意した。開かない扉にいつまでもこだわっていても、時間の無駄になるだけだ。
そして三人は校長室から職員室へ移動する。
「それで、次はどこに行くの?」
「一旦保健室に寄ってから、会議室に行こうと思います。鍵もあることですし」
咲夜の問いにのび太が答える。次の目的地は、保健室の向かいに位置する会議室だ。保健室に寄るのは、余っているハンドガンとマガジンを静香とスネ夫に渡すためだ。
三人は入ってきたほうとは反対側の出入口から廊下に出た。
「きゃあああああああああ!」
「ママァァァァァァァァァ!」
「「「ッ!?」」」
保健室のほうからガタン、という物音と静香とスネ夫の悲鳴、そして銃声が聞こえてきたのは、それとほぼ同時であった。
「まさかあの化け物か!? くっ!」
それらの音を聞くや否や、弾かれたようにのび太は駆けだした。聖奈と咲夜もすぐにその後を追う。
(さっきみたいなことは……もうごめんだ!)
ハンドガンを構え、のび太は保健室に急行する。友人の秀才とお坊ちゃん、そして、最愛の人を救うために……。
作品名:のび太のBIOHAZARD カテゴリーFの改造版 作家名:カテゴリーF