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のび太のBIOHAZARD カテゴリーFの改造版

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第四話 巨大ノミと赤いゾンビ


「静香ちゃん! スネ夫! 出木杉! 今助けるぞ!」

 保健室の扉を開け放ち、ハンドガンを構えながら室内に突入するのび太、聖奈、咲夜。
 室内にはのび太の予測通り校長室にいた巨大ノミがおり、出木杉がハンドガンでそれと戦っていた。静香とスネ夫は腰が抜けてしまって動けなくなったようで、部屋の隅のほうでへたり込んでいる。

「……くっ、弾を使いすぎたか!」

 のび太らの到着とほぼ同時に、出木杉のハンドガンの弾が尽きた。

「こっちだ、化け物!」

 それを見たのび太が声を上げながら巨大ノミに向け一発発砲。わき腹への直撃を受けた巨大ノミが、おもむろに出木杉からのび太たちのほうに向き直った。

「気をつけるんだ野比君! こいつは……」

 出木杉がのび太に注意を呼びかけるが、最後まで言い終える前に巨大ノミが動いた。巨大ノミはそのアイスピック状の嘴から、のび太らにめがけて黄緑色の液体を噴射してきた。

「ッ!? 危ない!」

 咲夜がいち早くそれに反応し、自分の右側にいたのび太と聖奈を押し倒すようにしてその場からどかした。直後、液体が三人のいた地点に降り注いだ。液体はジュウ、と音をたてながら触れた床を数センチほど溶かしていった。これは強酸性の溶解液で、出木杉はこれのことを言いたかったのだ。

「二人とも大丈夫?」
「はい。助かりました」
「私も平気です。咲夜は?」
「大丈夫よ……ちょっと服に穴が開いちゃったけどね」

 身体を起こしながら、互いの無事を確認する三人。咲夜は少し飛沫を浴びてしまったようだが、それもほんの僅かで、ジャケットの袖にいくつか小さな穴が開いた程度で済んだ。

「キシャァァァァァァ!」

 だが、まだ危機は去っていない。鳴き声のようなものを上げながら、巨大ノミは三人に突進してきた。

「おっと危ない!」

 のび太たちは左右に分かれ、巨大ノミの突進を紙一重のところでかわす。

「よし! 背中がガラ空きだ!」

 すかさずのび太はハンドガンを構え、巨大ノミを背後から攻撃した。
 巨大ノミは出木杉との戦いでかなりのダメージを受けていたらしく、三発ほど銃弾を受けると被弾箇所から緑色の血を流して床に倒れ込み、そのまま動かなくなった。

「……ふぅ、倒せたみたいだね」

 一息ついてからのび太は銃を下ろした。聖奈、咲夜、出木杉も巨大ノミが沈黙したことを確認し、臨戦体勢を解いた。

「ありがとう野比君。やっぱり君の射撃は凄いね」
「出木杉が化け物にダメージを与えてくれていたおかげだよ。こっちこそ助かったよ」

 互いに礼を言い合うのび太と出木杉。自身とは対称的な文武両道の秀才から感謝され、射撃の腕前を褒められたためか、のび太は謙遜しつつもその顔は誇らしげであった。

「大丈夫? 静香ちゃん、スネ夫」
「ええ。ありがとうのび太さん」
「スネ夫君も怪我はない?」
「はい、僕ちゃんも平気です」

 そしてのび太は静香に駆け寄り、彼女を立たせた。スネ夫のほうは咲夜が助け起こす。のび太と出木杉の奮闘により、二人はともに無傷だ。

「いやぁ礼には及ばないよぉ~」

 好意を抱く女子から礼を言われ、のび太の顔がだらしなく緩む。その口からは、むふふ、と下品な笑い声が小さく漏れている。

「…………」

 そんなのび太の様子を複雑そうな顔で見ているのは聖奈だ。ただ、彼女は自分がのび太に抱き始めた感情についての自覚はまだ無いようで、何故この二人のやり取りを見ているとこんなに胸の中がモヤモヤするのか、彼女自身にもわからなかった。

(聖奈、静香ちゃんに嫉妬してるわね。本人は無自覚みたいだけど)

 そんな聖奈の心境を、親友の咲夜だけが感じ取っていた。

「しかし、ゾンビや狂犬の他にこんな化け物までいるなんて……外を探索している太刀川さんと剛田君にも、このことを知らせておくべきだね」

 通信機を取り出し、外回りチームに連絡を試みる出木杉。巨大ノミの溶解液は、車のタイヤや装甲さえも容易に溶かしてしまうだろう。車が使えなくなれば、二人はゾンビが闊歩する街中で孤立することになる。それは何としても避けなければならない。

「……出ないな。まさか、もう既に……」
「そんな……!」

 だが、何回コールしても通信回線はつながらなかった。のび太たちの脳裏に、最悪のビジョンが映る……。