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伝説の超ニート トロもず
伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録011

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ソロ: まあ待て、それのヒントをやるから。俺が真面目に取り合ってくれないとわかると、今度はそいつはとにかく俺の邪魔をするようになった。寝てる時も食ってる時も戦ってる時も、一緒に旅をしていた仲間と話している時もずうーっと話しかけてくる。ちらちら視界に入ってきては脅迫まがいのことを言ってきたり、そうでないときはほとんど俺の後ろに立ってぴったりくっ付いてくるようになった。ぶつぶつぶつぶつ、俺への文句を垂れ流しながら、だ

博士: ・・なるほど。それで?

ソロ: やがて一秒たりとも俺のそばから離れなくなった。俺は眠れなくなりいい加減にしろとそいつに怒鳴った。するとどうなったと思う?あいつ、増えやがったんだ。そして意趣返しに、俺が最も見たくないものを見せ続けるようになった―これについてはまた今度話すがな。
だが本当に大変なのはそれからだ。
それまでは説教だったり俺への不満だったりを際限なく述べ立ててたんだが、増殖してからは明らかに悪意のある言動ばかりをするようになった。他の人と話している時に、“こいつは本心ではお前を見下して笑っている”とか、“お前を知ったら誰もが失望する”とか。・・いや、ここまではまだよかったのかも知れない

博士: ひょっとして、貴方に対して敵意のある発言をやめたのではありませんか?

ソロ: 当たりだ。俺に何か言うのをやめて、そいつら同士で話すようになったんだよ。しかもおかしいことにな、今まで散々けなし続けてきた俺をやたらに褒めまくるんだ。しまいにゃ日々の出来事だとか天気の話だとか、俺に関係のない話までするようになった。そんな会話を24時間、俺に付き纏いながらとりとめなく続けやがるんで、無視し続けるにも大変な努力がいるようになった。そいつらの会話が耳に入るとイライラして何も手につかなくなるから、一人でいる時はとりあえず手を組んで祈るときの祈祷文をひたすら繰り返し呟いてた

博士: ・・貴方の口ぶりから察するに、その状態でもまだ適切な措置をとらなかったのですね。その後はどうでしたか?

ソロ: 無視を続けるのが我慢ならなくなって、周りに誰もいなければもうひたすらにそいつら・・いや、その時はもう複数人じゃなくなってたんだった。そして違う奴になってた。そいつに向かってこれでもかと言うほど罵詈雑言を浴びせてやった。それまでの鬱憤が溜まってたからな。事あるごとにそいつをぶん殴ったり蹴ったり、剣で斬りつけてやったりなんてのは日常茶飯事で、それでも仲間の前では意地で無視を続けてた。
やがてそいつはな・・・ぶち切れた俺に対して酷く怯えて怖がるようになっていった、だったら付き纏うのをやめろって話なんだけどな。けど俺はもう心底怒り心頭だったわけで・・・抵抗しないのをいいことに傷付けまくった。死なない程度に

博士: ・・・やはりそうでしたか。それが・・・最も最近の貴方の様子ですか?

ソロ: そうだな。酷く暴力的だった―そいつに対してだけな。だって仕方ないだろう、こちとら数百年間ストーキングされ続けてるんだから。ただ、最も最近と言うとちょっと語弊がある。実は・・・もう何百年も昔にな、俺のところにそいつをけしかけた犯人をこの手で殺してあるんだ。事実としてな。例えじゃなくてだ。じゃないと俺が死ぬ、そこまで追いつめられていた

博士: ・・そうですか。だから自分は人殺しだと再三仰ってるわけですね

ソロ: それについてもまた今度話す。博士、俺はな。自分の身を守るために人を殺したんだ。剣で何度も何度も首と胸を刺して、ざまあみろと叫びながらだ。
今までの話は俺の脳内で起きてたことを現実に置き換えて脚色してた。だがこれは違う

博士: ええ、わかっていますとも。貴方にとっての現実ではなく、世界にとっての現実なのでしょう?・・貴方は決して嘘は言わない。第一、失礼を承知で言いますが、私には貴方が人の命を奪ったことのない人間だとは思えませんでしたから

ソロ: そうだろ?・・600年経った今でも感触が手に残ってる。最初の人殺しだ。
彼を組み敷いて夢中になって滅多刺しにしていたら、視界の隅に奴が映ったんだ。・・俺に散々痛めつけられてズタボロになった奴の姿がな。そいつは感情のない顔で俺を見ながら突っ立っていた。そしてこんなことを言いやがったんだ。“こういうことになるのを避けるために、お前は俺を見続けていたんじゃないのか”と。
そして、そいつは消えた。・・・その後嫌な予感がして鏡を見たんだがな。
そしてようやく気付いた、そいつこそが俺だったんだ。顔も腕もどこもかしこも傷だらけ、醜いこと極まりなかった。俺はとある理由で鏡が見れなかったんだが、そのせいで自分の顔を忘れてたってわけだ。(笑い声)・・お笑いだろ?

博士: ・・そうですね。貴方は見えるものが自分に変わった瞬間、暴力的になり自分を攻撃し続けた。それも無意識に。・・・それほどまでに激しく致命的な周囲への罪悪感と自分への嫌悪感が生じたのは、一体何故です?

ソロ: そのメモリチップが全部教えてくれる。俺の頭がおかしくなった全ての発端だ。あと覚えておいてもらいたいのが、俺の頭は引き続きイカれてるってことだ。もう十分実感してるとは思うがな。
そいつの中身を全部見終えて、あんたが一度胃の中身を便器にぶちまけてからが本題さ。ついでに***********できたら、より深い話になるかもだ

博士: ・・・今の発言には規制音をかける必要がありますね・・・。・・・(約13秒沈黙)・・・ところで・・・お尋ねしたいことがあります。適切な質問でないことは承知の上で。
貴方は・・・・・先程まで私がここでお話していた方とは別の方ですよね?

ソロ: ・・・ん?

博士: 私にこのメモリチップを渡した方は、今どこにいらっしゃるんです?

ソロ: ああ・・・どこだろうな。わからん。とてもじゃないが今からそいつを引っ張り出して来るのは無理だ。とっくに仮意識の海の中だな。もうあんたの前に現れることもないだろうよ、確率論的に

博士: ・・仮意識とは・・何のことですか?海?・・・説明してくれますか?

ソロ: いっぺんに言ってあんたの頭が混乱しないなら。・・俺は深刻な多重人格で主人格は誰なのか、そう聞きたいんだろ?だが俺の場合は多重人格とは言わない。何千何万何億どころかもっと途方もない数の人格、それぞれ全てが主人格だ。少なくともそれを名乗ってる、俺もだ。
そして誰もが同じ記憶と性質を共有しているから、全員同一人物だと見てくれて構わない。けど・・あんたほどの腕を持ってるとやっぱり気付いちまうんだな、俺が生き物じゃないってことに

博士: ・・・つまりはこういうことですか?貴方には特定の自我は存在せず、人間の意識に似せた法則を持つ命令によって一瞬だけ生まれる自我に近いものをかき集め、消耗品として連続的につなぎ合わせることによって人格に類似した何かを生み出していると・・・