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伝説の超ニート トロもず
伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録011

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タイミングを見計らい口を開いたベルティーニ博士に、ソロは微笑みかけて応えた。

「そう受け取ってもらって構わない。事実それに近い。君の意向としては、大事なワンを危険な戦いに放り込むなんてことはしたくないだろう。だがあいつは俺達のことを知れば必ず、自分も戦いたいと言い出すだろうよ。今までの根暗陰気モードだったら違っただろうけどな」

「・・・そうね・・・私達のためにできることがあるなら、あの子はきっとどんなことでもやりたがるでしょうね。・・ひとつだけ教えてもらってもいいかしら?」

「ああ、その点については心配ない。俺がきちんと制御法を教えるさ。あとはまあ・・・戦闘技術の体得については、あいつの気合次第だな」

その時、ソファに座っているソロの肩を背後から誰かが叩いた。アルスだ。両肩にテネブレとフォエッティを、頭にはメルマを乗っけている。
どうやらまた何か面白いことを思いついたようで、何やら楽しそうにソロに話しかけ始めた。

「ああ、うん。・・・話してるとこ悪いけど今思い付いたから今言っちゃいたい。
この建物に来るまでにいくつか人のいる街を見かけた、休憩時間を利用して出掛けてもいいだろうか・・と彼は聞いてるが」

翻訳したソロの言葉を聞いて、視線を向けられたスワードソン博士は顎に手を当てて唸った。

「んー・・・行かせてあげたいのは山々なんだが・・・いかんせん、君達のその姿では目立ちすぎる。使う言語もあまりにも違うだろう?君達の存在自体が重要機密指定なわけだから、申し訳ないがすぐに許可を出すの厳しい」

するとソロはそれを訳そうとはせず、何かを閃いたように息を呑んだ。

「いやいや、これこそグッドタイミングってやつだぜ博士。ワンはもうすぐここに来るんだろ?」

突然視線を向けられたベルティーニ博士は少し驚いたのか目をしばたかせた。

「え・・ええ。もう少ししたら意識が戻る頃だから、私が連れてくるわ」

「それだ。あいつがここに来たら早速俺達の言葉を覚えさせよう。通訳にできる、やった!
んで、交流を兼ねたレクだ。近くの街を軽く見て回ってくればいい。見た目に関してはどうとでもできる!喋れない問題は解決!」

「ガッツポーズしてるとこに水差すようなんだが、見た目をどうとでもって一体どういうわけだ?まさか細胞の作りを変えちまおうって魂胆じゃないよな?いくらなんでも・・・」

ベクスター博士が目を細めて批判を始めようとしたが、ソロはそれを満面の笑みで制した。

「んなこたしねえ。するまでもない。ようは街に溶けこめりゃいいんだろ?それくらい朝飯前だ・・・やったね、これで俺もしばらくグダグダできる・・・」

そう言うと、後ろにいるアルスに短く何かを伝えた。アルスがぱっと笑顔になる。

「おいおい・・勝手に・・・・はあ、まあいいか。大丈夫なんだろうな?くれぐれも、くれぐれも目立つんじゃないぞ?」

「もち。心配ご無用」

「・・で、その間お前は何してるんだって?」

「何もしないっていう大仕事をするつもりだ。はー、つっても数十分だけどな・・・」

「やっぱり身体を維持するだけでも結構な力を使うもんなのか?」

「そうだな。まあ新しいの作り直したばっかりでちょっと勿体ないけど、長い目で見れば節約になる。何より俺が疲れない」

「まあそりゃ、こっちとしても有難い。お前が電池切れだと色々面倒臭いから」
――――――――――――――――――
――――――――――――


「・・・会わせたい人・・ですか・・・」

「ええ。きっとびっくりするわよ。向こうもあなたを見て驚くでしょうけど」

エレベーターでフロアを移動しながら、ベルティーニ博士の隣でワンは首を傾げた。

「・・別の施設からの人ですか?」

「どうかしら。会ってからのお楽しみよ」

・・・ドアに近づいたとき、ワンはある違和感を感じた。普通の人間より遥かに優れた彼の聴力が、大勢の・・それも若く活気のある人間の気配を感じとったからである。
そして同時に、何か異質な空気と匂いを感じた。

いくつかの疑問を抱えつつ、ベルティーニ博士が開けたドアから部屋に入る。

「・・失礼しま・・・・えっ」

「ああワン、おかえり。もう普段通りにしていても差し支えないのかい?」

「・・あ・・・あの・・・はい。えっと・・・・・・その方たちは・・・・・」

事も無げに微笑みかけるスワードソン博士に訊ねつつ、ワンは目をぱちくりさせながら別の方向を見ていた。
そして相手側もまた、目をぱちくりさせながらこちらを見ている。

「思った通りの反応だな。よう、俺のこと覚えてるか?」

また別の方向から飛んできたその声を聞き、驚いてそちらに目をやり――

「!!?」

さらに驚いた。

「・・・・くすっ」

「えっ?・・どっ・・・どなたですか?あの・・・ええっ?」

「なんだ覚えてないのか。こないだ暴走しかけたお前を止めてやったのはこの俺なんだぞ?」

自分と同じ顔と声をした正体不明の何者かを前にすれば誰だろうと驚くに決まっている。すると目を細めてにやにやと笑うソロに、ワンと同じような慌てぶりで仲間達が声をかけた。
言っている内容もほとんど同じようなものである。

「・・昨日話したじゃないか。あいつがここにいる理由はこのスライムたちと同じさ」

「ああ、そう言えば!」

「あいつがワンか・・・」

加えて、自分と同じような色感と匂いを持つ複数の青年達。
ワンは訳が分からないといった様子で、助けを求める視線をベルティーニ博士に送る。
しかし彼女はにこにこと微笑みながらその様子を見守るばかり。

「おーい」

「ひぃっ!?」

前方のソファに座っていたはずの彼がいつの間にか背後に回っており、ワンは素っ頓狂な声を上げて後ずさった。

「はっははは、オーバーアクションはこの宇宙ならではか。覚えてないならこれが初めましてだな、ワン。俺の名前はソロ。お前のオリジナルだよ」

ワンはしばらくの間呆気に取られて固まっていたが、やがてその表情のまま無言で差し出された手を取った。

「・・そう、彼はあなたの細胞の持ち主なのよ。わけあってはるばるこの宇宙まで来ているの。びっくりさせようと思ってたけど・・・ふふ、大成功ね」

「・・・・・・・お、オリジナル・・・・・。・・つまり私は貴方から生まれたのですね・・・?」

「ちょっと違うけどまあいいか、そうだ。よろしくな」

「は・・・・はい。よろしくお願いします・・・」

そこにMolecule Changer達が興味津々で―まるで彼らを初めて見た時のスライム達のように―嬉しそうに話しかけ始めた。しかしさすがのワンでも別の宇宙の言語が理解できるはずもなく、聞いたことのない音が並ぶ言葉に混乱し、たじろぐ。

「ははは、コピーだからって言葉が通じるわけじゃないんだ。こいつは生まれも育ちもこの宇宙のこの施設だからな。でもまあ、クリアの力を使えば問題なく喋れるようになるまでにそう時間はかからんだろう」

「そっかあ。ふうん・・・クリアって便利なんだねー」

「おう。便利な代わりに体力めちゃ消耗するけどな」