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同調率99%の少女(6) - 鎮守府Aの物語

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「ようやくすべて撃退して事件が片付きました。その地域だけとはいえ、大勢の人が怪我をし死んでいき、その爪あとは多大なものであったそうです。その後国や県から表彰されると思っていたところ、真逆の対応をされたそうです。その地域の学生全員に精神分析の検査がなされ、人外の敵が残していったものなど事件の痕跡あるものはすべて政府やアメリカが没収していきました。アメリカの手回しで国際的なニュースにこそなりませんでしたが、国連の安全保安局まで通じて持ちこまれて、秘密裏に議論が設けられ事件が起きた日本のその地域には徹底した言論統制、そして不必要に話題に触れた者に対しては弾圧に近い処罰がくだされたそうです。そのせいでその事件から1年ほど立つ頃には、人々の記憶からなくなり、完全に闇に葬られた形の事件となりました。」
「そんなことが……まったく知らなかったです。おばあちゃんはそんなことまで語ってくれませんでした。」
 苦虫を噛みつぶしたような険しい顔になっていた那美恵の吐露に校長は頷いたのち述べた。
「おそらくですが、孫娘のあなたには戦いの辛い面までは聞かせたくなかったのだと思いますよ。」
 校長の言葉は、那美恵自身も今にして思えばそうだったのだろうと想像できるところであった。祖母の密やかな気遣いを想像して今は亡き祖母に心の中で感謝する那美恵だった。

「お祖母様やご学友の方々は悔しかったそうです。単に活躍をひけらかしたいわけではない。自分たちの存在を通して初めての人外との接触や辛い事件を知って欲しかった。私に語る時もその声色の変化でわかりました。トラウマにも近い感情を抱かせてしまったことに私は申し訳なく思いましたが、それでもお祖母様方は話してくださったのです。関係者の大半の人が精神的に病んだり弾圧に耐えかねて密かに引っ越して行方をくらます中、唯一のちのちに残る形で夢を叶えて精力的に活躍をなさったのが、光主さん、あなたのお祖母様なのです。」
「……はい。知ってます。」
「封じられた栄光を蒸し返すのは一旦諦め、自身の夢だったアイドルを目指して奮起して数年かけてアイドルの下積みからのし上がったそうです。一世を風靡したとは言えない、それなりの人気でもって活躍した普通のアイドルだったそうですが、それでも光主さんのお祖母様は念願叶って掴み取った夢を徹底的にやりぬいたそうです。そして彼女も年を取り、アイドルから舞台女優に転身し、50代で引退したそうです。それなりの地位と名声を手にしたことで、非常に充実した引退後の生活を送ったそうです。」
 校長の語る祖母像を那美恵は半分ほどは本当に知らなかった。祖母があえて語らなかった点もあるのかと、校長の言葉を聞いて初めて気づいたのだった。

「彼女が50代になる頃には政府もだいぶ人が入れ替わり、封殺された事件を知る者・関係者への弾圧をする者はもはやなくなっていました。お祖母様は様子を見て事件の真相を語ろうとしたそうですが、誰がどこで見聞きしているかわからない、平和一色なその時代、あえて語っていらぬ遺恨や災いを呼び覚ます必要もないだろうとして事件のことは胸にしまったそうです。しかしその事件のことを連想してしまう出来事が今から30年前に発生したのです。」
 そこまで校長が語って触れた話を聞いて、那美恵や提督の頭の中で話の糸がつながったと感じた。
「それが……深海棲艦の出現と初めての艦娘なんですね。」
 那美恵が発言する前に提督が口にして正解を求めた。校長は頷いて続ける。