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同調率99%の少女(6) - 鎮守府Aの物語

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「えぇ。すでに70代の高齢になっていた彼女のもとにどこからか話を聞きつけた記者や元政府の高官と名乗る人物が度々訪れたそうです。私と同じように考えた人がいたということなのでしょうね。なんらかの参考にしようとした、しかし彼らは心のどこかで彼女らの関わった事件を不審に思い、信じていなかったのでしょう。聞きに来る人達の中の態度に現れるそういう気持ちに気づいたあなたのお祖母様や、催促されて仕方なしにお祖母様が紹介した元ご学友とその世代の方々は、語ろうとしていた口を再び閉ざしてしまったそうです。」
「そんなことが……。」
 那美恵は校長の語る祖母と祖母のまわりの出来事に驚きを隠せないでいる。校長は那美恵の相槌を受けて語りを再開する。

「あなたなんか生まれてない頃ですよ。西脇さんだってまだ学生の頃の話でしょうし。」
「あ……はい。恥ずかしながらそんな昔にはまったく興味がなかったですし存じ上げませんでした。」
 提督が自身の当時の境遇を白状すると、近い世代の妙高や明石も頷く。フォローとばかりに明石は補足した。
「一般に艦娘……艤装装着者のことが知られるようになったのはその20年前の開幕式からもっと後の時期だったはずです。ですから提督や妙高さんらがご存じないのも無理はないかと思いますよ。」

 明石の解説に相槌を打って校長は再び口を開いた。
「そういう態度の悪い前例があったために、最初私はお祖母様たちに断られていたんです。でも熱意を持ってあなたのお祖母様や当時のご学友の方々に頭を下げてお願いして回りました。これからの世代の子供達に教えるべき、伝え継いでいくべき世の中の真実、その好例だと説得してね。私達の思いが通じたのか、重い口を開いて丁寧に語ってくれました。その戦いであなたのお祖母様をはじめ、多くの人の心に深い悲しみや怒りといった遺恨、そして被害者を残したこと、封殺されて語ることすら許されなかった思いを語っていただけました。彼女らの中には心に溜め込みすぎたために心身を病む方もおり、心の中では辛い記憶であっても吐き出して誰かに知っておいてもらいたいという本音があったそうです。ですから私はそういう気持ちを汲んで、我々教師が実名は伏せてこの事件の真相と、ここから見い出せる命や絆、日常生活の大切さを、深海棲艦と戦うことになるかもしれないこれからの子どもたちに説くことの決意を表しました。同じ境遇にはさせない・あなた方に辛い思い出を蒸し返させない、未来は必ず私たちが守りますと。私がそう言ったときのお祖母様方は今でも忘れられないくらいの満面の笑みでした。すごく安心したという表情を浮かべていらっしゃいました。」

 那美恵は、祖母が決して語らなかったいくつかの事実を校長から聞くことができた。校長は那美恵の祖母らの体験を自分の手柄かのように捉えていたのではなかった。むしろ那美恵の祖母らを守りながら後世にまでその話を伝えるために、陰ながら支えていたのだ。祖母がその体験を話すときは明るく楽しそうに話していたが、実のところ話すのも辛いこともあったのかと、那美恵は気軽に考えて憧れて話をせがんでいた自分を恥じた。