同調率99%の少女(6) - 鎮守府Aの物語
--- 5 大団円
握手をするために立ち上がっていた提督と校長が校長室のソファーに腰掛けると、空気は一気に変わり、全員の緊張の糸がほどけたように開放的になった。
「なみえーー!!よかったじゃない!」
「うわぁ!みっちゃん!?」
急に三千花に抱きつかれ、驚きを隠せない那美恵。親友がそんなに感情を露わにするのは珍しかったからだ。一方で提督は先程までの硬い表情から打って変わって安堵の溜息をついていた。そして側にいた五月雨たちと喜びを分かち合っている。
那美恵と三千花は提督のほうに向き、今後のことに触れた。
「提督、これからうちの学校と、よろしくね!」
「あぁ。こちらこそ、うちの鎮守府のこれからに協力してくれ。期待しているよ。光主さ……いいや。那珂。」
「うん!任せて!」
提督と声を掛け合ってニコニコしていた那美恵はふと思い出したことがあり、妙高の隣にいた五月雨に向かって言った。
「あーそういえば五月雨ちゃん。」
「はい?」
「ここで!あたしが!話したこととか!あたしの態度は!ぜーーったいに!時雨ちゃんたち他の子には言わないでよぉ!?」
那美恵は、顔を五月雨におもいっきり近づけて目が笑ってない笑顔で釘を挿す。
「アハハ……はい。もちろん言いませんよ〜。」苦笑いしながらたじろぐ五月雨。
皆に今回の恥ずかしい自分の様を知られたくないための念押しだが、基本真面目で口が固い五月雨のことだからこれで大丈夫だろうと、那美恵はひとまず安心することにした。
続けて五月雨が気になったことを口にした。それは一同がすっかり忘れていたことでもあった。
「ところで、これから那珂さ……光主さんたちはうちの学校の時と同じように、顧問になる先生と、艦娘になってくれる生徒を探すことになるんですよね?」
五月雨の素朴な疑問に真っ先に表情を変えて反応したのは那美恵だ。
「あ。そうだ!顧問になってくれる先生も探さなきゃいけないんだ!!」
自分としたことが、艦娘になってくれる生徒と校長のことだけしか考えていなかった!と、那美恵は我ながら呆れた。
その様子を見てフフッと笑みを漏らした校長は教頭を近くに呼び寄せ伝えた。
「教頭先生、後日臨時で職員会議を開きます。さしあたってはのちほど先生方に、鎮守府Aと提携する旨、簡単に伝えておいて下さい。正式な案内は私から会議の場で改めて伝えます。艦娘部の顧問になる意志のある先生を再び募りましょう。」
そして校長は提督の方を向き、提携に際して必要な書類や手続きの確認を求めた。提督は防衛省からもらっていた学生艦娘制度の別の資料を取り出し、校長に見せて確認してもらうことにした。
提携を決めたことで、那美恵の高校は以後、自身の学校から艦娘を輩出したときにその学生の普段の生活を支援するための規則や運用を設けることが推奨される(義務ではない)。それは鎮守府としては直接関与しない部分のことである。
そして鎮守府は大本営(防衛省)と総務省・厚生労働省にこの事を連絡し、補助金申請書類を学校の代わりに提出し、与えるところまでを提携の業務とする。
作品名:同調率99%の少女(6) - 鎮守府Aの物語 作家名:lumis