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エルオブノス
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艦これ知らない人が大和を引けない友達を煽るとこうなる。

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「…………。」

 次に耳が捉えたのは、僕以外の呼吸音だった。
 榛名達が出ていってから、どのくらい経ったのだろう?まだ瞼が重くて、はっきり目覚めるには至らない。

 けれど、誰かの存在は感じていた。多分ベッドに腰掛けているのだと思う。
 じっと黙ったまま……時津風みたいに、気まぐれに僕の顔を見に来たのかな。

 ……随分長い間、僕の曖昧な意識でもそうと分かるくらいの長い間、その誰かは黙って座っていた。
 誰なんだろう。声を聞きたい。「お休み」とだけでも、口を開いてほしい。

 そう思った僕の選んだ行動は、身じろぎだった。少しだけ身体を動かして、布団をもそもそさせる。
 目や口を開くことは億劫で出来なかったが、とにかく状況に何らかの変化を与えられたらと思ったのだ。今の僕でも可能なくらい簡単で小さな動作。

 動作の小ささに比して、効果は大きかった。
 僕の身じろぎを見て、その誰かの身体が強張ったようだった。自分が起こしてしまったかと心配したのだろう。それから僕の様子を窺うようにゆっくりと、そっとベッドから立ち上がるのが分かった。

 立ち上がった後、気配はそのまましばらく止まっていた。座るでもなく、去るでもなく、立ち尽くして僕を見つめる姿が頭に浮かぶ。

 だが少し経って、気配が僕に近付いた。すぐ近くで衣擦れの音が微かにして、けれど何も起こらないまま……数秒後にまた衣擦れが聞こえて、気配が離れた。
 多分僕に触れようとして、躊躇って、結局やめたのだ。別に構わないのに。


「……ねえ、提督?」

(なんだい、時雨。)

 ……あれ?ああ、そうか。その誰やらは時雨だったんだ。
 声を聞いて、理解より先に返事が心に浮かぶというのは、少し複雑だ。親密さの表れとも思えるが……普段から何も考えずに反射のような言葉しか返していないのだろうか、僕は?

「……僕達は、提督のおかげで、今回も怪我しないで作戦を終えられたよ。でも……それが提督の健康を省みない無茶な生活の結果だと思うと、複雑だな。素直に喜べない。」

 小さな、呟くような声で時雨は文句を訴えた。

 そんな風に思わせてしまっていたのか。僕は僕の身体くらいどうなろうとも、皆の元気には代えられないと思ってやっていたんだけれど……そんなに心配させてしまうなら、今後は気を付けます。
 しかし今は口を開けるほどの元気が無いので、起きたらまた伝えよう。ごめんね。多分僕は皆を怪我させないために無理をするので、そのたびに文句を言わせてしまう。

「……まあ、今はゆっくり休むといいよ。お休み、提督……。」

 お休み、時雨。
 最後に僕に触れてから出ていっても構わなかったが……そうして欲しかったが、そのまま時雨は足音を忍ばせて出ていってしまった。

 また僕は、寂しさの中に意識を溶かしていく。
 そうだ。次に誰か来たのに気付いた時は、意を決して起きてみよう。すっかり寝てると思い込んでいた提督が急に起き上がったら、その誰かはどんな顔をするだろう?驚かせて喜ぶなんて子供みたいだけれど、面白そうな予感しかしないので、僕はいい年をこいてそんな事をしようと思う。

 ……僕が自然に目覚めてしまう前に、誰か来ればの話だけど。

 曖昧な意識の中でこんな静寂の中にいると、本当は鎮守府にいるのは僕一人なのかもしれない、なんて想像してしまう。
 僕が目覚めるまで誰も来なくて、目覚めて部屋を出て、しばらく彷徨(うろつ)いても誰にも出会わない……なんて、怖いことを思ってしまう。

 いかん。まだ寝るつもりなのに、そんな想像をしていては、夢に見かねない。いい年をこいて、僕は感受性には自信があるのだ。
 せっかく休むのだから、もっと楽しい夢を見たいではないか。寝てると思った提督が急に起き上がった時の反応でも想像しよう。

 例えば、榛名は明らかに驚いてから平静を装って「お早うございます」と言うだろう。
 時津風はもっと盛大に驚いて、寝起きの僕の耳を驚かせる。
 時雨は平然として「なんだ、起きてたのかい」と笑いそうだ。
 他にも、鈴谷なら驚いてから「ありえない!」と怒りそうだとか、妙高なら普通に「子供じゃないんですから」と叱られそうだとか、酒匂なら「ぴゃあ」だとか、色々考えている内に僕はまた眠っていた。