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伝説の超ニート トロもず
伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録014

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最後の扉を開け、四肢を失いすすり泣いているソロの顔を手で押さえ付けてもう片方の手で鋏を握る。恐怖で見開かれた目と眼窩の間に鋏の刃を滑りこませ、視神経を切断した。

悲痛な絶叫が響き渡るが、レックは手を止めない。素早い手つきで両方の眼球をえぐり出した。
そしてそのまま鋏で、鼻と唇を顔から切り取る。
次に耳を。

なるべく血が出過ぎないよう、形が崩れないよう運んだ。
そしてそれぞれを不完全なソロたちに縫い付ける。

そうしてソロを“助けて”いくうち、レックの身体からは先程までの異様な高揚感と多幸感は徐々に消えていった。脳内麻薬の暴走が収まるにつれ、今自分がやっていることの恐ろしさと残虐さがだんだんと理解できるようになってきたのだった。・・ちりっ、と胸に刃物を刺されたかのような痛みに近いものが生まれる。

・・急に重くなった体を何とか動かし、もう一度最深部の部屋に到達する。そして血だまりを踏みしめ・・・無残な姿になったソロを見下ろして呆然とした。

・・・・・・。・・・・・・最後は心臓だ。やり遂げなければ。早く済ませてしまわなければ。これ以上時間をかけたら正常な感覚が戻ってきてしまう。そうなったらきっと自分は気が狂ってしまうだろう、急がなければ・・・。

僅かに震え始めた手で鋏を握りしめ、ほとんど動かなくなったソロの胸に突き刺す。肋骨をこじ開け、血管を切って心臓を取り出した。立ち上がる時に少しよろけ、少し前までとは打って変わって悲痛な表情で駆け出した。

ダメだ、考えちゃいけない。今自分が持ってるのが何なのか。なぜ自分の顔や身体には血がべっとり付いているのか。考えちゃいけない。

胸に穴の開いたソロに心臓を縫い付け終わると、レックは脱力して肉の地面に膝と両手をついた。肩を上下させて荒い呼吸を繰り返す。

呼吸を落ち着かせてから立ち上がるが――ひどい眩暈がする。それに吐き気も尋常じゃない。ふらつきながら肉の部屋を引き返していく。
螺旋階段を下りている途中に耐えきれず何度か嘔吐したが、何も考えずにひたすら足を動かした。やがて最下層に到着する。

・・・・・そして赤く錆びた鉄の扉を半ば突き飛ばすようにして開けた時。
足場が音を立てて崩れ去り、レックの身体は暗闇の中に吸い込まれていった。
――――――――――――――――――
――――――――――――


「・・・レックいるかー?・・・・・・・・。・・・・・・・・?」

ドアをノックしてオフィスルームに入ってきたエックスは、ベッドで横になっているレックを見つけて眉をひそめた。

・・・右手がベッドからはみ出して垂れ下がっている。それだけなら何も問題はないのだが、おかしいのはその指先に鉄でできた大型の鋏がぶら下がっていることだった。

(・・・・・何だこれ。・・・・・ハサミ・・・?なんで・・・・・)

奇妙だった。刃の部分がいびつに曲がっていて長く、およそ紙などを切るためのものとは思えない。エックスはそれに手を伸ばしたが――

「そっとしておいてやってくれ。今こいつは夢の中にいるんだ」

「うわっ、びっくりした・・・いきなり出てくるなよな。・・・レックは寝てんのか?」

突如背後に現れたソロに阻止された。そしてもう一度レックの方を振り返ると・・・鋏は消えていた。

「・・・・・・?」

「寝ているとも言える。だがこいつが無事に夢から醒められるかどうかは、こいつの精神力にかかってる」

「・・・どういう意味だ?」

「・・・・・薬が、必要なんだよ。俺のせいだ。辛い思いをさせ過ぎた。・・みんなといる時は平気そうにしてるが、レックの心はもう限界寸前だ。そしてこいつが無事戻って来られるかどうかは、俺の安否にも関係してる」

エックスは黙り込んだ。・・・・うっすらと異変を感じてはいたが、やはり尋常ではない消耗をしていたのだ。

「・・それで、どんな用でレックを?」

「・・・いや、用ってほどじゃないんだ。ちょっと・・・お前のことについて話そうと思っただけで。まあ本人がいるからもういいんだけど」

「そうか」

・・・・・・・・・ソロと言葉を交わしながら、エックスはちらりとレックの手元を見やった。
レックの右腕は不自然に垂れ下がったままだった。
――――――――――――――――――
――――――――――――



・・・どこまでも落下し続ける。暗闇の中を。・・何も見えない真っ暗闇のはずだが、視界にはぼんやりとした風景らしきものが浮かんでいた。おそらくはソロの記憶だ。
そのどれもが痛々しく凄惨で、血みどろで、見苦しい。永遠に癒えることのないソロの心の傷。

その傷の中を、レックはまっすぐに落ちて行った。どこまでも、どこまでも。



・・・・・・・やがて光が見え始める。地獄の最下層だ。重力操作を使ってその金属の床に着地した。・・そして全身に重くのしかかる絶望を噛み締める。

そこは地下牢だった。レックとソロがともに最も思い出したくない場所。乾いた血。足枷。
全ての恐怖と穢れの吹き溜まり。

そして青白く闇に浮かび上がっているソロの身体。・・・あの時と違うのは、彼が完全に息絶えていることと、身体が真っ二つになっていないことだ。

・・歩み寄った時、レックは彼の死体の周りに渦巻く不気味で生温かい気配から、一番わかりたくないことをわかってしまった。
見るとはなしに見てしまった。彼の肌にぶちまけられた液体が二種類あることに気付いてしまった。・・赤と白。

「・・・・・・・うっ」

また急激に吐き気が込み上げてきた。やっとのことで堪える。・・・この遺体は、最初に見つけたこの世界の主なのだろうか。

後ずさろうと足を一歩下げた時、・・・ぐしゅりと肉の裂ける音がした。血飛沫が足元まで飛んでくる。顔を上げると――倒れているソロの腹から、白い腕が生えていた。目が眩むほど白い皮膚に真っ赤な血の模様がついている。

腕は同じ場所からもう一本生えてきて、肘を曲げ床に手のひらをつくとそのまま床を押し下げるようにして――

(・・・・・・ソロ。・・・・・・本物だ。・・・・・・・・・・・ソロの匂いがする)

・・死体から這い出てきたのは、間違いなくこの世界の主だった。俯いたままゆっくりと立ち上がると、頭をもたげる。髪はもとの色がわからなくなるほど夥しい量の血にまみれ、頬にかかった毛先から赤い滴が零れ・・・・
それが床の血だまりに落ちた時、視界に閃光が走った。

「・・ッ!!?」

咄嗟に防御をとっていたため大きな傷にはならなかったが、頭をかばった右腕は皮膚が大きく裂かれていた。
驚愕で思考が埋め尽くされ反応できないでいるうちに、脇腹に蹴りを食らい倒れこみながら吹き飛ぶ。

顔を上げると、ソロはすぐ目の前に立っていた。不自然に見開かれた目は血走っており、瞳は赤く光っている。最も大きく異様に変化していたのは右手だ。骨が内側から破裂したかのような形で皮膚を突き破って広がっている。それがまるで鉤爪のような働きをしているのだ。

・・・まさか、嘘だろ。戦って倒せっていうのか!?

慌てて距離を取り、戦闘体勢に入る。強くイメージして剣を出現させ、右手で握った。