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伝説の超ニート トロもず
伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録015

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ソロ: 裏切られた・・・のとは、違う。神は裏切ったなんて思ってない。そしてその上、これから成すべき使命だと思っていた物語も、神々の暇つぶしゲームに過ぎないことが分かって・・・。それが奴のぎりぎり保たれていた精神の均衡が、あとかたもなくぶち壊れた瞬間なのさ。奴はやがて何もかもを理解し、受け入れた。自分にも世界にも意味などない。信じるものも、縋るものもない。全ては自分達が勝手に作り上げた都合のいい妄想だったのだとな

博士: ・・今の貴方にはわかる、と仰いましたね。以前の貴方にはわからなかったのですか?それはなぜです?

ソロ: ・・・・・・・・・今の俺には・・・悲しみがあるからだ。本当のことを言うとこうして何食わぬ顔で喋っていられるのは、クリアの力で悲しみを押さえ付けているからだ。その加減がどうにも難しくてな。色々ミスって幻視や幻聴を引き起こしてる。もう少し慣れてくれば治るはずだ

博士: 悲しみ・・・ですか。今までの貴方にそれがなかったのはなぜですか?

ソロ: 決まってるだろ、あいつだよ。感情があると都合が悪いから作らなかったんだ。言ったはずだぜ。俺には自我がないと。つまり心がない。感情もない。俺はただの、有機物でできたコンピュータだよ

博士: ・・・・・・・そう、ですね・・・。・・・・・今の貴方にあるのは悲しみだけなのですか?他には?

ソロ: 悲しみだけだ。しんどいぞ、これ。24時間ずっとひたすら悲しくて仕方がないんだ。クリアがなけりゃ別の感情ができるまで寝たきりで動かなくなると思う。さらに悲しいのは、この先俺に戻って来るのは全て負の感情だってことだ。ちょっと軽く考えてたな・・・だって次は“不安”だろ、その次が“恐怖”で、“怒り”、“欲望”、最後は“狂気”と来たもんだ。あいつはどうやら俺を廃人にするつもりらしい。まあこれは一種の後片付けなんだけどな

博士: ・・なんとなく掴めた気がしますよ。ところで話は変わりますが、ひょっとして貴方は今あなた自身が涙を流していることに気付いていないのですか?

ソロ: ん?ああ、気付いてはいるが特に何の影響もないから放置してる。気にしないでくれ

博士: ・・うーん。それは・・少し難しそうですね

ソロ: そうか。なら止めよう

博士: いえいえ、そこまでしていただかなくて大丈夫ですよ。どちらかと言えば私より、貴方自身に気にして欲しいとでも言いましょうか

ソロ: ・・・よくわからないな。それって何か意味があるのか?人間らしく振舞おうと思えばできないことはないが、予定にはないしそうすることで生まれるメリットも特にない。俺がこうして不愛想で機械的で酔狂な態度でいるのはな、なるべく他の人間に感情移入されないためなんだ。あんたには再三言ったはずだが、間違っても俺を一人の人間だと思うなよ。絶対にロクなことにならないから

博士: ・・・ええ、心得てるつもりです。すみません、今のは私の個人的な小さな我儘でした。話を戻しましょう・・・。なぜ突然貴方に悲しみが・・・感情が戻ってきたのです?

ソロ: ・・“ソロ”がそう望んだからだ。あいつが何を企んでるのかは、正直なところ全貌は把握しきれない。ただその計画の一部として、馬鹿コンピュータを人間もどきに改良する必要があるというわけだ。と同時に、この世界に振り撒かれた災厄に決着をつけなければならない。こいつはそれについてくるおまけみたいなもんだ。大丈夫、気分で仕事をおろそかにしたりはしないから安心してくれ

博士: ・・わかりました。ありがとうございます。では図々しいことを承知でお聞き致しますが、これからは私が一人の医師として貴方のお話を聞くこともできるというわけですね?

ソロ: ははぁ、あくまでもあんた自身の趣味を優先するってわけかい。俺が稀代のお人好しじゃなけりゃあ断ることもできるんだろうけどなあ、まいいさね。好きなだけいじくり回すといい。俺もそこまでケツの穴が小せえ訳じゃねえからな
――――――――――――――――――
――――――――――――



「・・・・・・・。・・・・・・・」

レックはゆっくりと目を開けた。何故だか、今目覚めたばかりなのにやけに意識がはっきりしている。
視界に入ったのはオフィスの白い天井――ではなかった。

「うわ!?」

「わー!!」

目の前にあったのは、心配そうにレックを覗き込んでいたエックスの顔だったのだ。
驚いて思わず上半身を跳ね上げてしまい、お互いの額を強かにぶつけた。

「ぃいってー!・・・ってー・・・!」

「いっつぅ・・・・!」

少しの間、二人そろって手で額を押さえて悶え苦しむ。
そして痛みが引いてきた頃には、込み上がってくる可笑しさに耐え切れずどちらともなく笑いだした。

「な・・何なんだよもうっ・・・びっくりした・・・!」

「俺だってびっくりしたよ!いきなり起き上がるからさぁ・・・っていうか、お前大丈夫なの?なんかすげーうなされてたけど・・・」

・・ああ、それでオレの顔覗き込んでたのか。
額に手を当てたままレックは納得し、同時に申し訳ない気持ちになった。

「・・・あー、えっと・・・そうなのか?なんか嫌な夢でも見てたのかな。思い出せねえや」

「・・・・・・・あの・・・そのな、聞いたんだ、ソロから。ちょっとだけだけど。あいつの感情を取り戻そうとしてるんだろ?」

「え・・・ぁ、・・・・・。・・・・・うん」

「・・・お前ひとりの孤独な戦いになるって・・・それで、もうかなりギリギリなんじゃないかって、ソロが言ってた。なんて言うかその・・・お前自身の心がさ」

「・・・・・・・・そっか・・あいつが。・・ごめんな、心配かけて。もしかしてみんな知ってるのか?そのこと」

「いや、俺だけ。たまたまここに来た時ソロに教えてもらったんだ。薬がいるってことも聞いたし、持ってきた。とりあえずここに置いとくからな」

エックスが目を向けた場所を見ると、デスクの上に半透明のカプセルケースが二つ置いてある。その横には注射器もあった。

そして今やけに意識がはっきりしていて、気分も楽で落ち着いている理由を悟った。ここに戻ってきた時ソロに飲まされた薬がそれだったのだ。腕の注射も。

「・・・白い粒は一日に二回、二つずつ飲むやつで、注射はどうしても辛い時に使えばいいって。打った後は少なくとも30分くらいは横になって静かにしてた方がいいらしい」

・・実はエックスは、あれらの薬剤を持っているのを白衣の研究者たちに見られた時、彼らが怪訝そうな―もしくは心配そうな―表情で自分を見ていたことに気付いていた。
そしてこの薬は本来、使わずに済むならそれが一番いい類のものなのであろうことを悟った。
それほど今レックが追いつめられているということも。

「・・ありがとう。悪いな、わざわざ持ってきてもらっちゃって。・・・なんかごめんなホント、心配させて・・・別に全然大したことないんだ。ほら、ソロってちょっと話し方が大袈裟なとこあるじゃん?わざとじゃないんだろうけどさ・・・」