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伝説の超ニート トロもず
伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録016

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「奴があの子を殺そうとしたからだ!!」

アレルがソロを押し切り、反撃に移る。しかし剣で弾かれ、左腕の上部に斬撃を食らってしまう。

「ぐっ・・・・・自分のために人間を殺す気でいる分際で、一人前に人の死を嘆くな!!貴様にそんな資格はない!!」

「黙れえぇッ!!そっちこそ訳の分からない理由で俺達を殺そうとしてただろうが!!」

・・・・・え?

「これは殺しじゃない、悪の殲滅だ!!人を殺そうとしている貴様らは勇者じゃない!人間でもない!魔物だッ!!魔物を倒して何が悪い!!!」

剣と剣のぶつかり合う音が何度も木霊し、サマルの鼓膜と脳を痺れさせる。
・・・訳の分からない理由・・・?それって・・・まさか。

「ふざっけんな!!これ見よがしにもっともらしい理由後付けしてんじゃねえ、イカれた宗教家が!てめえらの血族以外は勇者とは認めないんだろ!?だから消す!そうほざいてやがったのはどこのどいつだ!!」

憎しみと怒りに満ちたソロの言葉を聞いた瞬間、サマルは全てを悟った。
ここは本当に最悪の世界だ。
ロトの血族の勇者も、天空の勇者も、両方がお互いを自発的に潰そうとしているのだ。
・・いつか体験した世界のように、みんながみんな異常な性格で支離滅裂な主張を並べ立てながらでたらめに殺し合っている方がまだよかった。
その方がまだせめて、現実感が薄いという救いがあったから。

・・アレルがふと動きを止め、歯を食い縛った。

「・・・貴様らのような連中が勇者であってたまるか・・・何の誇りもない、覚悟もない、自分が勇者になったことで生じた不幸を嘆いて泣き言ばかり言いやがって・・・。
そのくせ反則じみた力と加護を与えられ、行きがけの駄賃で世界を救ったお前らのような連中が、正しい勇者であるはずがないんだ。自分のするべきことを知りもしないで生きてきたくせに。
挙句の果てに願いを叶えたいからみんな殺すだと?ふざけるのも大概にしろよ。可哀想な自分に酔いしれるのは結構だが、そのために周りに害悪を撒き散らすのは勘弁してくれ」

急に、アレルの言葉と口調がどこか卑屈になった。彼の口からこんな言葉が出るとは夢にも思っていなかったサマルは、ただただ驚き、呆然と彼を凝視した。

「自覚がないんだよ、お前らには。何の制約も不自由もなく適当に生きてきただけのくせに。旅行のついでに魔王倒したとか、成り行きで魔王倒したとか・・・お前に至っては家族を殺された復讐だったんだろ?そんなことで一体何を誇るつもりだよ。一体何を遺すつもりだよ。
少し戦いの才能があったというだけで軽く抜擢されて、観光ついでに世界救ったようないい加減な連中が勇者を名乗るなんてそんなの許せるわけがない・・・許されていいものか。そんな低レベルな人間だから他者を踏み台にして幸せになろうとか愚かな発想をするんだよ」

ひくりとソロの目元が引き攣る。天空の剣を握った腕がぶるぶると震えだす。

「・・・・き・・・貴様ぁ・・・・・っ」

「自分の考えの理不尽さは棚に上げて、都合が悪くなれば被害者気取りで“辛い”“苦しい”と言い訳ばかり・・・気の毒なら何してもいいのかよ。可哀想なら何してもいいのかよ。自分がどれだけ恵まれてるか考えようともしないで・・・!」

・・・・・サマルは、第一ステージで現実のアレルがふと呟いていたことを思い出していた。
自分は様付けで呼ばれるような立派な人間じゃない。
平気そうに見えてもその実かなりギリギリだったりすることもある。

・・この時サマルがこの世界のアレルに垣間見たのは、自分より手軽に自分より強力な力を手に入れている―正しくは彼がそう思い込んでいる―他の勇者たちに対する、苦い羨望と嫉妬だった。

・・そう、サマルと同じだったのだ。

違う点は、それらが彼の中で“歪んだ形で勇者の力を手に入れた偽物たちは認めない”というもっともらしい事実に捻じ曲げられてしまっていることだった。
そして本人はそれに気付いていながら認めたくないが故に、そして持って生まれた正義感と名誉欲のために、彼らが人を殺そうとしていることを利用して正当化を図っている。

「・・・・・・・・・・・・」

“自分がどれだけ恵まれてるか考えようともしないで”

伝説となった偉大な英雄が、密かに抱いていた歪んだ劣等感。
サマルにとってこれは非常にショッキングでありながら、どこか・・・自分の世界にいる現実の彼にも通ずる部分があるのではないかと思わせる言葉だった。

何故?

・・・サマルは頭痛を感じた。知っている。自分の思考力は、それを凌駕して抜きんでている自らの勘と洞察力にとても追いつけていない。だからいつも、大事なことに気付いていながら理解が遅れて後悔するのだ。

きっとこれは何かの啓示。次こそ時間切れになる前に、この直感の正体を探り当てなければ。
じゃないと・・・じゃないと何か、悪いことが起きる気がする・・・・。

「・・許さない・・・お前だけは絶対にッ・・・。殺す。必ず殺す!お前ら全員滅ぼすッ!!」

「やれるものならやってみろ愚かな人殺しが!貴様らこそが滅ぶべき存在なんだ!!苦しみ抜いて死ね!!」

再び、燃えさかる憎悪のままに罵り合い、二人は激しい攻防戦を始める。

「お前こそ人殺しだろうがッ!!苦しんで死ぬべきなのは貴様だ!!勇者に相応しくないのは貴様の方だ!!いつまでも過去の栄光に縋ってんじゃねえよ死ね偽善者ぁぁああッ!!!」

「人間以下の奴に偽善者呼ばわりされたって何とも思わねえよこの悪魔が!!お前が死ねぇぇエエええぇッ!!!」

あまりにも酷い罵詈雑言の嵐に背を向け、サマルは耳を塞いで目を閉じた。
・・考えるんだ。思考をやめちゃいけない。耳を傾けてはいけない。

ここにいる悲惨な姿のアレルと、現実世界にいる強くて優しいアレルにうっすらと共通点が見えてくる。

羨望と嫉妬から元を辿ってみる。劣等感・・・というよりは・・・・・・・・・引け目、負い目。罪悪感。
そうか、・・・これだ。

自分がいながら守るべき子孫を二人も失ったこと。守れなかった自分に対する憤り、悲しみ、失望、絶望。
そして子孫から望まれ信じられている“伝説の勇者”という存在に、自分が追い付いていないかも知れないという恐れから来る申し訳なさ。

・・・・少し考えれば・・・すぐにわかることだった。
彼を“伝説の勇者様”としてではなく、一人の人間として考えればそれほど難しい問題ではなかったのだ。

・・そしてひとまず結論を出したサマルは、ゆっくりと顔を上げて天井を見つめた。

・・・・・・・・・それがわかったところで、どうしたらいい?
――――――――――――――――――
――――――――――――


「っ!」

「・・サマル?」

「どうかしたか?」

急に意識が飛び、次の瞬間視界に入ったのは研究所のオフィス内の壁だった。
そしてそこにひょこっと顔を出したのは、今の今まで散々憎み合い殺し合っていた二人。

「ひぅわ!!」

「寝ぼけてんじゃねーの」

「まあ・・・まだ朝早いしなあ」

電子時計の文字を確認すると、自分達の基準でだいたい5時過ぎくらいだということがわかった。