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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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比翼の鳥は囀りて

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 それから数日、ルヴァはアンジェリークと会わずにいた────否、会えなかったのだ。
 とにかく彼女にだけは嫌われたくなかった。
 それに……向こうからやってきた形跡のない事実が、全ての答えなのではないか。
 そんな重苦しい気持ちから、ルヴァは逃れる術を知らなかった。

 鋼の守護聖がやってきたのはそれからすぐのことだった。

「よぉ、邪魔するぜ」
 この守護聖ときたら、ノックと同時に扉を開けて入ってくる癖がある。
「ああ、ゼフェル。いらっしゃい」
 お茶でも淹れようかと立ち上がったとき、目の前に見覚えのある紙袋が置かれた。
「これ、アンジェから預かってきた。ルヴァにって」
「そう……ですか。それはありがとうございます」
 きりきりと胃が痛む。今は愛想笑いすらできそうもなかった。
「中見てみろ」
「今ちょっと忙しいんで、あとでゆっくりと見……」
 言いかけた言葉を遮って、ゼフェルは強い調子で続けた。
「いいから見ろって。見たらイロイロわかるからよ!」
「……わかりました」
 溜め息をついて恐る恐る紙袋を開けた。丁寧に梱包されリボンがかかっている。
 包みを剥がし、紙の箱を開けてみる。

「……これ、は……!」

 そこには見事な螺鈿細工の小箱と封筒が入っていた。
 向かい合う二羽の鳥が木の枝で羽を休めている背景には、天の川のような煌めきが散りばめられていた。
「ちなみにそれ、俺が作ったやつな。デザインはアンジェが描いた。あの日、明け方にできたんで直接もってったんだよ」

 指先が震えた。
 もしかして。もしかして彼女は────

「なんか勘違いしてるみてーだから、あんたには言っておく。オレはあいつのこと好きだけど、あいつはオレのことなんとも思っちゃいねーよ」
「…………」
 指先が震えたままもどかしい思いで封筒を開け、中を覗いた。
「…………!!」
 そして、ルヴァの呼吸が一瞬、止まった。
「でも今、あいつ熱出してぶっ倒れてっからよ。元気付けにおっさん連れてってやろーかと……ってオイ!」

 ゼフェルが言い終わらないうちに小箱と紙袋を掴み、女王候補の特別寮めがけて一気に駆け出していた。

「ったく……いつも人の話は最後まで聞けつってんの、あんただろーによ」
 やれやれと床に落ちた封筒とカードを拾い上げた。
「なんだこりゃ。オレにはさっぱりわかんねーなー」
 でもきっと、地の守護聖にはあっさり解ってしまったんだろう。
 鋼の守護聖は口の端を上げて呟く。
「……お似合いだぜ、おめーら」

 封筒の中にはまたカードが一枚と文香がひとつ。

────今日は暖かくて、夕日がきれいですね。 アンジェリーク
作品名:比翼の鳥は囀りて 作家名:しょうきち