比翼の鳥は囀りて
その後、王立研究院ともこまめに連携しながら緑化事業はますます安定し、ルヴァはもうすぐ四十に手が届くかという年齢になっていた。
その日は朝からアンジーが騒がしかった。
何かに興奮したように駆けずり回り、延々と大声で鳴きわめく。
「一体どうしちゃったんでしょうかねー」
体調が悪そうなそぶりは見えない。
もしかしたら恋の季節なんだろうか、などと思いながらルヴァは外出の準備をする。
「今日はオアシスの視察に行ってきますからねー。いい子でお留守番してるんですよ」
居住区域の緑化にあたって東の湖から水を引いたのだが、その周辺も今や緑豊かな土地へと変貌を遂げていた。
ちょうど湖の南西に地下水脈があることが判明し、今日はその視察に向かうのだ。いつもは早めに家を出て王立研究院へとまず立ち寄るのだが、今朝に限ってはアンジーのことで時間を取られたため、無線で仲間に連絡を入れてから車で直接現場へ向かった。
この星へきたばかりの頃にはまだ小さかった湖は、いまや色とりどりの花が咲き誇るオアシスになっていた。
元々ここは水場ゆえ僅かな植生はあったものの、見た目としてはかなりまばらだったのだ。
「……これは、素晴らしい景観ですねー」
仲間たちはまだ当分来る様子がないので、座って辺りをじっくり眺めることにした。
飛空都市や聖地の花畑ほどではないが、目ぼしい植生のなかった土地からよくここまで草花が増えたものだ。
砂漠は観光資源として残しながら、できるだけ民が暮らしやすい土地へ……。
女王試験の日々を思い出す。
日に日に育つ大陸の様子に一喜一憂していた、アンジェリークその人を。
データの上だけではなく肌身で感じてこそだと言い切った、あの澄んだまなざしを、今も忘れられない。
「本当に……あなたには教えられてばかりです」
あのまなざしが、ルヴァの心の中にしっかりと根付いて大輪の花を咲かせ、在るべき道を示すのだ。
前へ進みなさい────と。