比翼の鳥は囀りて
手紙にはまともな手がかりがないため、ひとまず王立研究院からあたってみることにした。
馴染みの主任研究員に挨拶をする。
「あっ、ルヴァ様! お手紙は届きましたか?」
「はいー、ありがとうございます。その件でちょっとお聞きしたいのですがー」
懐から手紙を取り出して尋ねた。
「この手紙のことを言ってきた人は、どういう方なんでしょうか」
「それが……あの。とてもお若い綺麗な女性でして」
「もしかしてアンジェリーク・リモージュと名乗る、金髪で緑の目の人でしたか? 背はこれくらいの」
ルヴァが鼻のあたりに手をかざすと、大きく頷く主任。
「そう……そうです! 二週間ほど前に主星から手紙を出して、それから町であなたを探していたところ、あちこちで門前払いを喰らっていたようで……困り果てて今朝がた研究院へ来られたようでした。それでまずは事務所のほうへお知らせをと」
状況からアンジェリーク本人とほぼ確定したことで、ルヴァは逸る気持ちを抑え切れないでいた。
「それは本当にお手数をお掛けしましたねー。それで、彼女はどこへ?」
「ルヴァ様の手がけている緑化プロジェクトの話をしましたら、見に行きたいと仰っていたのでラクダツアーをご案内しました」
ラクダツアーもルヴァの発案で、いまやこの町の重要な観光収入源となっている。
「あー、でしたら私と入れ違いになっているような気がしますねぇ。では迎えに行ってきましょう」
ありがとう、と踵を返すと、研究員に呼び止められた。
「あの……あの方は、もしかして……へい」
しぃっ、と合図を送ると慌てて口をつぐんだ。
「今は、私の大切な人……なんですよ」
慈しむような優しいまなざしに、彼の想いが滲む。
「お会いしたらよろしくお伝えください。どうぞお気をつけて」
研究員はそれだけ言うと、ぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございます。また後日改めてご挨拶に伺いますね。では失礼します」