比翼の鳥は囀りて
東の空囀りて
ラクダツアーの目玉はオアシス周辺の鑑賞になっている。
そこから夕焼けを、そして赤く染まる砂丘を眺めるのだ。
いつだったか、故郷のそんな風景の美しさを彼女に話して聞かせたことがある。
風の音と自分の息遣いしか聴こえないような、耳が痛くなるほどの、あの静寂が好きだと。
きっと今日、あの人はオアシスから夕焼けに染まる砂丘を見るはずだ。
……まだ愛しているか、と書かれていた。
滞在している場所すら書かれてはいなかった。
比翼連理の約束から時間が経ってしまっているし、不安になっていても不思議ではない。
変わるはずがないのに。
むしろ歳を重ねてしまった自分のほうが、嫌われてしまうのではないかと恐怖すら覚えているのに。
それでも、こうして逢いに来てくれた以上は────もうどんな手段を使ってでも離れるつもりはない。