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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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比翼の鳥は囀りて

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 星座の位置で方角を確認し、車は緩やかに加速を始めた。
「じゃあルヴァのおうちには今、人間の女の人はいないわけね?」
 ハンドルを切るルヴァの横顔をちらりと盗み見て、アンジェリークはほっとしたように微笑む。
「はい、だーれもいませんよー。私とアンジー、一人と一匹の生活です。安心していただけましたかー?」
「ええ、町の人たちの話を聞いてちょっと不安だったの。……あっ、そうだわ」
「どうしましたー?」
「ねえルヴァ、先にホテルに寄ってもらってもいいかしら。あの、砂だらけだから」
 払っても払っても出てくるの、とスカートを広げて見せる。
「あー、そうですよね。じゃあお互い一旦戻りましょうか。離れるのは名残惜しいですが」
「何を食べに行きます? ドレスのほうがいいかしら」
「うーん、そうですねえ……」
 ちょっと考えてから口を開いた。
「お疲れでしょうし気楽に夕食を、って思っていたんですけれど……折角再会できた夜です。しっかりおめかししましょうか」
 以前より大人びて格段に美しくなったアンジェリークの、上品な佇まいを見てみたい。
「じゃあ、ルヴァもバシッとキメてきてね!」
「あー、えーと、あんまり期待しないでくださいね~」

 そしてアンジェリークを滞在中のホテルまで送り届け、ルヴァは急いで自宅へと戻り仕度を始めた。
 まずは真っ先にアンジーにご飯を食べさせて、それからシャワーを浴びた。クローゼットの中を引っ掻き回し、あれやこれやと引っ張り出す。
「……うーん。これがいいでしょうか。でもこっちの色合わせも捨てがたいし……」
 守護聖の頃は基本的に執務服な上、侍従がいたので服装についてあまり気にしたことがなかったように思う。それにこの星へ来て揃えた服は、汚れてもいいものの他はデートに使うにはカッチリしすぎている気がする。
「せめてドレスの色だけでも訊いておけば良かったですかねー……うぅ」

 いよいよ待ち合わせの時間が迫り、迷いに迷って決めた一着に袖を通す。
 一見黒に見える、濃紺のシャルワニという衣装を着る事にした。
 なんだかんだと迷っているのも楽しいひとときだなと思いながら、呼んでおいた車に乗り込んだ。

「おー先生! 久々に呼ばれたと思ったら、えらい気合入れてどうしたの!」
 この運転手ハサニももちろんルヴァのことを良く知っている。晩餐会などにも呼ばれることがあるため、時折配車を頼むことがあるのだ。
「ええ、今日はお祝いの日なのでねー」
「そうかい。ゆっくり楽しんできなよ! で、どこへ向かえばいい?」
「まずはアラジア北通りのホテルまでお願いします。そこで一人拾いますので、それからザヤードゥカ東まで行ってください」
「あいよー!」

 ホテル前で待つアンジェリークを見つけ、車から降り立つ。
「お待たせしてしまいましたかー? とっても綺麗ですよ、アンジェ」
 アンジェリークのほうは、広めに開いたスクエアネックのエレガントなロングドレス姿が良く似合っていた。
「ありがと、今出てきたところよ。ルヴァもすごく素敵ね! こういう色の服も似合うのね」
「ありがとうございますー。何を着たらいいのか、延々と悩んでしまって……」
 出掛けにアンジーがやたらと足に纏わりついて、車の中でブラシがけをしていたことは秘密にしておいた。

 車の中ではハサニが目を丸くしていた。
「いやー先生がこんな別嬪さんを連れ歩くとか、驚きだねえ! お嬢さん、この人おじさんだけどいいの?」
「おじ……ッ!」
 最後の一言に過剰反応するルヴァ。
 鋼の守護聖にも言われたことを懐かしく思い出し、アンジェリークは微笑む。
「いいんです。わたしのオンリーワンだから」
 ね? と翠の双眸に見つめられ、ルヴァはこっそり繋いでいた手をぎゅっと握って返事をする。
「はっは! 長年待った甲斐があったなあ、先生!」
 そう言ってハサニは豪快に笑った。

「さー到着だ。気をつけて降りてくれよ。連絡してくれりゃ帰りも迎えに来るから」
「ありがとうございます。ではまたあとでご連絡しますねー」
「ハサニさん、どうもありがとうございましたー!」
 お二人さんいい夜を、と言い残してハサニの車が遠ざかっていった。

作品名:比翼の鳥は囀りて 作家名:しょうきち