比翼の鳥は囀りて
それからフロマージュにデザートと続いて食後のコーヒーを味わっている間中、ルヴァは無言になっていた。
「ルヴァ、どうしたの? 具合でも悪くなっちゃった?」
心配そうなアンジェリークの視線に、慌てて笑みを作る。
「あの、アンジェ。あなたに言わなければと思っていたこと、今言ってもいいでしょうか」
「なんでしょう?」
「以前、連理木の前で誓ったことについてです。お互いが聖地を離れて、生きて再び出会えたら……そのときは」
そこで一旦言葉が途切れ、呼吸を整えるルヴァ。
「そのときは、結婚して欲しいと言いましたね」
アンジェリークはこくりと一つ頷いた。
懐から小箱を取り出して、これをあなたに、と差し出した。
中にはエメラルドとダイヤがあしらわれた指輪。
「本当は、聖地にいた頃に渡すべきものでした。こんなに遅くなってしまってすみません。あれから時間が経っていますから、改めて言わせてください。……どうか私と、結婚してくれませんか」
緊張した面持ちで返事を待つルヴァを、翠の瞳は優しく見つめた。
「ルヴァに逢いたくて、ここまで探しにきました。こんなわたしで良かったら」
差し出されたしなやかな左手の薬指に指輪をはめると、あっという間にアンジェリークの目が潤む。
「……あー、良かった! あの、結婚指輪はですね、そのー。近々二人で選びたいと思っているんですが、どうでしょう?」
安心した様子でルヴァの顔に微笑みが戻る。
「そうね。一緒に選びたいわ! ああそれに、主星にいるロザリアにもお手紙出さなくちゃ。任務成功、って」
「任務?」
「そう、任務。『絶対にルヴァと逢って末永く一緒にいなさい』って言われちゃったの」
その口ぶりに、あんた一人じゃ心許ないんだから! と幻聴が聞こえてきそうな気さえしてくる。
「ロザリアは、元気にしてますかねえ」
「式を挙げるなら呼びなさいってすごーく念を押されたわ」
そのときの光景を思い出したのか、くすくすと笑い出すアンジェリーク。
「落ち着いたら今度会いに行きましょうかー」
そしてきちんとお礼を言いたい。
アンジェリークのために幾つもの心配りをしてくれたことを。