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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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あの人へのHappy Birthday

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 ゼフェルがアンジェリークのところへ歩み寄る。
「アンジェ、明日なんの日か知ってるか」
「え……?えっと……」
 いきなりの展開にいまだ混乱したままのアンジェリークが口ごもる。
七月十二日、それはあの人の……。
「オッサンの誕生日」
「……うん」
「どうせ逢う約束とか、してねーんだろ?」
「うん……」
「逢いたいか?」
とても穏やかなゼフェルの声に、アンジェリークは少しだけ胸が痛む。
「え?……ええ、逢いたいわ……。でも」
戸惑っているアンジェリークの言葉を遮って、ゼフェルが言い切る。
「よし、決まりだな。今からおめーは誕生日の贈り物になるっつーワケだ」
ふわりとアンジェリークの体が浮いた。
「へっ!? えっ、ええええっ!?」
「思ったより軽いんだなー。あれだけ甘いモン食っててカロリーどこ行ってんだよ」
そのまますたすたと運ばれて、絨毯の上にそっと降ろされた。
「ルヴァへのサプライズだからこれに包まってもらうぜ。ちょっとの間我慢しろよ」
「ゼ、ゼフェル……?」
ふいに絨毯を持ち上げた手が止まり、ゼフェルの息がアンジェリークの額にかかった。
「……言い忘れ。今のおめーって、すっげー……可愛い」
 困ったような笑顔で額に一瞬口付けると、すぐにくるくるとアンジェリークを簀巻きにしていく。

「あー、ゼフェルずっるーい! ぼくもキスしちゃえばよかったなぁ。陛下、可愛かったもん!」
ずるい、の一言に苦笑しながらオリヴィエが囁く。
「マルセル。隣にバレたら一服盛られかねないから、ヤメときな」
「わたくしもそう思いますわ……」

「じゃー行ってくるぜ」
ゼフェルが女王入り絨毯をひょいと小脇に抱え、扉へと向かう。
「私も手伝おうか?」
オリヴィエが扉を開けてゼフェルのほうを振り返る。
「いんや、このぐらい大丈夫だ」
「そう。それじゃあ頑張っておいで。しっかし、あんたもドサクサでよくやるねー」
声を潜めて「あんまり問題起こすんじゃないよ」と釘を刺すオリヴィエ。
「……わーってるよ」
「ゼフェル、明朝〆の書類は全て期限に余裕があるものだと、お伝えしておいて下さる? それと明日は二人ともお休みです、と」
「おう、わかった」
 そして夢の守護聖の執務室を後にした。