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名前を呼んで

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「おやおや、卿か。その様子だと、余興とは言え、少しばかり派手であったかな。・・・だが、このくらいの方が面白い。いや、実に愉快」
言いながら刀を抜いたのは、松永久秀だった。甲斐より西を治める彼が、甲斐と奥州の間に位置する地を踏んでいた。ゆっくりではあるが一歩ずつ政宗に近づいていく。それを阻止すべく、幸村は足を前に出して距離を縮めようとした。しかし先ほどと同じような爆発を目の前で起こされたため、幸村には為す術もなく、彼を見ることしか出来なかった。ついに松永が政宗の横に立つと、刀で兜の顎紐を切る。さらに刀の峯で政宗の顎を持ち上げた。支えを失った兜が政宗の頭から落ち、風で髪がサラリと靡く。松永はまだ気を失ったままの彼を見て、まるで骨董品の品定めをしているかのようだ。その一部始終を見せられた幸村の眼がさらに鋭くなる。
「なにをそう熱くなっているのだね?・・・案ずる事は無い。私は彼の持つ龍の爪が欲しくてね。その為の人質になってもらうだけだ。あまり危害を加えるつもりは無い・・・」
そう言って久秀は刀を鞘に収めた。そして政宗に手を伸ばす。
作品名:名前を呼んで 作家名:ギリモン