名前を呼んで
「おや、目が覚めてしまったようだね、独眼竜。」
一度歩みを止め、視線を政宗に向けた松永が口を開いた。なにやら政宗の様子を興味深そうに眺めているようだ。
「なんだ、おっさん。またオレの爪でも奪いに来たのか?HA!残念だったな。今は小十郎に預けてる。・・・何が起きようがアンタの手には渡らねーよ」
睨みつける政宗。その鋭い視線に、なんら感情を見せない松永。いや、顔に表わしてはいないが楽しんでいる。彼の様子に政宗は眉を顰めた。そして明らかに怒気を含んだ声で松永に尋ねる。
「Ah?まだpartyは始まってすらいないんだぜ?なにがそんなに面白い」
これに対し、松永は口角を若干上げた。
「いや、失敬。卿があまりに魅力的なものでね。欲しいと思ったのだよ」
「な、なんと!」
反応を逸早く示したのは幸村だった。
「松永殿が斯様な場所で口説こうとするとは・・・は、破廉恥でござるっ!!」
「人の嗜好に対して口を出す旦那の方が破廉恥だと俺様は思うよ?」
大声で破廉恥とのたまう主に対して、目前の風魔への注意を逸らす事はしないが、佐助は突っ込みを入れた。
「佐助!某が破廉恥だと申すのか!」
「当たり前でしょ?破廉恥と言う旦那の方が・・・」
「馬鹿共がァ・・・」
松永の鋭い視線と共に与えられた一言で二人とも口を噤む。それを確認し、松永は視線を政宗に戻した。
「形あるものは朽ちるものだ。だが、それすらも美しい。・・・物も人も同じだとは思わないかね?」
言いながら松永は目を細めた。
「なるほどな。それでアンタはオレに興味がわいたってか。おもしれぇ。連れ帰れるもんならやってみな!」
立ち上がり、挑発するように腕を突き出す政宗。対する松永は、若干俯き、首を横に振った。
「いや、残念だ。私の城には龍を飼う籠が無いのでね。一度戻って新調するとしよう」
言うと、踵を返した。そして空を見上げる。
「風魔。少し運動をしてくるといい。ただし、殺めることは避けたまえ」
言い終えると、皆に背を向けたまま去っていく。
「待たれよ!某と手合わせ願・・・っ!」
走って松永を追いかける幸村。その目の前に風魔が立ちふさがる。