五人の力、一人の『武器』
「さてと!マロも来たことだし、そろそろバーレル火山に出発しよう。
意気揚々と僕が声を上げても、なんだかみんな浮かない顔をしていた。
あ、でもクッパはいつも通りだ。
姫。どうされました?
何か僕に頼みでも?
ええもちろん。
僕は姫の頼み事でしたら何でも聞きますよ!
本当は、僕は姫がこの冒険についてくるのは反対でした。
あなたが危険な目に遭うかもしれない、っていう理由だけじゃないですよ。
あなたが、戦いを目にするのが嫌だった。
敵と戦い、僕達も傷付くけど、僕達が相手を傷付けるのも戦いなんです。
姫はお優しい方だ。
僕達が傷付くこともそうですが、悪い奴とはいえ敵も傷付くのを見るのは嫌でしょう。
それを見て、あなたは悲しむんじゃないか、苦しむんじゃないかって。
姫、僕はあなたにそんな思いをしてまで来てほしいと思わなかった。
だけど…、
あなたはいつも笑顔だった。
戦闘で疲れた僕達に、いつも最高の安らぎをもたらしていたのは、姫のその笑顔だったのです。
だから僕は考えを変えた。
僕はあなたのその笑顔を守るために戦うんだ、って。
姫が悲しむような戦いはしない、戦いが終わっても姫が笑っていられるようにしよう。
…それって、ヒーローとして当然ですよね?
向こうが襲ってくるからと言って、僕達がそれを力でねじ伏せたら、僕も敵も何も変わらない。
僕達が戦うのは、奴らがいなくなってほしいからじゃない。
僕達は、戦うことのできない者達を守るために戦うんだって。
悔しいけど、姫と行動するようになるまで僕はそんなことにすら気付かないで戦っていたんだ。
それに気付けたことで、姫、僕はあなたと冒険することで何倍も強くなれましたよ。
自分の身一つ守るより、仲間を活かす戦い方や戦況をよく見て時には撤退したりすることはすごく難しいです。
その分、それができるようになると腕力とかジャンプ力とは全然違う強さが上がるんですよ、ホントに。
だから姫は、僕にとって最強の
『武器』なんですよ!
…って言ったら怒りますか?
あははは!すみませんって。
やっと、笑顔になれましたね、姫。
これからもその笑顔で僕達を支えていてください。
僕は絶対負けませんから!
なんだよクッパ!
さっきから僕と姫の会話に水を差さないでくれよ!
シキカンか何だか知らないけど、とりあえず気に入らないからってワケのわからない理由で命令するのはやめろ!
僕はこれでもお前のことも考えてるんだぞ!
モンスタウンで昔のブカを許す姿を見て、普段は敵だけど良い奴なんだなって思ったし。
だから僕は大魔王に恥じない戦い方を考えるようにもなった。
まあ僕が口で言ってもお前は聞かないだろうから、お前が『こうするだろう』と思って僕が動いてたんだけどね。
気付かなかった、って…それだけお前は戦いになると自分のことしか考えてないってことなの!
僕はお前に実力があることは認めてるし、戦い方も力のあるお前だからこそできることだと思ってる。
だからお前の戦闘スタイルについては何も言わない、僕達も優位に立ち回れそうな戦術を考えるから。
戦ってる間はやるかやられるかの瀬戸際なんだから、余計な口出しして味方同士が争い始めちゃそれこそ命取りだし。
それに武器達と戦った時のお前の力はすごかった。
その純粋なお前の強さを僕がとやかく言うのは逆効果だろうからね。
どうせ城を取り返すまでの仲だろうけど、僕はクッパ、お前も仲間として、重要な戦力として大切にしてるからな。
作品名:五人の力、一人の『武器』 作家名:KeI