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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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神の真意を汲む化石

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太陽の雫



 再び石の保管室へと引き返し、今度はコランダムを幾つか探し出す。

 以前舞踏会の話をしたときに、あまりアクセサリー類を持ってきていないと聞いた。
 カテドラルのような大きなものは受け取ってくれなかったが、装飾品として身につけられるものならばと思ったのだ。

 コランダムはアルミニウムの酸化鉱物で、資料として取り寄せた鉱石が幾つも手元にある。
 クロムを含んで深みのある赤であればルビー、鉄を含んだ青色であればサファイヤだ。資源に乏しい星々ではわざわざ合成までされているが、この手元にあるのは全宇宙から選りすぐりの原石だ。美しく加工された宝石にさしたる興味はなかったものの、これらも研磨加工すればそれなりに美しい裸石になるだろう。鉱石の中ではルビーとサファイヤ以外全てコランダムとしか呼ばれないものの中にも、宝石となれば価値のあるものも多い。

 そこまで考えて、ふと手が止まった。

(仮に装飾品を贈ったとして、果たして受け取ってくれるんでしょうか……)

 興味がある様子だったカテドラル水晶ですら受け取らないのだ。
 まして恋人として付き合っているわけでもなし、単に守護聖と女王候補という間柄でしかない。
 しかも自分と彼女の年齢差を考えると、下手なものを贈って何かいかがわしい魂胆があるとでも思われては困る。

そう……困るのだ。
アンジェリークといるのがとても楽しくて、試験が終わればこの時間も無くしてしまうけれど、今だけは。
(どうしてだかあなたには嫌われたくないんですよ、アンジェリーク……)

 目の前に並べたコランダム類を元に戻し、気を取り直して単結晶を幾つか取り出した。
(あのコレクションの中で一番多かったのは水晶。宝石としては正直今ひとつ、ですが)
 水晶などは巷ではパワーストーンと呼ばれて色々な意味があり、その辞典も確か書架にあったはずだ。
 かなり昔に入手していたものの、あまり食指が動かなかったのでさらっとしか読んでいなかった。
 早速書架からその辞典を探し、その場でぱらぱらと読み進めた。
 彼女のコレクションにあった石の意味を片っ端から調べていく。アンジェリークが気に入って集めたものと同じ石なら、贈っても恐らく受け取ってくれる気がする。

 そして今日、水晶を陶然と見つめていたアンジェリークの顔を思い出し、何とはなしにシトリンの頁を開いた。
 意味を読み進むうち、ルヴァの口角がゆるゆると上がっていった。
「……なるほど、そういうことでしたか……それなら丁度いいですねぇ」

 本を閉じて書架に戻し、再び石の保管室へと向かった。

作品名:神の真意を汲む化石 作家名:しょうきち