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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL26

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 追撃しようとするジャスミンとは対称的に、シンは冷静にデュラハンを観察していた。
 いくらさっきの攻撃が、デュラハンに効果があったとしても、シンは違和感を感じずにいられなかった。
 デュラハンは弱点を突かれ、致死量に近いダメージを負ったというのに、何かを探っている。その何かというのが、ジャスミンの事だと分かるのに時間はかからなかった。
「やああああ!」
 ジャスミンは、デュラハンの鎧を熔かしつつ、本体にも攻撃できるように突撃していく。
 その時、デュラハンが小さな笑い声を上げたのをシンは聞き逃さなかった。
「まずい、ジャスミン、下がるんだ!」
「……えっ?」
 シンに叫ばれ、足を止めるジャスミンであったが、引き留めるのが僅かに遅かった。
「フハハ! 一足遅かったな!」
「うぐ、これは……!?」
 ジャスミンは目に見えない何かに動きを縛られてしまう。
「貴様を糧とさせてもらうぞ……」
 デュラハンは剣を横に倒し、刀身から不気味な光を放った。
「魔の接触、『トゥルー・コライド』!」
 ジャスミンを縛り付ける何かが光に反応すると、光球に変化し、デュラハンの所へ飛んでいく。
「あああっ……!」
 ジャスミンは一声喘ぐと、その場に崩れ落ちた。
「ジャスミン!」
 ガルシアは急いで駆け寄り、ジャスミンの様子を窺った。
「大丈夫か、どこか痛むところは?」
「……それはないわ。けど、体に力が……」
 ジャスミンはとてつもない脱力感に襲われていた。目立った傷こそ無かったが、立ち上がるのも辛い様子であった。
「おのれ、デュラハン!」
 ガルシアがデュラハンを睨むと、すぐに驚きに支配された。
 デュラハンの体が急激に再生していたのだ。体とは別のはずである鎧までも、もとに戻っている。
「魂の一閃……」
 空間に大きな鎌が出現すると、デュラハンの影が具現化してそれを掴む。
『デスチャージ!』
「うおっ!?」
 死神の鎌に、その身を断ち切られたのはジェラルドである。
 胸元を一閃され、傷口から血を噴き上げてジェラルドは倒れる。
「あれは!? まずいぞ、早く回復を!」
「させぬ、悪霊の叫び、『スクリーム』!」
 デュラハンは悪霊を放った。
 悪霊は、回復に当たろうとしていたピカードに取り憑いた。
「うあああ!」
「うっ、うう……!」
 悪霊は更に、イワンにも取り憑いた。
 ピカードとイワンは、耳の奥へと響く悪霊の甲高い叫び声に襲われ、精神的ダメージを受けてエナジーが発動できなくなってしまった。
「死霊の誘い、『デスフォーチュン』!」
 更にデュラハンは、時間差で死をもたらすナイフを放った。
「そんなものっ!」
 シンはナイフを弾き返した。
「だめだ、そいつは相手を追尾するぞ!」
 技の性質の分かるガルシアは叫ぶが、遅かった。
「ぐっ! くそ……!」
 シンは肩に刺さったナイフを叩き落とす。しかし、ナイフの効果は既に出現しており、シンの胸元に灯火が点いた。
 この灯火が消える時、その瞬間死霊の呼び声に連れていかれてしまう。解除するには術者を討つしかない。
「くそ、何故……」
 ガルシアは周囲の、倒れてしまった仲間を見る。
 皆一様に外傷を与えない、直に体力を奪う、精神に作用する、という特殊なダメージで倒れている。そしてそれらのうちいくつかは、ガルシアにも使うことができ、そのためダメージの正体がわかっていた。
「デュラハン、何故貴様に黒魔術が使える!?」
 デュラハンが使用したもの、それは黒魔術に他なかった。
「ふふふ……フハハハハ……!」
 デュラハンはガルシアの問いに答えることなく笑う。
「フハハ! 知りたいか小僧!? ならば教えてやろう。このデュラハンこそが黒魔術の創造者だからよ!」
 デュラハンは『デスフォーチュン』を発動し、死霊の目印であるナイフをガルシアに放った。
『デス・バインド!』
 ガルシアは空中にナイフを停止させ、念動力でナイフを叩き落とした。
 落ちたナイフは霧散していく。
「お前が創造者だと、バカな!? この魔導書ネクロノミコンは、ガンボマという神が創ったはずだ!」
「ふん、ガンボマ、か……。まさかここでその名を聞かされることになろうとはな……」
 デュラハンの口振りからすると、ガンボマ神の事を知っているようだった。
「ふっ、もののついでだ、もうひとつ教えてやる。ガンボマは我が魔術によってこの我を滅ぼそうとしたのだ」
「ガンボマが……?」
 ガンボマ神は、天界において異端な神の一柱であった。
 デュラハンによる天界侵攻の際、ガンボマは他の神々とは違い、呪術の類いによってデュラハンを討つ手段を講じた。
 それは暗黒の力に限りなく近いもので、ガンボマは呪詛に手を染めたとして、他の神々から糾弾を受けることになってしまった。
 ガンボマの狙いは、目には目を、歯には歯を、毒を以て毒を制すという危険なものであった。
 デュラハンの使用する呪法を模倣することにより、どうにかデュラハンを滅ぼせるだけの力が得られないかと模索したのだ。
 そうして得られた力が降霊術、ネクロマンシーであり、地獄に棲む存在を召喚するものだった。
 その後ガンボマは、邪神として天界を追われる身となり、降り立ったのはウェイアードのゴンドワナ大陸に位置するキボンボ村だった。
 ガンボマは邪神となった後、二度と天界へと戻れない身になっても、天界をデュラハンの危機から救うためにネクロマンシーの修練を積み、その得た力を魔導書ネクロノミコンに封じたのだった。
「かくも愉快な話とは思わんか? 天界を救うためとはいえ、我ら魔族の術に手を染めたがために堕天した神とは。奴の献身さにはこのデュラハンも恐れ入る。しかし、悲しいかな、奴のしたことは我ら魔族の真似事、そんなものが魔族の長たる我に通じると思ったのか?」
 ガンボマの狙いは最終的に、デュラハンをも超えるほどの存在を使役することだった。そしてついにそれは叶わなかった。
 しかし、デュラハンの弱点の一つである炎を扱う術を編み出せたことが唯一の救いであった。
「デュラハン、俺は貴様を、何としても倒さねばならなくなった……」
 天界を追われ、落ち延びたウェイアードの地にて生まれ故郷、天界を救わんと黒魔術の研究を重ねたガンボマ神。
 そして、ガンボマの編み出した黒魔術を得んがため、邪教徒と謗られながらも儀式を執り行い、ガンボマに認められようと努力を重ねたアカフブ。
 そして何より、デュラハンの手によって命を落とした親友、ロビンの為にも、ガルシアに敗北する道理はなかった。
「クロスアウト」
 ガルシアはタナトスとの融合を解除する。そしてあの男を召喚した。
「サモン、カロン!」
 魔導書の挿し絵が実体となり、緋色の衣を幾重にも纏い、両手が鳥の羽根が白骨化したようなもので、獣のような頭蓋骨を持つ異形の存在が姿を現した。
「ひゃひゃひゃ、わしの出番じゃのう?」
 カロンは嗄れた声で笑う。
「ほう、カロンよ。貴様人間に与し、我に牙を剥けようというのか?」
「ふん、主がいる限り、わしにはどの世界にいたところで居場所がないのでの。ならば主を倒せるやもしれぬ人間に付いていく方がよいわい!」