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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL26

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 最早無謀に近い策であった。しかし、仲間達は倒れ、まともに動けるのはガルシアとシンだけであり、これ以上手を子招いていてはやられるのは明白であった。
 無謀な策であっても、弱点を突かなければデュラハンは倒せない。ガルシアは自らの考えを遂行するしかなかった。
「はあああ……!」
 ガルシアは我が身に宿るエナジーを一点に集め、カロンの力を使うべくエナジーを魔力へと転換する。
 そして全てが充実した瞬間、ガルシアは解き放った。
「冥府の業風、『カース・サイクロン』!」
 ガルシアは、呪詛によって全てを生滅させる漆黒の旋風を打ち出した。風のエレメンタルに属するこの術は、デュラハンの苦手とする属性であり、さすがのデュラハンといえども無事で済んでいられるはずがなかった。
「どうだデュラハン、これを受けきれるか!?」
 しかしデュラハンは、苦手とするはずの風のエレメンタルの魔術を前にしても微動だにしなかった。
「ふふふ……ははは……!」
 それどころか、不敵な笑い声さえも上げる。
「っ!? 何を笑って……!?」
 ガルシアは戸惑わずにいられなかった。
「元素充填、『チャージ・エレメント』!」
 デュラハンは、自らの周囲に流れる四大元素を自らを中心にかき集めた。そしてそれらの元素は魔力となり、黒魔術を発動させるだけの力へと変化する。
 そしてガルシアはデュラハンに驚愕させられることとなる。
「冥府の業風、『カース・サイクロン』!」
「なっ、何っ!?」
 デュラハンの発動した魔術、それは黒魔術とカロンという死神の力の融合が成った時に発動できる、最大級の魔術であった。
 漆黒の竜巻という姿は全く同じであるが、竜巻の回転の向きだけがガルシアのものと違っている。
 しかし実際には、違っているのは風の向きだけではなかった。
「ぐっ、押され、て……!?」
 デュラハンの持つ魔力が非常に大きく、放った竜巻の威力も段違いである。このままでは圧し負け、ガルシアの仲間達が消滅させられる危険があった。
「ぐうう……! シン!」
 ガルシアは苦し紛れにシンを呼ぶ。そして返事を待つことなく願いを言う。
「ここから下がれ、皆もできるだけ下げてくれ……! この竜巻には耐えきれん……!」
「そんな、ガルシア、お前はどうするんだよ!?」
「俺には呪詛に耐性がある、まともに食らっても消滅まではしないはず……!」
 話している間にも、デュラハンの竜巻はガルシアを圧倒する。
「けど……!」
「早くしろ! もう俺は長くはもたん、この呪詛を生身で受けたら生きていられんぞ……!?」
「くっ……すまん、ガルシア!」
 シンはガルシアのまさに必死な説得に応じ、その場から後退りした。
「フハハ! 一匹たりとも逃すものか、この空間にいる全ての人間全て消し去ってくれるわ!」
 デュラハンは更に魔力を増幅した。巨大な呪詛の竜巻は更に勢力を持ち、ガルシアの魔術を押しきらんとしていた。
「くっ……! もう、だめだ……!」
 ガルシアの魔力はとうとう尽きてしまった。その瞬間、ガルシアの魔術はデュラハンの力によって押し潰されてしまった。
 巨大な漆黒なる竜巻がガルシアに向かってくる。ガルシアはそれに飲み込まれるしかなかった。
「ガルシアー!」
 シンの叫びが辺りに響き渡る。そして呪詛の竜巻がガルシアを包み込んでいった。
 いくらガルシアに呪詛に対する耐性があるといっても、これほどまでに強い呪詛の力を受けては、さすがのガルシアも無事ではいられないと思われた。
 デュラハンによる、呪詛の竜巻は次第に収まっていく。
 風が巻き上げた土埃に遮られた視界も、だんだんと明らかになっていった。
 その先に見えるものは、三つの人影であった。一つはデュラハンのものとすぐに分かる。
 そしてその残り二つとは。
「ガルシア……?」
 シンは眼を凝らしながらガルシアの姿を確認する。
 ガルシアは無事であった。しかし、最大のエナジーを消費したためか、黒魔術の融合も解けてしまい、体力も相当奪われているようだった。
「よかった、ガルシアは無事……」
 しかし、状況は全く安心できるものではなかった。
 三つ目の影、それは緋色の衣を纏い、白骨化した鳥の頭のような頭蓋を持ち、翼の骨のように伸びた爪をした異形の存在、カロンであった。
「……カロン、何故勝手に融合を……もう一度融合だ……」
「主ガルシアよ、主にはもうエナジーがない。それは即ち、黒魔術のための魔力も作れぬことを意味する。じゃから融合が解けてしまったのじゃ」
 ガルシアは息も絶え絶えで、とてもこれ以上融合を続ける事などできるはずがなかった。
「それに、主が今五体満足でいられるのは、わしがデュラハンの呪詛を打ち消したからじゃ。いくら主といえども、あれを受けていたら生きているはずがない」
 ガルシアはカロンのお陰で生きながらえる事ができたのだった。
「ふん、カロンよ、今更おめおめと我の前によく現れることができたものだな。命乞いでもするつもりか?」
「ひゃひゃ! 冗談じゃないわ、主に命乞いするくらいなら、自ら消滅を選ぶわい!」
 カロンはデュラハンの脅しを嘲笑う。
「ほう、言うではないか、気に入ったぞ。カロン、今我の下に戻れば、貴様の裏切りを帳消しにし、再び配下としてやらぬこともないぞ?」
 カロンはやはり、デュラハンの言葉には乗らない。
「黙れ、主の声などもう一時たりとも聞きたくない。さっさとその剣でわしを斬れ!」
 カロンが叫ぶと、デュラハンは一つ間を置き、ついに切っ先をカロンに向けた。
「残念だな、貴様の魔力は相当高い、もっと貴様の魔術を得たかったのだがな……」
 不意に、シャン、と鉄の擦れる音がした。
「ぬう? ほほう、貴様の下げているそれは飾りではなかったのか」
 ガルシアは聖剣、エクスカリバーを手にしていた。
 黒魔術を主とするようになったガルシアには、あまり剣を扱う機会は無くなっていたが、ロビンがソルブレードを手に入れた時に、彼から返却されていた。
 しかし、エクスカリバーの持つ聖なる力が黒魔術と相性が非常に悪く、剣を抜き放った時は黒魔術の類が一切使えなくなる制約がつくようになっていた。
 エナジーも黒魔術も使えなくなった今、頼りになるのはこの聖剣だけであった。
「これは、伝説の金属、オリハルコンより造られし聖剣、エクスカリバーだ。この剣の持つ聖なる力によりて貴様を浄化する!」
 ガルシアは剣先をデュラハンに向け、剣をしっかりと構える。
 デュラハンはその姿を嘲笑う。
「フハハハ……! そこまで魔の力に頼りきった身で、そのような聖剣を本気で扱えると思っておるのか? お笑いだ!」
 デュラハンの言うことは確かであった。
 エクスカリバーから感じ取れる聖なる力は、黒魔術を駆使するガルシアには痛いように感じられた。剣に秘められた力を全て発揮すれば、大きな反動が返ってくるであろう事は想像に難くない。
 更に悪いことに、ガルシアはこれまでの戦いでかなり消耗している。まともに剣を振れるのかさえも怪しい。
 それでも今はもう、この剣に頼るしかデュラハンに抗う術はない。