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或る兄妹の肖像 prelude+落書き

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落書きその1(十代独白)


 たった一人の家族。優しくて、控えめで、少し抜けた所がある、可愛い双子の妹。小さい頃からずっと、二人きりで過ごしてきた。
 彼女の事を大切に想っていたし、彼女も自分を慕ってくれた。彼女の笑顔を見るのが、何より幸せだった。幸せなはず、だった。
 いつからか、彼女が他の人間に笑いかける度、声をかける度、胸が苦しくなった。視線を他所に向ける事すら、辛いと感じた。
 彼女の綺麗な金色の瞳に自分が映っているのを見る時だけ、少し心が安らいだ。次の瞬間に彼女が視線を逸らせば、息が止まる程の苦しみを感じた。
 ただ、それだけなら平気だったかもしれない。何より辛かったのは、彼女を厭わしく思ってしまう事だった。他人の話をする彼女を受け入れられなくて、差し伸べられた手を思わず払ってしまい、悲しそうな表情に自分を責めた。
 誰よりも大切で傷つけたくない人を、傷つけてしまうかもしれないという恐怖にいつも怯えていた。彼女の為に気が狂いそうになりながら、彼女の為に正気を保っていた。
 地獄のような日々の最中、ふと思い付いた。彼女を閉じ込めてしまえばいいのではないか。自分以外の誰も彼女の世界にいなければ、この苦しい気持ちはなくなるのではないか。
 それがたとえ彼女を困らせてしまうとしても、一度浮かんだ考えは呪いのように消えなかった。

 昔みたいに彼女と二人で笑い合いたいと、ただそれだけが望みだったのに。