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同調率99%の少女(7) - 鎮守府Aの物語

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 那美恵は思考を切り替えてある考えを提督と明石に打ち明けることにした。座りながら前のめりになり、テーブルに手をついて提督たちを上目遣いで見るような体勢になる。
「言われちゃったもんはしょうがないや。今回は提督の顔を立ててあげる。今後どこかでまた大本営にきちんと交渉してもらうとして、今さっき思いついたことがあるの。明石さんも聞いてください。いーい?」
「え?あーはい。なんですか?」黙っていた明石は一言返事をする。

「まずこれから配備される予定の艤装は何があるの?それ教えて?」
 提督は後ろにいた妙高と隣にいた明石と顔を見合わせる。しかし妙高はわからないので頭を横に軽く振る。明石は直近では確か神通が……とだけ言い、それ以上は自分まで情報が降りてきていないのでわからないとつぶやいた。その辺りの情報は正規の秘書艦たる五月雨に管理を任せているためだ。その資料にあたるものがどこにあるのか五月雨以外は誰も知らない。
 しかたなく提督は五月雨を呼び出す。ほどなくして五月雨が執務室に入ってきて、秘書艦席からある資料を取り出して提督に渡した。

「ゴメンなさい。そういうお話になるとは知らなくて、この資料わかりづらい場所にしまってました。」
「いやいい。大丈夫。」
 五月雨を優しくフォローした提督は彼女から手渡された資料を確認し、そしてそれを那美恵に伝えた。
「1週間後に軽巡洋艦神通、その後同じく軽巡洋艦長良、名取。未定となっているが夏までに駆逐艦黒潮、重巡洋艦高雄。直近ではその5機が配備される予定だ。今うちにある誰も担当していないストックの艤装が川内だけ。だから直近では川内と神通がうちに配備されるぞ。あくまで予定であって、時間的な話は多少ずれるかもしれないけどな。」

「あとは神通かぁ……。」
 それを聞いた那珂は小声でひとりごとを言い、その後思いついたことの続きを語り始める。
「率直に言うとね、川内と神通の艤装、あたしにちょーだい。」

「へっ!?」
「えっ!?」
 提督と明石はほぼ同時におかしな声をあげた。そして提督は反論する。
「な、何言ってるんだ!?光主さんには那珂の艤装があるだろ!」

「うん。けどあたしは川内にも合格しているんだから、川内になってもいいでしょ? あたしさ、実は最初に艦娘の試験受けに来た時に、同調のチェックで川内の艤装に91%で合格していたんだ。」
 最後の説明は三千花に対しての言だ。
「え?そうだったの? じゃあなみえは川内でもあるんだ?」
 三千花が率直に尋ねると那美恵は頭を振ってそれに答える。
「ううん。あたしはあくまでも艦娘那珂だよ。試験の時あたしはその後那珂の艤装と同調のチェックしてもっと高い数値で合格したからそっちを選んだの。」

「そうか。川内の艤装とも同調で良い数値出してたのか。那珂の同調の数値に注目しすぎてすっかり忘れてた。というか一人で複数の艤装に合格するのってありえるのか?」
 提督は明石の方を向いて彼女に質問する。明石は片頬に手を当てて悩むポーズをしつつ答える。
「えぇと。ありえないことではないと思いますけど、多分まれです。」
 そう一言言った後に続けた明石のは説明を続けた。

 艤装にインプットされる艦の情報は膨大なものである。人格を有することができるほどに高密度な情報がインプットされたメモリーとそれを処理する基盤が搭載された艤装とフィーリングが合い同調できた場合、姉妹艦であったりその艦と深く関わりのある別の艦の情報がインプットされた艤装でもフィーリングが合う可能性は少なからずありうる。
 ただ一般的には一つの艤装で同調して合格したら、その艤装装着者=艦娘として採用されて試験は終了する。そのためそれ以上別の艤装でチェックされることは、本人がはっきりと望んで言い出すかその他特別な条件下でないかぎりは行われない。
 とはいえほとんどの受験者は、用意された艤装の同調すべてに不合格となるのが常であるため、1つに合格するというスタート地点に立てない。そもそもの可能性がない。
 受験時、川内の艤装で合格した後に那珂の艤装をも願った那美恵は最終的に両方で同調できたので、まれだと判断されるのである。


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「百歩譲って川内はいいとしても、神通はまだうちに正式配備されていない。だからくれと言われても……。」
 提督は尻窄みの言葉になりながらも反論し続ける。那美恵は現状を踏まえて、妥協案を提示した。
「ま、神通の艤装はまだ可能性の域出ないから半分冗談として、川内は欲しいな。そのあたりの法律だったり規約はないから判断できない?」

 判断に困ってうつむきがちな提督の代わりに明石が答え始める。
「えぇとですね。艤装の装着者と艤装の担当に関することは別に法律じゃなくて、あくまで制度内で定められる運用です。各鎮守府に向けて推奨される運用であって、厳密に制限されていることはなかったはずなんです。だから鎮守府で独自運用したとしても、大本営は大目に見てくれると思うんです。」

 希望的観測で明石は言うが、最後に付け足した。
「……私今なんの資料もなくものすごく勝手なこと言ってますから、あまり真に受けないでいただきたいですけど。ただ技術者側から見たら、那美恵ちゃんみたいな例はどんと来いって感じですね。むしろ那美恵ちゃんをあれやこれやいじったり解剖したり調査したいくらいですよ〜。」
 付け足しがやや危ない方向に行きつつあったので、最後の方のセリフについては提督たちはあえて無視しておいた。明石は提督らの反応に気づいたのか、顔のニヤケをやめて続きを語る。
「……コホン。提督、推奨されているというだけの以上は、うち独自の運用を適用してもいいと思うんです。今さっき言いましたけど、那美恵ちゃんみたいな一人で複数の艤装と同調できる例は冗談抜きで、私達艤装開発・メンテする立場としては、嬉しい存在なんです。」
 明石は技術者的な面で、那美恵の今回の提案を認めて欲しいと暗にほのめかした。