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電撃FCI The episode of SEGA

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 電神と絶無の戦いの後に残ったこの世界には、戦いにおいて確固たるルールがあった。
 戦いは決して殺し合いに発展することはなく、戦闘者は大怪我を負うような事もない。
 生命力のバロメーターのようなものが存在し、それが尽きると気絶するようになっていた。どちらかが気絶するとそれ以上の攻撃ができなくなり、そのため死傷者が出ることがないのである。
 更に戦いの時、不思議な力が発動する。
 攻撃力を一時的に少し上昇させるパワーアップブラスト。
 不利な状況下に置かれた時、離脱に用いるエスケープブラスト。
 そして単純に敵を打ち上げ、そこへ追撃を加えるコンボブラストという、三種類の特殊な力が戦闘中に使える。
 そして攻撃を当てる、受ける、パワーアップブラストを発動すると上昇する、活力のバロメーターを示すゲージが存在する。
 これらの不思議な力は、戦いになった時にだけ出現するものだった。
 それから極めつけが、サポートキャラクターという、文字通り戦いをサポートしてくれる者である。
 彼らは電神により召喚された存在ではあるが、黒子らと違い、戦い以外では存在できない者たちであった。
 本来ならば彼らも、電神が呼んだ絶無に対抗すべき者だったが、電神の力があまりにも衰えていたために不完全な形での召喚となってしまったのだ。
 そんなサポートキャラクターは数多くいるが、どのキャラクターでも自由に選択することができる。
 しかし、黒子もソニックも、これと決めたサポートキャラクターがいた。
「行きますわよ、初春!」
 黒子の隣に、存在が不安定なため半透明の少女が出現した。
 背丈は黒子とさほど変わらず、セーラー服を身に着け、膝下丈の、黒子と比べるとだいぶ長いスカートを穿き、黒子と同様に風紀委員(ジャッジメント)の腕章を付けている。
 何より彼女を特徴づけていたのは、頭の半分を覆い尽くすほどの花飾りである。さながら、頭に花園でもあるかのようである。
「私だって風紀委員(ジャッジメント)の端くれです。どーんと任せてください!」
 黒子のサポートキャラクター、初春飾利(ういはるかざり)は自信満々に胸を張る。
「へへっ、そいつがクロコのサポートか? よし、だったらオレは……!」
 ソニックもサポートキャラクターを呼び出す。
「Come on,シャドウ!」
「ふん……」
 ソニックの傍らに現れたのは、黒い体色をしたソニックと瓜二つのものであった。
 両手首に金色の環を装着し、ソニックのように頭の天辺に耳があり、特徴的な針はソニックに比べると少し尖りぎみである。
 漆黒に赤の組み合わせの体毛は、いかにもダークな雰囲気を醸し出しており、まさにその名の示す通り、ソニックの影のようであった。
「僕の名はシャドウ、シャドウ・ザ・ヘッジホッグだ。究極の力、見せてやろう……」
 シャドウは静かに言い放った。
「さあて、お互いサポートも決まったことだし、始めようぜクロコ!」
「もちろんですの、全力で行きますわよ!」
 黒子とソニックのイグニッションデュエルが始まった。
 黒子はホルスターから鉄の針を抜き取り、ソニックのいる位置を演算する。
 黒子の能力は、座標さえしっかりと特定できれば相手の体内へも針を飛ばすことができ、心臓を一突きして即死させることもできる。
 しかし、この世界ではそのようなことをしても死に至る事はなく、あくまでダメージとして敵に蓄積される。
 逆に言えば、体内を狙った攻撃をしたとしてもソニックが死ぬようなことはない。そのため黒子は遠慮なく針を放つことができた。
「差し上げますわ!」
 針はソニックに当たった。しかし攻撃は弾かれてしまった。
「突っ込むぜ!」
 ソニックは丸くなりながら、背中の針をいからせて黒子へと突進していた。
「バカなっ!?」
 能力を使用した直後であり、その上ソニックの動きは速く、ガードが間に合わなかった。
 岩も、鉄をも貫くソニックのスピンダッシュをまともにくらい、黒子は大きく吹き飛ばされた。本来の物理法則であれば、黒子の体は千切れているはずだった。
 しかし、この世界では物理法則は無視され、その代わりにぶつかっただけのダメージとして変換される。
 ファーストタッチはソニックが取ったが、黒子はうまく受け身を取ってダウンを回避する。
「へへっ、牽制のつもりだったようだが、残念だったな! オレには見えてるぜ!」
「そのようですわね。ですが、まだ勝負は始まったばかり、次は見切れない速さで撃ち込んで差し上げますわ!」
「へんっ! 期待してるぜ!」
 ソニックは高くジャンプしながら黒子へと攻めかかった。
 しめた、とばかりに黒子も跳躍し、自由の効かない空中での迎撃を試みた。
「たあっ!」
 黒子はあびせ蹴りを放つ。
「そう来ると思ったぜ!」
 ソニックは空中で更にジャンプし、黒子の攻撃を回避した。
 この世界特有の物理法則として、空中で更にジャンプができる方法があった。
 空を飛ぶような事まではさすがにできないものの、誰もができる行動であった。
「行くぜ、はっ!」
 二人はやがて地に下り立ち、今度はソニックが飛び蹴りをした。
 ソニックは前方に向けてジャンプし、更に空中を駆けて攻撃した。
 これはソニックのように、身軽な者だけができる、空中ダッシュであった。
「読めてますわ!」
 黒子はソニックの、空中ダッシュからの攻撃をガードした。そして着地後の僅かな隙を見逃さず、ソニックに触れて彼を空間移動(テレポート)させた。
「What!?」
「どこへいきますの!?」
 黒子は半ば挑発的に言い放ち、あらぬ場所に頭と足をひっくり返され飛ばされるソニックを蹴った。
 黒子の投げ技が決まった瞬間だった。投げられてしまっては、ダウンは免れない。
「逃がしませんの!」
 戦いにおいて最も隙のできるダウンの直後を見逃すことなく、黒子はソニックへと迫る。
「慌てるな……!」
 ソニックは自らに言い聞かせるように言いながら立ち上がる。
「Go,シャドウ!」
 行動が可能になると、ソニックはサポートキャラクターを呼び出した。
「カオスコントロール!」
 ソニックのサポート、シャドウはカオスエメラルドを手にし、時空操作能力を発動した。
 瞬間的に強い光が輝き、光を受けた黒子は動きの速度を半分以下にされてしまった。
「よし!」
 動きの自由を奪われた黒子に、ソニックは連続攻撃を仕掛けた。
 軽めの攻撃から強い攻撃へと続くコンビネーションを決め、黒子からダメージを奪う。
「てやっ! 行くぜ、Power up blast!」
 ソニックはコンビネーションを途中でキャンセルし、パワーアップブラストを
発動した。
 強力な攻撃技、EXスキルを使うためのゲージを貯めつつ、攻撃力を上げ、更に体力を少し回復していく。
 このラウンドの流れは、完全にソニックに向いていた。
「……やりますわね」
 黒子の体力のバロメーターは、半分を切っていた。
「こうなれば、こちらもパワーアップですの!」
 黒子もパワーアップブラストを発動する。ゲージは十分に貯まっていたが、少しでも体力を回復させようというつもりだった。
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 作家名:綾田宗