電撃FCI The episode of SEGA
ソニックはゲージを使い、自身の最大の攻撃技であり、二つあるクライマックスアーツの内一つを発動する。
ソニックの突撃が当たると、ソニックは青い閃光となって黒子を中心に縦横無尽に飛び交った。
「ソニック・オーバードライブ!」
超音速の体当たりによる連続攻撃が、黒子に襲いかかった。
縦横無尽、文字通り閃光となったソニックの最後の一撃を受け、黒子は地に伏した。
「ぐっ……!」
これほどの攻撃を受けながら、黒子にはまだ立ち上がる気力が残っていた。
「浅かったようだな」
ソニックはこう口にしながらも、これで倒しきれるとは思っていなかった。目的は別にあったからである。
この世界に召喚された者は皆、クライマックスアーツを二つ持っており、一つはその名の通り対戦相手を倒して戦いを終わらせるダメージを与えられるものであり、もう一つの方は威力の代わりに特別な効果があった。
それは、イグニッションほどではないが、ブラストを回復させ、更に回復速度を上げる効果である。
どちらかが戦える限り、デュエルは常に分からないことばかりであり、それ故にソニックはブラストを回復する事を優先したのだ。
ソニックがこのような思考を凝らしている間に、黒子は立ち上がった。体力のバロメーターも三分の一といったほどで、一つコンビネーションを決められれば倒れるのは目に見えている。
しかし、黒子は諦めてはいなかった。そんな諦めない気持ちが、黒子に力を与える。
「大したことありませんわっ!」
黒子が叫んだ瞬間、黒子の体から真っ赤なオーラが立ち始めた。それはまるで、燃え盛る炎のようであり、黒子の闘志を表すようなものだった。
体力が尽きかけ、敗北が目の前に迫ろうとも、そのような状況をも覆すポテンシャルが発動したのだ。
「ポテンシャル、か……。へっ、やっぱり勝負はまだまだ分からないな!」
このように炎を身に纏うかのような発現のしかたをするため、このポテンシャルは通称として赤ポテンシャルとも呼ばれていた。
これは、発動した瞬間に攻撃力が大幅に上がるという単純なポテンシャルであるが、その上昇量は追い詰められていればいるほどに大きくなる、まさに逆転の手段にふさわしいポテンシャルであった。
見た目にも目付きが鋭くなり、黒子の負けたくない気持ちが表れているようだった。
「少々……手荒い事をしなければなりませんわね……」
そう言うと黒子は空間移動(テレポート)する。それは連続的なもので、二人が戦う場所の脇に立ち並ぶトーテムポールを伴って移動している。
――なんだ? クロコのやつ、何を企んでいるんだ……――
黒子の突然の行動に、ソニックは全く手出しできずにいた。
やがて、黒子の能力により、近くにあるトーテムポールは全てどこかに移動された。そして次の瞬間、黒子はソニックの前に出現し、ソニックの腕を取る。
「ご招待いたしますわ!」
「うわっ!?」
黒子はソニックを連れて空間移動(テレポート)した。その行き先は、大きくループしたコースの上である。
コースの上は、両端に隙間なくトーテムポールが並べられている。先程黒子が飛ばしたものに違いなかった。
「……一体何の真似だ?」
「先程申し上げた通りですの。ソニック、貴方を倒すため、少々手荒い手段を使わせていただきますわ」
説明されても、ソニックはまだ黒子の意図が理解できなかった。
しかし、何かとてつもない企みがあるであろう事だけは本能的に分かる。
不意に、黒子は自らの体に触れ、衣服の中のものを能力で出現させた。
「What's that!? なんだそいつは!?」
ソニックはこれ以上ないほど驚いた。
黒子が持ち出したもの、それは一体どこにしまっていたのか、黒子の背丈をも超えるほど長いホルスターであった。
「本気を出させてもらいますわ!」
黒子はソニックの立つ位置の座標を瞬時に演算し、長いホルスターに手を這わせた。
長いホルスターには、黒子の足に巻き付けられているものと同じ鉄の針が何十本も収納されており、それらを空間移動(テレポート)させることでソニックに連射した。
「うおおっ!」
一瞬にして何十本もの針がソニックを襲い、ソニックはなすすべなく射たれるしかなかった。
自らの背丈も超えるホルスターに収納された針を全て射つと、そのまま黒子は自身を飛ばした。
「外しませんの!」
黒子は能力で急襲し、ソニックへとドロップキックを放った。
「うわあっ!」
黒子のドロップキックはまさに会心の一撃で、ソニックは吹き飛ばされた。
「これで終わりではありませんわよ!?」
黒子はソニックから距離を置いた。
「いててて……くそっ、あいつめ、何を……」
ソニックの体力は、残り半分を切っていた。
黒子は辺りを駆け回り、コースの上に浮遊するリングを手にしては能力で飛ばすということをしていた。
しかし黒子は、リングを鉄の針のようにソニックに向けて飛ばしているわけではなく、全く別の方向へ放っているようだった。
やがてコースのリングは全てなくなった。
ソニックはやはり、黒子の目的が全く理解できずにいた。
リングはソニックにとって、ダメージを肩代わりしてくれるものであるが、黒子にその力が働くかは定かではない。
それ以前に、黒子はリングを得ているのではなく、どこかに飛ばしている。リングの効力を知っているのかも怪しい。
不意にコースが地響きした。
「なんだ!?」
ソニックは辺りを見回した。そして地響きの原因が分かった。
「なっ、リングが、コースを……!?」
驚くことに、リングがコースにいくつも突き刺さり、ループしたコースの片側を分断していたのだ。
「ようやく、気が付かれたようですわね?」
ソニックは黒子に目をやった。黒子の足元には、リングがいくつも転がっていた。
「それは、オレがさっき散らばらせた……!?」
ソニックはついに黒子の意図を理解した。
黒子はリングをコースにめり込むように演算の上空間移動(テレポート)させ、このコースを崩落させようというつもりだった。
左右をトーテムポールで塞いで逃げ道をなくし、ソニックを崩落に巻き込んだ後、黒子は能力で逃げるつもりであったのだ。
しかし、コースの上に浮遊するリングは片側だけを分断するのが限界の量しかなかったが、ソニックがここまで走ってくる途中に集め、黒子の突然の攻撃にばらまいてしまったものがあった。
それは、ループしたコースの両端を切断するのに十分な量である。
「さあさあ、楽しんでくださいな!」
黒子はリングを一つずつ飛ばしていく。
「Wait! 止せ、クロコ!」
「残念でしたわね、もう遅いですの!」
黒子は最後のリングを飛ばすと、空間移動(テレポート)でその場から離脱した。
両端を分断されたことにより、コースの崩壊が急速に始まった。
激しい地響きと共に、ソニックの頭上から岩が落ちてくる。なんとか脱出しようにも、コースは黒子が並べたトーテムポールが遮っている。
このままでは生き埋めにされてしまうのも時間の問題であった。
「こうなったら……!」
ソニックはカオスエメラルドを取りだし、二つ目の切り札を発動する。
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 作家名:綾田宗