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テニスの王子様 10年後の王子様

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「桃にだって相手がいなかったわけじゃないじゃん。ほら中学のときさ・・えーっと不動峰中の橘の妹の杏て子。いい雰囲気だったじゃん。あれからどうなったのさ。」

「・・ああ、あの子か。懐かしいね、ほら関東大会の時にあの子が持ってきた不動峰VS立海大付属のビデオをこの河村寿司で見たじゃない」

 菊丸の言葉を受けて不二が懐かしそうにテレビに目を向ける。画面には手塚のアップする様子が映っていた。

「橘いもうとのことっすか。時々うちのテニスクラブにくるっすよ。・・神尾と一緒に。」

「ということは、桃城はフラれたってことなのかな」なぜか乾の目が光る。

桃城は肩をすくめながら

「フラれるも何も・・俺たちは始まってもないっすから。中学のころの延長をずっと引きずってるようなもんですよ、そこらへんは。ただ・・」(最近はあいつも女らしくなって、神尾ともすごく楽しそうで。他のやつも言ってたもんな、お似合いのカップルだって。俺が後押ししたら、あるいは・・)あの二人もけじめをつけるのだろうか、手塚のように・・

「ま、まあ桃も考え込むなって。なんだったらうちの常連さんに頼んでいい人を紹介してもらってもいいんだし・・」

黙り込んでしまった桃城を気遣って話しかける河村に、不二がなにげない調子で聞く。

「そういうタカさんこそ・・今日は彼女はいないの?」

「ああ、今日は俺たちの貸切だし、気を使わせたくいないから休ませたんだよ」

そう答えた河村の言葉に菊丸が驚く。

「えっ?タカさんにも彼女いたんだあ。いいなあ、羨ましいにゃ」

「えっ?い、いや・・か、彼女ってわけじゃなくて・・2年ほど前から店を手伝ってくれる子がいて。そ、その子のことなんだろ?不二が聞いたのは」

ほんと・・タカさんは素直で嘘がつけない人なんだから・・と不二は心の中で笑う。羨ましいや・・ボクもそんな風になれたらもしかしたら・・と手塚の結婚式を目の当たりにして触発されつつある自分をどういい方に持っていくかが、これからの課題だな、と不二は思い河村に返答する。

「ボクは、彼女は?って言っただけだよ、ふふ。親父さんがこぼしてたよ。いい加減あの子と結婚してくれれば自分も安心して、この店を任せらるのにって。はやく孫と遊びたいんだってさ。親孝行してあげなよ、タカさん。それに彼女と相思相愛じゃないか、誰の目から見ても」

河村は真っ赤になって言い返す。「そ、相思相愛とか・・そりゃ気の付く子でお客さんからも可愛いって言われてて・・俺もそう思わないわけじゃないけど。でも、相手の気持ちは・・」

「先日、一見の客らしい人に『若奥さん』て言われたんだよね、彼女。そしたら今のタカさんみたく真っ赤になって違いますただのお手伝いです・・なんて答えたんだけど、そのあとに小さな声で嬉しいってつぶやいてたんだけどね」

「えっ!ほ、ほんとか不二!あ、いや・・・あ、あはは。そ、そんなのずーっと先の話だよ・・たぶん。そ、それより大石のやつ遅いな。もう試合開始だっていうのに」

「急患でもあったのかにゃ、研修医とはいえ大変だってよく大石からメールがくるよ」

「す、すまない・・だいぶ遅れちゃったな。レポート提出してたら遅くなっちゃった。タカさん、ウーロン茶をお願いするよ」「あいよ、ご苦労様」

「遅いぞ大石!間に合わないかと思っちゃったじゃないか。」

「悪いな、英二。あ、みんな揃っているんだな・・越前は?やっぱり来られないのか。」

10年前のあの日以来、久しぶりにこの河村寿司でテレビの中の手塚と共に顔を合わせた青学全国制覇のメンバーたち。しかしその中にはS1で全国ナンバー1と戦った当時1年生だった彼はいない。

「実家には連絡したんすけどね、帰ってきてはないみたいで・・。誰もアメリカでの連絡先知らないっすから。」

と、桃城が残念そうに言う。

「そっかあ、残念だけど・・彼もアメリカで頑張ってるのだけは確かだもんね。全米ランキングは1位で、とーぜんこのウィンブルドンにも出てくるものだと思っていたけど・・」

「そうだな、あの卒業式の後にやった試合でもつかなかった決着をウィンブルドンで見たかったんだけどな」

「始まるぞ」

その乾の言葉を合図にしたかのように、手塚がサーブを打つ

プロとしての手塚の試合を初めて見る彼らもまた緊張していた。

「凄いよ・・手塚」


数時間後、テレビの中では表彰式が始まっていた。

優勝トロフィーを受け取った手塚の顔は晴れ晴れとしていた。知り合いがしかも日本人初のウィンブルドン優勝を成し遂げたというのに、みなの心の中は妙に冷静だった。嬉しいのは事実、涙だって流したいなのに身動きができない。

「あ、手塚が笑った」と誰かがつぶやいた。

カメラマンも気づいたのだろうか、手塚の視線の先にカメラが寄っていく。そこには手塚の妻と子供がいて手塚に向かって手を振っている。そしてもう1度手塚にカメラが戻ると、手塚も手を振りかえしていた。顔に満面の笑みを浮かべて。

「・・・手塚って、あんな表情ができるんだね。初めて知ったよ」

「うん、彼はドイツに行って正解だったんだ。そして手塚はもう一人じゃない」

「俺たちの誇りっすよ、手塚先輩は」

「ああ、あの人の生き方を俺は目標にしていくぜ」

「いつか・・家族でこの店にきてほしいな」

「その前に俺たちが会いに行けばいい」

「そうだな、次は全米オープンあるいはデビスカップで手塚と越前が戦う。俺たちが最も見たかった試合だ。そのときはみんなで見に行こう!」「おー!」

(手塚、やったな!俺はスポーツ医学を極め、いつか必ずお前を支えるトレーナーになる。それが俺の人生の目標だ)

「青学ー!ファイオー!かんぱーい」




「な、なンで住宅街から外れて大通りに出ちゃうのぉ。もう全然道がわからないよ。こーなったらリョーマ君の写真を見せて・・」そして教えられた先にあったのは坂だった。

「この坂を上ればテニスコートがあるからいるかもしれない・・って、これは10年前の写真なのにぃ」

えっちらおっちら歩いていく。(もお疲れた・・)そう思ったとき不意に「まだまだだね」と越前の声が聞こえた気がした。(え、越前くん?まだまだ・・って。私の努力が想いが足りなかったってこと?嫌だそんなの!逢いたいんだもの!」

 そして坂を上がりきり前方に目をやると、テニスバッグを担いだ赤いジャージの青年がいた。

「あ、あのっ・・」桜乃は彼に声をかける。

そしてリョーマは振り向いて言った「案外、早かったね。やるじゃん」

「リョーマ・・くん?ほんとにリョーマくんなの」桜乃は驚いて叫ぶ。面影は少しあるけど、でもずいぶんと背の高くなった彼はそれ以上は何も言わずに自分を見下ろしている。少し微笑んで。

「私ね、待ってたんだよ。あの時の約束通り、ずっと・・」この7年間、あの時のリョーマの言葉と自分のリョーマを想う確かな心だけが自分の支えだった。

「わかってる、だから俺もここで待ってた。」「え?」「あんた・・間違って公園を右にいったでしょ。でも俺にたどり着いてくれるって思ってたから、だからここを歩いてた」