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こらぼでほすと 散歩1

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 事務所で打ち合わせしていたら、仕事着に着替えた鷹がやってきて、混ぜっ返す。いつものいい声で口説きモードだが、ニールも慣れたものだ。肩に置かれた鷹の手を、ペチッと軽く叩いて、「いやですよ。」 と、即答だ。
「おや、つれないじゃないか、白猫ちゃん。」
「誘拐って、マリューさんが留守なら、一緒に寺に帰ればいいでしょうが。リジェネも一緒だから無理ですよ。」
 もちろん、ひっつき虫のリジェネは、この検診に同行する。ニールを誘拐してもリジェネがヴェーダとリンクしてしまえば場所はバレるから誘拐は無理だ。
「たまには、ふたりっきりで甘い時間を過ごさないか? マイスィートキティ? 」
「甘い時間? ないない。あんたと二人だと飲んで騒いで終わりです。」
「まあ、そうなるんだろうなあ。もうちょい色気を盛ってくれないと、お兄さんも手を出せないぜ? 」
「いらんわっっ。」
 この漫才も日常茶飯事なので、スルーの方向だ。何かしらあれば、鷹もニールを警護することになるが、今のところ、そういう情報はない。ユニオンが、ニールの存在に気付いたが、トダカが強めにお灸を据えたので手出しできない状態らしい。次にやったら、確実にウヅミーズラブ本体も、うきうき参加になるからだ。
「鷹さん、チビ猫たちの予定はないのか? 」
「今のところはないな。降りて来るとすれば、せつニャンかティエリアあたりだと思うが。」
「もし、予定が入ったら連絡してください、鷹さん。俺が不在だったら来てもらっても意味が無い。」
「いや、特区で、ぶらぶらさせておけばいいさ。検診自体は一泊二日だから本宅で待ってればいいんだし。あいつらだって、おまえさんに逢いたくて降りてくるんだぞ? 邪険にしてやるな。」
 にぎにぎとニールの頭を撫でて、鷹は店表へ出て行く。それを沙・猪家夫夫も微笑んで見送る。なんだかんだ言っても、鷹はニールを可愛がっていて甘やかしているのだ。最近、外への仕事で逢えなかったから、ニールが出勤すると構い倒している。
「拉致されたら、そちらに子猫たちは案内させますから、安心してください、ニール。リジェネくんがついてるから、行方不明は無理でしょうから。」
「すいません、そうしてもらえますか? 八戒さん。」
 そして、ふと思い出して、ニールは八戒のほうへ顔を近づけた。周囲には聞かせないほうがいいのだろうと、八戒も顔を寄せる。もちろん、悟浄も耳を寄せる。
「連休に旅行でもいきませんか? 八戒さん、悟浄さん。・・・・キラの追跡やセキュリティー関連はリジェネに誤魔化しさせます。行き先だけ決めてくれたら、こちらで手配させてもらいますんで、考えておいてください。できれば近日中に、目的地だけ連絡ください。」
 こそこそとニールに言われて、沙・猪家夫夫も、ああ、と、頷いた。八戒の誕生日が、ちょうど特区の連休あたりなので、毎年、この時期は旅行をするのだが、いつもキラたちが追い駆けてくるので往生していたのだ。それを解消できる術を唯一、持っているのがニールで、そちらで手配してもらうと楽ができる。
「それ、どこでもいいのか? ママニャン。」
「まあ、飛行機が詰まっていなければ、なんとかなるらしいですよ、悟浄さん。泊まりも、こちら任せになりますが。」
「いや、泊るのは、なんでもいいんだよ。キラたちが邪魔しないなら、うちは万々歳だ。・・・・明日にでも目的地、メールするから、よろしくな? 」
 悟浄は、やで嬉しや、と、ふたつ返事で了承した。毎度毎度、夫夫のいちゃこらを邪魔されるので、今年は旅行なしにするか、なんて考えていたからだ。
「・・・なるほど、キラくんに対抗できる人が、いましたねぇ。ありがとうございます、ニール。では、お願いします。僕も、目的地は、どこでもいいんですが、まあ、ゆっくりしたいと思うんですよ。」
 もちろん、八戒も、ニコニコと頷いている。これといって目的はないのだが、たまには、景色を変えたところで、二人でのんびりしたいとは思っていた。
「いや、俺じゃなくて、リジェネとレイからの提案です。いつもお世話になってるから、お役に立てることはないかって俺が言ったら、考えてくれました。」
 何かと迷惑をかけている率は、沙・猪家夫夫がダントツで、何かしらお返ししたいと、ニールも常々、考えていた。ハイネも、かなり迷惑かけてる率は高いが、寺に居候しているので、そこいらでチャラにできている。沙・猪家のほうは、なかなか手伝えることがなくて、そうレイに言ったら、レイがリジェネに手伝わせればいいですよ、と、教えてくれたのだ。電脳空間なんでもござれのキラだが、電脳空間の内ならリジェネのほうが手が早い。キラの追跡なら、チェックしていれば誤魔化すことは可能だとおっしゃるので、ニールも沙・猪家に旅行をプレゼントすることにした。
「季節的には紅葉の時期だけど、夏を満喫するならオーヴでもいいんじゃないですか? 」
「いやーそれなら、温泉で紅葉のほうがいいな。あんま遠出すると滞在時間が減るから、のんびりすんなら特区内のほうがいいかな。」
「以前、トダカさんの伝手で滞在した由布院はよかったですねぇ、悟浄。」
「あれはよかったな。そうだな、ああいうとこでもいいな。」
 二人して、うんうんと考え始めたので、ニールが席を外す。今日はご指名がないので、トダカの手伝いだ。バーテンダーの衣装でカウンターのほうへ出向く。既に予約のお客様がいらっしゃってキラが接待している。あれなら、こちらの提案は聞こえていないだろう。カウンターの内に立つとレイが近付いてきた。
「提案は、どうでした? ママ。」
「うん、うまくいきそうだよ、レイ。ありがとな? 」
「それはよかった。・・・飲み物ください。ノンアルコールで。」
 はいはい、と、炭酸入りミネラルウォーターを出してやる。トダカのほうは、カクテルを製作中なので、こちらの会話には耳を傾けていない。トダカは、なぜかニールにはカクテルを作れ、とは言わない。他の面子には、適当に指導して簡単なものは作らせているが、私の娘は何も出来ないほうが可愛いから、という理不尽な理由で作らせない。親バカも極まっているから、もう誰もツッコミしないことになっている。
「台風はまだ近付いていないですね。」
「まあ、慌てることでもないから、ドクターも適当にするだろう。もう留守の準備はしてあるからさ。」
「カレーですか? 」
「ああ、たくさん冷凍してあるから、持って帰るか? レイ。」
「そうですね、ひとつ頂こうかな。」
「冷凍しておいたほうがいいか? 」
「とりあえず、おやつに食べさせてもらって、後は冷凍をください。シンにもお願いします。」
「了解。台風の速度からすると、まだ四、五日はかかりそうだから、その間においで。」
「うーん、明日は、実習があるから明後日に顔を出します。シンも行けるだろうから、二人分。」
「了解。ノーマルを作るけど、ついでにアイリッシュシチューも作っておこうか? 」
「はい、是非っっ。俺は、あれが大好きです。あっさりしてるし温まるので、夜食には最適です。」
 そんな会話をしていたら、リジェネがやってきた。退屈だから、と、ショッピングモールまで散歩していたのだ。
「ママ、オレンジジュース。」
作品名:こらぼでほすと 散歩1 作家名:篠義