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こらぼでほすと 散歩8

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 以前、ふたりでデートした時に、そういうことに遭遇した。バイなロックオンから見ても、ほろ酔いの実兄は色気たっぷりだと感じたのだが、当人は無自覚だ。
「それ、トダカさんも言ってるし、うちの隊長も鷹さんも言うから真実なんだろうなあ。ニールは、まったくわかってないしさ。」
「はい? ダコスタ? 」
「あのさ、ニール。トダカさんが呑みに行くのを心配するのは、そういうこともあるんだよ。だから、外で呑むって時は、じじいーずが、ほぼ同伴してるだろ? 」
 同伴してなくても、トダカの関係者の店とかに予約されていたりする。どうも、そういう意味で心配されているらしい。
「俺、酔ったら寝るからじゃないの? 」
「寝たら、どこかに運ばれても、わかんなくなるだろ? 」
「いや、俺だぞ? ダコスタ。」
「ニールは無自覚すぎるんだ。まあ、いいけどさ。・・・・そういうことだからアルコールなしで。」
 ダコスタは、ロックオンに念を押す。無自覚に色気を振り撒くので、外で飲まさないように、と、いうことだ。了解了解、と、納得のロックオンも、大きく頷いた。
「俺、色気あります? 三蔵さん。」
 ダコスタとロックオンの不思議な会話に、亭主に質問した。亭主のほうは、じっと女房を見て、「ねぇな。」 と、笑って箸で煮物を女房の口に投げ入れる。口に放り込まれた煮物をもぐもぐして、「ですよねぇー。」 と、女房も笑って頷いている。色気なんてものに無関心なのは、寺の夫夫両方ともだ。
「その不埒な相手は殺したのか? ロックオン。」
「いいや、トダカさんの知り合いのバーテンダーさんが力づくで追い出した。殺したら殺人だから、特区では無理。」
「そういう時は、ボコボコが基本じゃないの? ロックオン。」
「だから、ボコボコにする前に追い出されたんだってば。」
「ニールに何かあったら問題だ。」
「でも、今回は刹那とロックオンがついてるから大丈夫だよね? おかしな変態が発生したら、凹っちゃってね? 刹那。」
「了解した。駆逐しておく。」
 リジェネと刹那も、そういう変態には対処しておきたいので、そういう意見だ。それなら、問題はないだろうな、と、ダコスタまで同意している。
「あのさ、俺、そんな目に遭ったのは、あれ一回だからな。」
「だからさ、ニール。きみ、単独で呑みに行ったのも、あれ一回だろ? 」
 ああ、そうか、と、ニールも気付く。酒盛りすることはあるが、大概は店で、どんちゃん騒ぎだし、たまにトダカ家に場所が変わるぐらいで単独で出かけるということはない。遺伝子の異常があったから、万が一、何かあったら危険だから、と、誰かがついてきていたのだ。
「そういや、一人で出かけるのは近所の買い物ぐらいだったな。」
 それすらも、今はスーパーニートなイノベイドが、くっついているし、誰もいなければ亭主と近場デートと称して買い物していた。
「あんたと一緒だとナンパされませんねぇ。」
「しねぇーだろーな。だいたい、スーパーでナンパするバカはいねぇだろ。」
「あとは本屋かファミレスだもんな。・・・お代わり?」
「軽くでマヨ。」
「はいはい。」
 亭主の茶碗に、ごはんを盛りマヨと共に返す。なんていうかイチャコラなのだが、寺の夫夫だけは気付かない。周辺も慣れたものなのでスルーの方向だ。


 食事の後で、クルマを山門の前まで移動させてコスモスの鉢を運び出した。借りたクルマは4WDだから後部座席の後ろに荷物置きもあるから、かなりの鉢が鎮座していた。それを境内に運び入れて、本堂の前に設置した。迷路になるほどではないが、華やかな雰囲気になる。色も種類が多くて、定番の薄紫からオレンジ、朱色、黄緑、赤紫なんてものがあった。ダコスタは出勤したし、リジェネは脇部屋でテレビの観賞なので作業は三人だった。刹那がクルマを駐車場に戻しに行ったので、本堂の前の階段に、双子が座る。
「これ、花が終わって種が出来たら、勝手に散らばるんだ。だから、来年は、地面からコスモスが咲くんだってさ。」
「それなら、裏庭にも少し置こうかな。」
「裏庭の分は買ってくるよ、兄さん。」
「そこまでしなくてもいいさ。来年、俺がタネを蒔くつもりだから。ありがとな? ロックオン。」
「来年は、これで宴会しようぜ? 」
「咲いてる頃に、おまえさんの休暇が当たったらだな。」
「どうだろうなあ。ダメなら他の花でもいいさ。一年に二度くらいはチャンスがあるはずだ。」
「できたら春がいいんだけど・・・刹那が降りて来るつもりだろうからなあ。」
「ダーリンの誕生日か。でも、その前に俺たちのがあるから、呼び出しがあるんじゃないか? 例のお客のさ。」
「ああ、そうだな。無茶ブリするからなあ。」
「あんたは座ってなさい。俺が、そっちは担当する。」
「どうだろ? 俺、健康になったから、指名されるんじゃないか? それに、俺のほうが暇もあるし。手品とか練習しておこう。」
「一回やったもんはないだろ? ダンスとか? 」
「俺、それはからっきしだ。前に練習させられたけど、ワルツも満足に踊れなくてさ。うちのスタッフ、みんな、踊れるんだぞ。すごくないか? 」
「義兄さんも? 」
「うん、優雅にフェルトと踊ってた。あの人、運動神経が発達してるから、なんでもできるんだよ。」
「想像できない。」
「だよな。俺も、びっくりした。ホストとしては、そういうイベントもやるから取得させられたんだってさ。おまえ、そういうのは?」
「音楽に合わせるぐらいなら、なんとか。正式なのは無理。そういうイベントが、あんまりなかったからさ。」
 そんな話をしていたら山門から刹那が入って来た。たったかと走って双子の元へ戻って来た。黒子猫が、ぺしょっとくっついて座るのは、おかんのほうだ。
「うちのダーリンは? 」
「教えれば、なんとかなると思うよ。さすがに潜入ミッションでも、そういうものはなかったんでな。」
「なんの話だ? 」
「刹那が社交ダンスができるかって話? 俺がいなくなってから、そういうのはあったのか? 」
「ティエリアの潜入ミッションの時に練習はさせられた。教材があれば、覚えることは可能だ。」
「へぇーティエリアも踊れるのか。」
「ああ、完璧だった。あんたは? 」
「俺、リズム感がないらしい。ロックオンはいけるってさ。」
「でも、踊るとなると刹那が女装でもしてくれないと組めないな。男女で踊るのが基本だから。」
「女装か・・・体型的に無理があるな、ロックオン。」
「いや、そうでもないぞ、刹那。ティエリアだって体型誤魔化して、美人になってたから、ああいう感じだ。うちのダーリンの場合は、オリエンタルビューティーだな。」
 よからぬ想像をしてロックオンは、ニョニョと笑っているが、そういうのはスルーだ。黒猫は、おかん猫に、「明日は散歩に行く。」 と、提案している。
「午後からぐらいなら、なんとかなると思うけど。」
「明日の夜は、リジェネも含めて店に出勤してくれる。だから、夜は外食する。」
「それ、三蔵さんが許可したのか? 刹那。」
「ああ、許可はとった。予定はないな? ニール。」
「おまえさんたちの世話が、俺の予定。それ以外はありません。」
「では、午後から外出だ。」
作品名:こらぼでほすと 散歩8 作家名:篠義