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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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脅迫



「まったく、なんであんなのについてくやつがいるのかわからん」

と藤堂は言った。言ったが、しかし言っても始まらないことを言ったところで始まらない。今は他に考えなければならないことが他に山のようにあるのだ。

「ついに門が開かれました」と情報局員が言う。「外からこの地下東京に人が雪崩れ込んでいます。最初は韓国から……」

「そうか」と言った。「始まったな」

眼前のスクリーンには、停電の暗闇の中を蛍が飛んでいるかのような光の軌跡。おそらくタッドポールだろう。何十機もが群れなして、外国からのトンネルを抜けてこの街にやって来たのだ。

「狙いはなんだ」

「わかりません。ここか、それとも野球場かも……」

「ふむ」

と言った。情報部員が『ここ』と言うのは無論、この地球防衛軍司令部のことだろう。長官である自分の首を取る気でいると言うことなのか。

それとも、「野球場か……スタンドに銃撃でもされたなら、ひどいことになるだろうな」

「はい。しかしどうすればいいか……」

スクリーンに現在の市民球場のようすが映し出された。要塞のごとく巨大なスタジアム。それは元々、このような事態に備えて街の中心に建てられたものでもあった。その中で今、何万という人々が虐殺を逃れて肩を寄せ合っている。

そしてその外を狂信徒が、まるで幽鬼の群れのように囲んでいる。手に手に〈AKライフル〉や日本刀を手に持って。

その者達ももう今では、酸欠にあえいでへたり込んでいる。一酸化炭素その他の有毒ガスの濃度もまた危険な域に達しているようだった。もう今の地下東京でまともに動ける者はいない。

けれどもそれはこの街だけだ。停電してない他の多くの地下都市では、民兵達がまだ暴れているらしい。子供を縄で縛りあげ並ばせている映像が藤堂の元に届けられる。

何語とも知れぬ外国語の音声に日本語の字幕が付いていた。

《〈ヤマト〉を戻せえ。引き返らせろお。要求を呑まない限り我々はこれを続けるう》

言いながらに、泣き叫ぶ子供を銃で撃ち殺す。まず手にズドン。足にズドン。ズドンズドンと何発か喰らわせ、最後に頭に押し当てズドン。彼らは血を浴び、死体のまわりに血溜まりが出来る。

そうして出来た死体の山が、もう〈山脈〉になっていた。

《見ろ、また死んだぞ。また死んだぞお。人殺しめ! これをやったのは我々じゃない。お前らだ! お前達日本人が殺したんだ! ケダモノめ! どうしてこんなことができる! お前らには人の心がないのかあっ!》

「まったく」と藤堂が言った。「しかし、いよいよ外国から民兵がやって来たとなると……」

「はい」と情報局員。「目的はこれと同じでしょう。要求を聞き入れるまで人を殺す。日本人の女子供を……」

「ああ」

と言った。ついにやって来た外国の暴徒。こんなやつらが世界中から押し寄せてくるとなると、もはやこの地下東京は――。

「おしまいだ」と誰かが言うのが聞こえた。「これでは、電力を回復させたとしても……」

「うむ」

と藤堂は言い、しかしどうなのだろうなと思った。たとえ狂人どもと言えども、今のこの街の状況は――。