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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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一斉突撃



「中で戦っているやつがいるんだ! 中で! 突入に成功した者がいる!」

変電所の外では声が響いていた。無線通信が交わされて、拡声器でも叫ばれている。

「突入に成功しただと? どこだ。どこから中に入れる?」「わからん。裏から入ったとか……」「もう石崎を殺ったのか?」「だからわからん!」

声が飛び交う。変電所の前には何千と言う数の死体。千ピースのジグゾーパズルを何箱も買って中身をブチ撒けたような――それがこのたった三時間ばかりの戦闘の結果だ。これまでずっと攻略側は敵の護りに阻まれていた。しかしそれがここへきて、突然に潮の流れが変わったのを多くの者が感じていた。

兵達は皆、酸素不足であえいでいた。火炎放射に爆発の炎、何万と言う兵士達の呼吸のために、周辺の酸素は使い果たされていた。息を吸っても酸素を肺に取り込めず、まともに立てる者さえいない。

が、それでも、

「行こう。行くんだ……」這うようにしてヨロヨロと身を起こす者がいる。「ここにいたって死ぬだけなんだ。生きるには中に突っ込んでいくしかない……」

「そうだな」と応える者。「行くなら今しかない……」

銃を手にして立ち上がる。立ってみれば結構立てるものだった。〈石崎の僕〉からの銃撃は弱まっている。火炎放射の炎もなく、迫撃砲の砲撃もない。

上空にはタッドポール。まだある銃撃を浴びながらも、拡声器で下に向かって叫び立てる声がする。

『みんな、立て! 立って進め! これが最後の突撃だ!』

「おーっ!」

という声が上がる。よろめきながらも兵士達は走り出した。

『皆のために道を作ろう!』タッドポールの機内でも、乗る者達が他の機と互いに無線で呼び合っていた。『こいつで直接突っ込むんだ! 体当たりで敵を潰す!』

『わかった!』

そしてまず、一機が低く高度を落とした。腹をこするかと言うほどの低空飛行で変電所に向かっていき、〈石崎の僕〉が張った鉄条網に突っ込む。

高圧電流の火花が散った。何本ものトゲ線を機体に絡ませて引きずりながら、それでも前に向かって進む。

砦を護る〈僕〉達が機関銃で迎え撃つ。タッドポールは構わずにバリケードに突っ込んだ。

空気よりも〈軽い〉機体がゴム風船のように弾む。LED投光器を薙ぎ倒してそこで止まった。機が潰した銃座は完全に沈黙していた。

「いいぞ! あそこだ!」

銃剣兵が歓声を上げ、その機が作った道へ向かう。上ではタッドポール乗り達が『続け、続け!』と呼び合いながら敵に向かって体当たりをかけていく。

「行けーっ!」

叫び声がする。ついに敵の護りは崩れた。薙ぎ倒された鉄条網を踏み越えて、兵の群れが変電所に突進を始めた。