敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女
次の狙いは
「百機が玉のようになって一機めがけて襲い掛かる。そして〈玉〉の先頭の十数機が標的にミサイルを射つ――これは近接信管で、命中を狙うのではなく標的の近くで爆発し、ダメージを与えるように設定しています。それ一発で墜落に至ることはまずないですが、完全に躱すこともまず不可能。弱ってフラフラになったところを第二撃目でトドメを刺す」
冥王星ガミラス基地司令室でガンツが言う。シュルツはそれをほくそ笑みながら聞いていた。
ガンツは続けて、「そうして一機殺ったならサッサと上に逃げてしまう。それに対してやつらは追いかけることができない……」
「フフフフフ」
「一機一機とやつらはただ餌食になるしかないわけです。『戦闘機の性能では地球の方が上だから、まともにやれば勝てるはず』とやつらは思っていたのでしょうが……」
「さて、どうするかな。これでもやつらはビーム砲台を探すつもりか」
「無理でしょう」ガンツは言った。「やつらもさすがに、こっちがいちばん端から片付ける考えなのは気づくでしょう。横一列に並んでモップをかけるように砲台を探すのは自殺行為だと知ることになる」
「連中もバカではないだろうからな。当然、やつらも、なるべくひとつにまとまって互いに互いを護り合う陣形を取ることになる。一機がロック・オンされたらまわりの数機でそれをかばう――」
「そうするしかないでしょうね」
「そうだ。けれども、それもやつらの思い通りにさせるものか。ここは一気に先手を取ってやつらの息の根を止めることだ」
「と言いますと?」
「何、簡単な話だよ。今までは、敵の機体を端の方から順番に片付けようとしていたな。次はその逆を行くのだ」シュルツは言った。「二機だけ色と形の違う戦闘機がいるだろう。銀色のやつだ。うち片方が隊長機だ。次はあいつを撃ち墜とす」
ニヤリとした。
「隊長機を失えば、やつらはいよいよガタガタになる。残りを楽に皆殺しにしてやれると言うものだろう。それで〈ヤマト〉もおしまい、と言うわけだ」
シュルツは望遠レンズが捉えた銀色の戦闘機の画像をスクリーンに拡大させた。地球人が〈コスモゼロ〉と呼ぶものらしい二機いるうちの先にいる方。
「バラノドン隊に命じろ。次に殺るのはこいつだ」
作品名:敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女 作家名:島田信之