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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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計算で割り出せ



「やはり敵は古代を狙ったようですね。うまくやり返したようですが」

〈ヤマト〉第一艦橋で相原が言った。今は古代ら航空隊が星の上でどんな戦いをしているかまではわからない。わかるのは、二機が殺られたが残り32がまだ健在と言うことだけ。

それにどうやらたった今、敵をかなり墜としたらしいと言うことだ。それがさまざまな情報から推測できている。今は相原の〈耳〉だけが古代達の戦いを〈ヤマト〉が知る手段だった。

「そうか」と沖田は言った。「しかし次は敵もやり方を変えてくるぞ。ここですべてを読み切って古代に教えてやると言うわけにはいかん」

「そうですね」と新見が言う。「今のは最初の一回目だからうまくいったと言うだけのこと……」

「そうだ。それに今のままでは、古代は敵と対するだけで手一杯だ。〈魔女〉を探す余裕はなかろう。そこでさっき真田君に聞きかけたことだが……」

沖田は真田の方を向いた。

「『古代の助けになる手がひとつあるかもしれん』と君は言ったな。敵戦闘機と戦いながら〈魔女〉も探せると言うことなのか?」

「まあ……」と真田。「ひょっとして、と言うことですが」

「いいから話せ。気を持たせるな」

「ええと」

と言った。『別に気を持たせるつもりなんかないのにどうしてこうなるのだろう』という顔をして、

「死角を重ね合わせることで、四国ほどの広さにまで〈魔女〉の居場所を絞り込めました。ですがもう少しいけるんじゃないかと思うのです。もしも範囲をさらに小さく絞れたならば、古代達をそこに向かわすことができる。そうなれば、敵戦闘機と戦いながら〈魔女〉を探すのも可能になるのでは、と……」

「確かにそうだろうが、そうできるのか?」

「ええまあ。ちょっと計算してみたのですが……」

真田は自分がしていた計算の式をメインスクリーンに出してみせた。複雑怪奇な方程式がズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラズラと果てしなく大名行列を参勤交代させている。沖田は『見たくない』とばかりに顔をうつむけて帽子の庇(ひさし)で視野を覆った。

「で?」

「いやすみません。要するに、計算でさらに細かく絞り込もうと言うわけです。これまではただ死角を重ねただけでしたが、さらにラグランジュ・ポイントその他の要素を加えてビームの弾道を追い詰めていけば、うまくすると〈魔女〉の居場所を〈点〉で特定できる」

「点で?」と沖田。「つまり、それが計算で出来たら、もう探す必要もない。『ここだ』、と言うその位置に古代に核を射たせればいい、と」

「そうです」

「結構な話のようだが、『ひょっとして』とか『うまくすると』と君が言うのはなんなのだ」

「それがその……ですからこの〈式〉なんです」

真田は言って、途轍もなく長い数式を指し示した。

「これはまだ途中でして。ここまでわたしもやったのですが、しかし行き詰まってしまい……」

「なんだ? その後、どのくらい計算しなきゃいけないんだ」

「いえ、それすらもちょっとわからない始末で……」

「何百年かかるんだ」

「ははは」笑った。航海士席の方を見て、「太田なら……」

「いえ、無理ですよ!」太田が言った。「ぼくは航法が専門ですよ。ビームの弾道計算なんて知りません!」

「じゃあ」と言った。「アナライザーは?」

「無理デス」と言った。

「お前、分析ロボットだろう」

「ろぼっとダカラデキナイノデス。コノ式ノ計算ハ機械ノ手ニハ負エマセン」

「そうなの?」

「ワタシガ言ウノダカラ確カデス」

「ふうん、それじゃあ……」真田は言った。「南部なら?」

「は?」と南部。

「君は弾道が専門だよな」

「ええまあ」と言って南部はスクリーンを見た。「だからまあわかるんですが、アナライザーが言う通り、この先の計算はコンピュータにはちょっとさせようがないですよ」

「君にはそれがわかるんだな」

「はい」

「コンピュータにはさせようがない」

「と思いますが」

「それじゃあ……」と言った。「紙とペンなら?」