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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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検分



敷井は変電所管理区画の部屋を次々に覗いていた。銃を構えて飛び込んでは人がいないか確かめる。探しているのはもちろん石崎。

だが今まで空振りだ。これまでに通ったところすべて無人で誰もいない。どの部屋も椅子や机があるばかりだった。

足立を殺して追いかけてきた〈石崎の僕(しもべ)〉を撃って階段から蹴り落とすのは、割りと簡単に事が済んだ。それっきり、次の〈僕〉も現れない。遂に外から銃剣部隊が雪崩れ込んできたために、そちらにまわっていったのだろう。そこらじゅうで白兵戦が行われているらしい音や振動が伝わってくる。

「ここもカラだ」

またひとつの部屋を検(あらた)め、隠れている人間などがいないか確かめてから、敷井は宇都宮に言った。

「一体あといくつこんなのがあるんだよ」

「ええと……」と宇都宮。

「石崎がいる場所って見当つかないの?」

「だからこっちだと思うんですがね。やっぱり、〈橘の間〉か、でなけりゃ……」

「なんだそりゃ」

言いながら、なるべく音を立てないように忍び足で進んでいる。どうせ周囲は轟音と振動だらけなのだから足音や話し声にそれほど気を使う必要はないのだが、しかしこれまで出くわさなかったからと言って、近くに銃を持った〈僕〉がいないとも限らない。次の部屋を覗いた途端にズドンと殺られておしまいかもしれないのだ。

そして、その〈タチバナノマ〉と言う部屋が怪しいと言われても、間を飛ばしてまっすぐそこへ行くわけにいかない。素通りしたところに敵が隠れていて、飛び出してきて後ろから背中を撃たれるかもしれないのだから。ゆえにひとつひとつの部屋を潰していかねばならなかった。

だが……と思う。こんなのはありがたくない。他に何人もいるならともかく、自分と宇都宮のふたりだけとは。

敷井はそもそも対テロ部隊の兵だから、訓練ではこんなこともやってきた。部屋に飛び込み、素早くまわりに眼を配り、銃を持った敵がいたなら撃ち倒し、そうでない相手ならば銃口を下ろす。

しかし、それは訓練の話だ。たったひとりでこんなことをやらねばならない状況など普通は考えられない。宇都宮は援護役として背中を預けることのできる人間では有り得ない。

部屋に飛び込み物陰を覗いて〈クリア〉にしていくたびに、心臓が縮む思いだった。こんなこととてもやってられないと思う。

「兵は突入してるんだろう。おれ達がやらなくたってすぐ味方がここに雪崩れ込んでくるんじゃないのか」

「どうでしょうね」

だが行かぬわけにもいかない。ここでやめたら足立にすまない。他の死んだ者達にも……敷井は思った。次の部屋の扉に向かう。

開けた。中に人がいた。それも大勢。

血が凍った。反射的に、敷井は前に向けていた銃の引き金を引きかけた。

――が、寸前で思いとどまる。〈石崎の僕〉にしてはようすがおかしい。

「みんな!」

と宇都宮が言った。対して、部屋の中にいた者達が、「モガガガーッ!」と一斉に応える。

それが言葉なのではない。全員が口にガムテープを貼られているのだ。それで声が出せないらしい。そして全員がジタバタもがくが、それ以上は動けぬらしい。

「なんだ?」

と敷井は言った。すると宇都宮が、

「みんなここの職員です」

「モガガガガーッ!」

「しょくいん……」

言いながら宇都宮を見て、そう言えばこいつはひとりだけ逃げ出したこの変電所の職員なのだったと思い直した。つまり他に百人もいて……。

「ここに閉じ込められていたのか」

「モガモガモガ」

全員が『そうだ』という顔をして首を上下にガクガク振った。