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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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独裁者が好むもの



「ハイペロン爆弾?」

地球防衛軍司令部で情報局員が言った。言ったが、しかし首をひねって、

「えーと、なんだっけなそりゃあ……」

「おいおい」と藤堂は言った。「『なんだっけな』はないだろう。どんなシロモノかわからんのか」

「いえ。確かに聞き覚えはあるのですが……申し訳ありません。ええと……」

コンピュータを操作するが、

「ダメだ。資料が出てこないな。あるにはあったと思うんだがな。ただ、記憶ではあれはええと……」

「なんでもいい。覚えてるなら言ってみろ」

「はい。わたしの記憶では、造りはしたが棚上げになった兵器です。『これはあっても威嚇にしかならない』と言うような理由で……」

「威嚇ねえ」

「まあ、〈独裁者好み〉と言えば言えるかもしれませんね。イザと言うとき指がロケット弾として飛び出す手袋とか……いや、まあ、これは例えが悪かったかな。とにかくそんなの撃って当たるわけないし、当たったとしても威力があるわけないでしょう」

「なるほど、威嚇にしかならん」

「そう」

「しかし独裁者は好む」

「ええまあ……とにかく、実用性はナシと評価された兵器のはずです」

「それでも、〈爆弾〉と言うからには、爆発するものなんじゃないのか?」

「ええまあ、たぶん……」

「『たぶん』じゃないだろ。生物兵器や化学兵器と似たようなものじゃないのか。マトモな軍には使えなくても、テロリストにはうってつけとか……」

「ええまあ……」と言った。「そんなものだったかな……」

「汚らしく卑劣で非人道性が高く、しかしショボくて普通なら恥ずかしくて使わないほどにヘンテコで、往生際がよほどに悪くない限り最後に頼らぬみっともない兵器……」藤堂は言った。「まさに石崎好みじゃないか」

「はあ」

「名前からしてそんな気がするぞ」

「わたしもそんな気がしてきました」

と情報局員が言った。石崎が笑うラジオの声が『フッフッフ』と聞こえていた。